スライムも頑張る4
「……1つお聞きします……ここはどこですか?」
思わず声が震える。
ここがどこであるのか何となく予想ができてしまっているが当たっていて欲しくないと願う。
「ここはカダザーダ地方……ビッケルンの領地になります」
体の力が抜けるような思いがした。
ウソだと言ってほしいがプクサに今ここでウソをつく理由はない。
「……そんなに簡単に色々と話しても大丈夫なのですか?」
「何かを知っているようですね。
大丈夫です。
私は抵抗もしなかったのでやるなと言われたこと以外をやらないように命令されていないのでやるべきことが無ければ制限はありません」
「飯を持ってきたんだったな」
「はいそうです」
「みんな、食事を取ろう。
今後いつ食べられるか分からないから取れるうちに取っておくほうがいい」
それに考える時間も必要だ。
横にある牢屋に入って、気絶した子も運び込んでとりあえず食事タイムを取る。
プクサが持ってきたのはパンにハムや野菜を挟んだサンドイッチでみな食欲はなかったけれど無理矢理口に詰め込んでいく。
ジは想像以上に悪い状況なことに気分がすぐれなかった。
「色々質問してもいいか?」
プクサは暗い雰囲気で胃に食べ物を詰め込む子供たちをじっと見ている。
眼球がないので見ているかは分からないけど多分見ているのだろう。
「質問に答えるなと命令はされていないので答えることができます」
「一々回りくどいな。
まあいいや。
あんたも強制的にリッチにさせられたのか?」
いきなりど真ん中な質問。
周りは誰もジの質問の意味がわからないがプクサだけがその質問の意味を理解した。
「……あなたは何者ですか?」
「質問に質問で返すのはよくないよ。
先に聞いたのはこっちだ」
「わかりました。
その質問の答えは“その通り“です」
「そうか。
俺が何者か……と言われてもたまたまこのことに関して少しだけ知る機会があったんだ。
他の子供たちはここにいるのか?」
「いえ、ここにいるのはあなたたちだけです。
その機会とは何ですか」
「逃げ出したリッチに会った。
そいつから話を聞いたんだよ。
ここには他にもリッチが?」
「いいえ、いません。
他の場所にはいるようですが。
逃げ出したリッチとはまさかウダラックですか」
「知り合いだったのか?
その通りウダラックだよ。
あんたをこんな風にしたやつや俺たちを誘拐したやつは何者なんだ?」
「…………魔神崇拝者です。
ビッケルンは悪魔に魂を売り渡し、領地で恐ろしい実験をしています。
魔神崇拝者たちはビッケルンの権力の影に隠れて魔神の召喚を試みています。
ウダラックは元気でしたか?」
「魔神崇拝者……なるほどな。
ウダラックはやたらとひょうきんなリッチだったから元気なんじゃないか?」
なんだか1つの質問に答えるごとに1つの質問をする公平なやりとりにいつの間にかなっている。
ジは魔神崇拝者と聞いてリンデランが誘拐された事件を思い出した。
この地下牢でも1回思い出したのだけど、今回は後で聞いた事の顛末の方を思い出したのだ。
パージヴェルが戦ったあの木のような奇妙な男は最終的に魔獣と1つになってしまった。
その男も魔神崇拝者であったことが後の調査で明らかになっていた。
かたやジたちがこうして地下牢に来る前に戦った男たちも人にしては奇妙な姿形をしていた。
あいつらも魔神崇拝者で、前にあったことと合わせて考えてみると奇妙な姿も魔獣と合体したものなのではないかとジは思った。
であればグルゼイやリアーネが苦戦した理由も分かる。
「俺たちを誘拐してきた理由は分かるか?」
「細かい事情までは分かりません。
おそらく魔神の召喚の生贄にでもするつもりだと思います」
「なるほどな、貴族の子供だから誘拐しに来たわけじゃなかったのか」
身代金でも要求するにはジやエを誘拐する理由がない。
そんなことを考えていたがやはり誰かの子供とかそんなことは関係なく魔神崇拝者の凶行のために魔力を持った子供たちを狙っていたようであった。
たまたまリンデランやウルシュナなどの有名貴族の子供がいたに過ぎず、強い魔力を持っていたから誘拐されてしまったのだ。
ならば自分は外されるはずなのにとはジは思った。
ローブの男がポツリと言っていたシンセイだかなんだかのせいだろうか。
「上には何人いる?」
「私が見たことあるのは4人でした。
しかし少し前3人をしばらく見なくなり、1人だけしか帰ってきませんでした。
なので今は2人です」
話にピンと来る。
多分だけど3人とはローブの男とビクエムとダダルだ。
ビクエムとダダルはグルゼイとリアーネに負けてしまったので帰ってこなかった。
残るはローブの男ともう1人誰かがいる。
「あんた、私たちがいなくなった後一体何してるの?
こないだの大怪我といい、この骨との会話といい、本当に私たちの知ってるジなの?」
「俺だってただ立ち止まってるわけじゃないけど、そこらへんのことは別に関わりたくて関わってるわけじゃないんだよなぁ」
「別にいいけどさ、なんだかジが遠くにいっちゃったようで……ちょっとだけ心配だよ……」
「エ……」
「あんまり無茶なことはしないでよね?」
「あ、ああ、努力するよ……」
今そんなこと言われても、この状況をどうにかするには多少の無茶は必要かもしれないと思う。
ただ確かに最近色々やりすぎてる感じはあるのでもし無事に乗り切れたら少しセーブすることも考えよう。
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