3度目の攻略1
お昼でも食べながらリンデランたちの授業スケジュールを聞いた。
ジたちの方のスケジュールとすり合わせをしてダンジョンに挑む日を決めた。
リンデランもウルシュナも授業に関しては成績優秀で、ダンジョン攻略という事情もあるので多少休んだところで問題はなかった。
学長であるオロネアの後押しもあるし結構スケジュール的には自由がきいた。
「よろしくお願いします!」
「そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよ」
ユディットはリンデランとウルシュナに勢いよく頭を下げた。
ちゃんと紹介したこともなかったのでこの機会に挨拶をしておく。
ジとエは距離が近く、仲が良いことが見て分かる。
もしかしたら未来の主君のパートナーになることも十分あり得ることだと思っている。
しかし出来る男はモテるもの。
ジの魅力に惹かれている人は他にもいる。
ジの家に住んでいる双子や他の貧民の女の子の間でもジのコトが話題にあがることがある。
そしてジが仲良くしている貴族の女の子、リンデランとウルシュナのこともジに仕える騎士としてもちろん知っていた。
互いに手を取り合い苦境を乗り越えてきた。
身分差という問題はあれど本人の強い意志さえあるならば、ジの前に身分なぞ些事にすぎない。
もしかして、もしかすると貴族に仕える騎士になる可能性もあるかもしれないとしっかりとリンデランとウルシュナにも頭を下げ、丁寧に挨拶をする。
英雄色を好むと言う。
この際ジが全員を抱えようともユディットは揺るがぬ忠誠を持ち続けることを固く誓う。
「……お前何か変なこと考えてないか?」
「変なこととは?」
「いや……違うならいいんだ」
変に真面目な態度を取るからジはユディットを疑うがあくまで真面目なユディット。
実際に考えていることを口に出したらジは呆れるだろうけどユディットがそれを変なことと考えていないので怪しいと思いつつも追及しなかった。
なんだかんだ割といつものメンバーが揃ってしまった。
信用と実績のメンバーなので心配はしていないがあまり交流する相手が凝り固まってもそれはそれで良くないかもとは思ったりもする。
すり抜ける扉にリンデランとウルシュナが驚くいつもの流れがありながらも3回目となるダンジョン攻略が始まった。
2個目のセーフルームに向かって進む。
目指すはライナスが落ちた落とし穴のある通路である。
魔物人形を軽く倒して進んでいく。
最初に入った時からそれなりの時間が経過しているけれど中の構造は変わっていない。
ありがたい限りだ。
一応2人の実力と連携を確かめながらの進行だけど全く問題はない。
ウルシュナの動きもジと戦ったよりも遥かに良くなっている。
鋭くしなやかで、このまま成長すればきっとすぐに追い抜かれてしまうとジは思った。
リンデランも真っ当に成長している。
エと対照的に氷属性の魔法を使うリンデランは魔力の扱いが上手い。
魔法の発動が早くて、必要最低限の魔力で敵をしっかりと仕留めている。
エの魔力のコントロールはややワイルドなので無駄だったり、相手に対して魔法の威力が高かったりする。
2人の魔獣もランク付けするならかなり上位の魔獣であるので持っている魔力も多い。
仮にパノーラ・フコンビとリンデラン・ウルシュナコンビを戦わせたらどちらが勝つかは目に見えているぐらいの差があった。
「ふむ…………」
「どうかしましたか?
もしかして、私たち足手まといですかね?」
「ん?
いや、全然そんなことないよ。
むしろ最高のパーティーだと思ってさ」
「そうですか?
私、ジ君のお役に立ててますか?」
「うん、2人が来てくれてほんと助かったよ」
まだ油断は出来ないけどライナスが体を張ってくれたおかげでダンジョンの中で死ぬことはなさそうなことが分かった。
かなり気軽な感じになったけどみんなレベルが高いのでどう人を組み合わせるかちょっと悩む。
適当に休み休み順番になるようでいいんだけどこだわって考えてしまうのがジの悪い癖だ。
もっとユディットとライナスでうまく連携をとってほしいとか、ウルシュナの素早い動きに付いていくには意外とジが適しているんじゃないかとかレベルが高いが故の悩みもある。
「さて、本格的に再開だな」
長く続く一本道。
その途中に背を向けて座っている3匹のゴブリン。
「ジ、1つ頼みがあるんだ」
「なんだよ?」
ここで落ちたことをからかうなって言うならそれは無理だ。
「あのゴブリンにはムカついて仕方ないんだ。
俺に倒させてくれ」
「それはいいけどどうやってやるつもりだよ?
また落ちるぞ?」
「そこまで馬鹿じゃねーよ。
多少魔力の無駄かもしんないけどちゃんと遠くから仕留めてやるよ」
「……考えがあるなら好きにしろ。
あのムカつくゴブリンは俺も倒してほしい」
「よっしゃ!
あんがと!」
くだらない罠のせいでトラウマ的なものを思い出してしまった。
1匹は前に倒したけど高笑いしながら去っていくゴブリンに対する怒りはジも抱えていた。
ライナスがやりたいというなら止めることはない。
腕をぐるぐると回しながらゴブリンに近づくライナス。
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