第76話 先輩、遊園地デートです!3

76話 先輩、遊園地デートです!3



「わあぁぁっ!! 見てください先輩! おっきい! おっきいです!!」


「俺も初めて来たけど、こんなに大きかったのかこの施設。すっげぇ……」


 大きな入場門を潜ったその先に待ち受けていたのは、二人の想像を遥かに上回る規模と大きさを持つ遊園地。


 アトラクションが三十種類もあり、朝からこんなに長蛇の列ができている時点でおおよそそのとてつもない規模を察してはいたものの。改めて見ると本当にとんでもない。


 入園チケットを園の人に渡し、二人で園内地図を広げる。


 既に優先して行きたいところには印をつけておいた。おおよその人気順も夏斗が入念な準備段階から調べており、それを元に作成された道順で二人は進んでいく。


 初めに向かったのは、海賊との戦いをモチーフにしたシューティングアクション、「パイレーツ•クエスト」。水飛沫やリアルな映像、音響などから常に一番人気を誇っており、リピーターも多いらしい。


「パイレーツ•クエスト、受付はこちらでーす!」


「行きましょう、先輩っ!」


「だな! 今なら先頭だ!」


 一直線に寄り道もせずそこへと向かった二人は、五両計十人乗りのパイレーツ•クエストの待ち順一番を獲得。すぐに後ろからあと八人も受付に押しかけてきて、あっという間に第一陣のメンバーが揃った。


 パイレーツ•クエストは、二人ごとにステージが区切られる仕組み。隣に座ったパートナーと共に海賊に向けて銃を放ち、全員撃破を目指していく。


 十人の乗り編成の車両はプロジェクションマッピングの中を突き進むかのような立体感で、実際にはその場に止まったままなのだがかなりの臨場感を味わえるとのことだ。


「えへへ、一番乗りです! ささ、先輩も隣に!」


 そうして全員が着席すると、一人につき一つ、銃が支給される。


 当然リアルな弾が入っているわけではないが、アトラクションが始まると、引き金を引くことでレーザーを射出。それを当たり判定とし、海賊と戦うのだ。


「それではパイレーツ•クエスト、開始です!! 皆さん、迫り来る海賊達を倒し、ハイスコアを目指してくださいね!!」


 プツンッ。係員の掛け声と共に。辺りを静寂と暗闇が包み込む。


「わっ、暗くなっちゃいました……」


「える大丈夫か? 暗いの、苦手なんじゃ……」


「はい。怖い、です。だから、その……手、握ってもらえますか?」


「わ、分かった」


 きゅっ。膝の上で、銃を持っていない方の手を結ぶ。


 指を深く絡めて、しっかりとお互いがそこにいるということを確認してから。ゆっくりと暗闇が開け、派手な登場音と共に荒波を進んでいく。


『ぐぇっへっへっへ! 野郎ども!! 乗り込んで金品全部奪っちまえ!!』


『大変!! 海賊達が乗り込んできたよ!! みんな、お願い……私達と一緒に戦って!!!』


 夏斗達が乗っている船は、荷物を運搬中の帆船。そこに海賊船が襲撃してきて、金品目当てに海賊達が乗り込んできてしまう。それを同じ船の乗組員である仲間達と撃退し、逃げ切るというのがこのアトラクションのスタンスだ。


「わっ、わわっ!? 揺れてます先輩!! 海賊さん達、乗り込んで来ちゃいましたよ!?」


「よし、える! 俺達で倒すぞ!! 銃を構えろ!!」


 船が揺れる。それと同時に画面上に現れた髭面の海賊には、五ヶ所の的が。それぞれ頭、両腕、両脚に設定されているそれらを全て破壊すれば、海賊を撃破できる。


「ひぃやぁ!? 水! 顔に水がぁぁっ!?」


「大丈夫……俺が、絶対守る!!」


「へっ……?」


 ぎゅぅぅぅぅ。夏斗の手を握る力が、一気に強まっていく。


 そっと横顔を見上げると、夏斗はとても真剣な眼差しで。銃を海賊に向け、放っていた。


「かっこ、いぃ……」


「何か言ったか!? オイ、えるそっちに攻撃来るぞ!」


「は、はいっ! 私も……がんばりましゅっ!」



 熱狂に包まれて。二人の心拍数は、上がっていく。

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