第4話

 モフモフモフモフ……。

 動物型妖精達と草原を走り回りエンジョイした昨日がすでに懐かしい。

 モフモフモフモフ。

 でもこうやって、ツティーちゃんをモフれるのであれば……。


 「ねえ、それやめてくれない」

 「え! ダメなの? 本当は、頬ずりもしたいの我慢しているんだけど」

 「きも!」


 がーん。愛情表現なのに、クスン。

 ふーんだとそっぽを向いてる。嫌われちゃったかな。クスン。


 「ツティー、その辺にしておいてやれ」


 ツティーちゃんが、仕方がなさそうに頷いた。よかったぁ。嫌われてない。


 「やれやれ。コクターン、道中気を付けてな。これは、人間が使っている通貨だ。大事に使えよ。と言っても世界を周るのならこのお金では足りないだろう。悪さをせずにお金を稼ぐように」


 マテ様が真剣な顔つきで言った。僕って、泥棒でもしそうな顔をしているのだろうか。それとも厳しい世界? そういえば、お金の事を考えていなかったなぁ。

 そう思いつつ、お金をポケットへ入れた。ずっしりと重い。


 「そうではない。ちゃんと働いて稼げと言っただけだ。私からは、妖精の雫だ。これは、完全復活するいわゆるポーションだ。死んでいなければ、妖精・・を完全に回復させられる」

 「うん? 妖精を? じゃ僕は?」

 「妖精専用だ。自分の事は自分で何とかするように。お金をもらったのだからそれで整えるといいだろう。と言っても、ここにはないから人間の地域で買うしかないけどな」


 なんだそれは。歓迎されてないの僕? もしかして体よく追い出すつもりとか!?


 「被害妄想も大概にしなさい。そうであれば、そのまま外に放り出している」

 「え……ありがとうございます。変な事考えてごめんなさい」


 だよね。ここまでしてもらったのに。モフモフも堪能させてもらったし。


 「その妖精の雫は丁寧に扱う様に。手を鞄の中に入れて静かに置く事」


 これまた具体的に。そんなに割れやすいビンなのかな?

 僕は、素直に言われた様に鞄の底に静かに置いた。

 ピン。

 手を入れると、音と共に目の前にウィンドウが表示され目を見開く。

 まさかこれ、クロバー様知っていて……。

 クロバー様に振り向けば、こくんと頷かれた。知っていたのならもっと早くというか、普通に教えてよ。


 ●マジックバック/コクターン専用

   〇バック内―【妖精の雫:1個】

   〇分析LV1/可

   〇自動修復LV1

  ●ディメンションスペースLV1(12%使用)

   〇収集LV1

   〇マージLV1/自動オフ

   〇合成LV1

   〇分解LV1/可

   〇料理LV1/自動オフ


 わあ。なんかスキルがいっぱいで凄い。凄い効果を付けるとレベル制になるって言っていたけど、一つじゃなくてたくさんのスキルがあるけど、バグですか? 自分で考えるよりアバウトだった事が幸いしたのか。

 これ、僕に使いこなせるかな。というか、なぜにディメンションスペースに物が入っている? あ! あれだ。あのチャリンって音。これに収納される音だったに違いない。何が入っているのかな?


 「なんだこれ」


 つい声をだすと、みんなが振り返る。


 ●ディメンションスペースLV1(12%使用)

  :収集スキルで収集したモノ、マージ・合成・分解で出来たモノを格納する場所。

  〇不明×6


 不明ってなんだ……。もしかしてあれか、分析しないといけないとか?


 〇分析LV1/可

  :バックに入れたものやディメンションスペースにあるモノを分析してアイテムを確定させる。一つ五分。


 やっぱりそうだった。って、五分もかかるのか。でも放置しておけば勝手に分析してくれるって事だよね。じゃやってみよう。


 ▶不明×6

  分析しますか? 終了予想時間:30分後


 はい。っと。


 〇分析LV1/分析中


 となった。凄いなぁ。


 「ごほん。とりあえず旅立て。ツティーが待っている」

 「あ、そうだった。では、お世話になりました」

 「ツティーを宜しくな」

 「はい」

 「クロバー様、私の心配はいりませんわ。心配なのは、コクターンです」

 「う……」

 「二人とも気を付けてな」


 皆に見送られ僕らは、人間が住む地域へと旅立った。って普通に森を歩くだけだ。


 「ところでさっき、固まっていたけど何を考えていたの?」

 「うん? 考え……あぁ、この鞄の効果―機能の確認をしていたんだ。やっと使い方がわかったんだ。鞄に手を突っ込まないと確認ができなかった。そこまでやらなかったものなぁ」

 「あら、じゃクロバー様のお陰ね」

 「そ、そうだね」


 ツティーちゃんは、偶然だと思ったのだろうけど、クロバー様は知っていて仕向けた。普通に教えてくれれば、昨日のうちに確認をしておいたのに。

 歩きながら確認しようかとも思ったけれど、モフモフもしたいしツティーちゃんを抱っこしているから鞄に手を突っ込んだまま歩くのは危ない。人間の村か街に着いたら確認してみよう。分析も終わっているだろうし。


 「ふふふ……」

 「なーに、いきなり」

 「なんか、楽しいなって思って。前世とかの記憶はないけど、意味などは理解できるから問題ないし」

 「なぜ前世?」

 「僕の記憶は、ここに来るちょっと前からの記憶からしかないからかな? ここで最後の人生をって送り出された。妖精がどれくらい生きるかわからないけど、もし僕よりうんと長生きならこんな奴もいたなぁって覚えておいてくれたら嬉しいな」

 「まったくもう。旅が始まったばかりなのに何を言っているのかしら?」

 「そうだった。これから思い出をいっぱい作ろうって事!」

 「うん。私を外に連れ出してくれてありがとう!」


 これからの楽しい時間にワクワクして僕は、ツティーちゃんをモフモフしつつ人間の住む地域へと歩いて行くのだった。

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