第37話 王都に別れを告げた

 ユウキは、この世界に来て最強の力を得た。

 魔族だけではなく、すべての驚異を打倒できるほどの力を。


「ユウキが王都に来たとき、女神のことを話してくれたんだって。クロードさんが僕に話してくれたことを、ユウキを召喚した女神も言っていたそうだよ」


 一つの国に滞在しすぎていると、ユウキも世界の脅威として認識される。

 あるいは、対処外国用の兵器・兵士として利用されるだろう、って。

 だから、ユウキは一つの国に滞在できない。世界じゅうにいる凶悪な宇宙人たちを、退治していくしか、彼には道がなかった。


 女神の目的は、この世界における驚異の殲滅だけ。彼女にとって、ユウキは捨て駒でしかないそうだ。

 ユウキを喚んだ女神の真意は、合理性のみ。


「そんな……」

「でも、ユウキは笑ったんだってさ」

『この世界の脅威を撃退できる力があるなら、行使するまでだ』、って。


 いかにも、ユウキらしい生き方だ。


「どうしようもないよね。でも、それがユウキなんだ。僕の、大切な仲間。力になりたい」

「アユム」

「エリちゃんも、僕の仲間だよ。強いからとか便利だからとか王族だからとか、なにひとつ関係ないんだ。僕がエリちゃんを大事に思うのは、エリちゃんだからなんだ」


 僕が言うと、エリちゃんが「ちょっと」と照れくさそうに告げる。


「マルちゃんだってそうだ。僕は、誰一人として、欠けてほしくないんだよ」

「……もう、しょうがないわね、アユムは。わかったわ。力になる」


 

 こうして、一ヶ月かけてクロードさんに稽古をつけてもらった。


 今日で、王都アムンセンを発つ。


 ユウキの情報をもらって、そこへ向かうことにする。


「勇者はおそらく、魔王の城へ直接向かったでしょう」

「かもしれませんね。そういうヤツですから」

「しかし、彼を狙う魔将は、アストレアだけではありません。我々が天空城と呼ぶ宇宙船が、魔王城の近くに存在します。勇者を挟み撃ちにするやも」


 宇宙人たちがそれぞれの船を持ち寄って合体し、一種のコロニーを作ったという。それが天空城と呼ばれているそうだ。


「エリアーヌ、これをお持ちくださいな。天空城へ続くカギですわ」


 エリちゃんがシルヴェーヌさんから、金色のカギをもらった。

 クロードさんから、預かっていたという。


「これがあれば、軌道エレベーターがあなた方を認識して、城へ入れてくれるはずです」

「いいんですか、クロードさん?」

「私では、もうあの城を攻略はできません。大きくなりすぎました。魔将どもも、昔より遥かに強くなっているはず。しかし、あなた様なら」

「色々とありがとうございました」


 僕たちは王都を離れ、他の国へ。

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