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side.Madoka






「お!あんたアメのニーチャンじゃね?」



昴クンのバイト先に、今回はオレひとりでやって来た。


加藤は…昴クンがやだって言うから、

今日は置いてきたけど…。





店員さんに案内されて席に着こうとしたら、

無邪気に手を振る、派手な金髪に坊主頭の土屋クンと…




「円サンでしょ?色々旦那の方から話聞いてるよ~。」


軽い口調で手招きする、森脇クンと鉢合わせした。





なんでもふたりは、友達の昴クンと晃亮クンを冷やかしに来たそうで。


昴クン達って、あまり友達いないみたいだから。

この子達の存在は、かなり安心するんだよね。






「キミ達も常連さんみたいだね~。」


勧められるまま、土屋クンの隣りへと腰を下ろし。

店員さんが運んでくれたお冷やをひと口含む。





「てかさ、どうやって昴をにしちゃったの?」


森脇クンの話では…

俺と付き合うようになってからの昴クンが、

別人の如く変わってしまったみたいで…





「晃亮は…あんなだし?土屋はまあ、問題外だからさ~。必然的に俺が恋の相談役にされちゃって。」



おかげでいつもノロケ話を聞かされてんのよ、と…

森脇クンはわざとらしく肩を竦め両手を上げてみせる。


え?ていうか…






「昴クンが?ノロケる?」


普段の昴クンを思い起こしても全く想像がつかず。

半信半疑で問い返すと、森脇クンはうんうんと頷く。





「やれ円サンは可愛いだの、普段はぽやんとしてんのにベッドの上だとスッゴく積極的だの─────」


「わ~わ~…っっ!!」



なっなんてことだ…

昴クンたら、友達に何吹き込んじゃってんのさ~!



ていうか素朴な疑問として、森脇クンはオレと昴クン…つまり、同性での恋人関係については…


なんにもツッコまないんだろうか…?




そんなオレの考えが、

顔にバッチリ出ていたようで…


森脇クンは至って平静に、





「あ、俺いちおー両刀バイで通ってるから。なぁ~土屋?」


「えっ!?…あ、そう…だなっ…」


あっさりと打ち明け、何故か同意を求められた土屋クンの方が真っ赤になって取り乱してしまった。








「…てかさ~昴と誰が付き合ってんの?」


落ち着きを取り戻した土屋クンは、

今までの会話を把握してなかったのか、的外れな質問を口にし…


森脇クンとオレは、苦笑混じりに顔を見合わせる。






「え…?あんたが?昴と?……ええ!?」


…土屋クンにはまだ、知らされてなかったんだ。

なんか色んな意味でショック受けちゃってるけど…。





「気にしないでいーよ~。コイツ空気読めない残念なコだから。」


森脇クンは軽く流しながら、

しょんぼりする土屋クンの頭を撫で撫でしていた。








「まどか。」


店内にお目当ての昴クンは見当たらず。

3人で世間話をしていたら、奥から晃亮クンがひょっこりと現れた。


うん、やっぱり昴クンと血を分かつ兄弟だけあり。

彼も驚異的にウエイタースタイルが似合っている。



晃亮クンが店内に出て来ただけで、

お客さんの空気がかなりお花畑に変わったからね。






「晃亮クン頑張ってるね~。昴クンは休憩中かな?」


晃亮クンとは色々…なんて言葉じゃ言い表せないほど複雑な関係になってしまい。


今でもその時の記憶は、

オレの中で痛みとして、残ったまんまだけれど…





「いや、厨房が足りなくて手伝ってる。」


アイツは器用だからと、

無表情を僅かに緩ませる晃亮クン。


こうして見ると初めて会った時に比べて、

随分と話すようになったなぁと思う。



傍目には判りづらいけど、今みたく感情表現が出来るようになってきたみたいだし…。




彼なりに変わろうとしてる、それが解っていたから。


オレは敢えて過去は振り返らず。

今の晃亮クンと、なるべく普通に接していくことを選んだんだ。







もう、あんなこと…彼は二度としないと思うし。


だって晃亮クンには、

オレの兄ちゃんがついてるんだから…絶対大丈夫だ。

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