第四章 王都の闇のあとしまつ
第22話 王都へ行く準備をした
王都アムンセンへ向かう前に旅の準備を進めていく。
まずは、装備品の見直しである。これまで大量に手に入れたアイテムを、ほとんど売り払った。
「うーん、ロングソードに手甲ってスタイルにしようか、盾とショートソードにしようか」
僕が話しかけても、エリちゃんがぼーっとしている。
「エリちゃん」
「あっ、そ、そうね。前衛に回るなら、盾でしょう。エンチャントは、盾にも有効だから」
そうだよね。派手さを求めるならロングソードだろうけど、実用性を考えたら盾一択かな。
「ラウンドシールドをください」
「あいよ!」
店主さんから、安くて手頃なシールドを手に入れた。
これで当分はトレーニングだね。
剣は、手に入れたショートソードをそのまま使う。
ロングソードは惜しいが、売った。使いこなせないし。
ちゃんとした装備は、王都で作ってもらおっと。
残ったお金は、すべて食料にしようかと思っている。
川沿いを移動するので、水には困らないはずだ。
しかし、どこかで肉を買わないければ。一週間ほどは、川魚ばかりになってしまいそう。
「くんくん、お肉の匂い!」
干し肉屋で妥協しようと思ったら、マルちゃんが鼻をきかせてどこかへフラフラと。
「追いかけよう、エリちゃん」
「え、ええ」
エリちゃんと一緒に、マルちゃんの後ろに。
そういえば、ジルダの街ってあまり回ってことなかったな。
王都へ向かう前に、色々と見て回ったほうがいいかも。隅々まで街を見ることで、思わぬクエストに出くわすかもしれないんだ。アンテナは広げておいたほうがいいだろう。
「アユム、手羽先だぞ!」
マルちゃんが、手羽先につられて行っちゃった。立て看板には、ジルダ名産だと書いてあった。
「おいしいおいしい」と言いながら、マルちゃんは立て続けに一〇本も食べちゃっている。
そのおいしそうな手羽先に、僕たちも手を伸ばした。
「うん! これおいしい!」
しょうゆの味が、手羽先に染み込んでる。この世界にも、おしょうゆってあるんだ。
「ジルダって、鶏肉が名物だったのか。知らなかったよ」
「みんなへのおみやげで、いっぱい買いましょう」
どうやら、エリちゃんも気に入ったみたい。
「そうだね!」
エリちゃんの提案で、手羽先を買い込む。もちろん、保存用も。
「毎度あり。ところで、あんた地球人だね?」
エルフに似た店主さんが、僕に声をかけてきた。エルフなのに、ビール腹で太っている。目が三つあり、額に赤い目が盾に割れて出ていた。
「そういうあなたは、異星人で?」
「ああ。バシー星人っていうのさ。召喚された途端、魔王と揉めて姿を消していたのさ」
魔王デュロイルに召喚されたものの、バシー星人は「手羽先をおいしく焼く程度の能力」しかないらしい。
危うく、飯炊きをやらされるところだったという。
「異世界まで来て『おさんどん』なんてゴメンだね、って脱走したのさ。で、ここでこっそり店をやってるのさ」
「殺されたりしない?」
「リゴス星人が、あたしを追ってきたらしいのさ。あんたらがやっつけてくれたんだろ? だから安心して、大っぴらに商売ができるってわけさ。ありがとうよ。こいつはおまけしといてやるのさ」
旅用の手羽先セットを二日分、無料で提供してくれた。
「ありがとうございます」
「礼を言うのは、こっちなのさ。悪質な宇宙人のせいで、こっちが商売上がったりさ」
「あなたのような良い宇宙人もいるとわかって、僕も安心しました」
そう言うと、バシー星人さんはニコリとした。
「言ってくれるさね。また寄ることがあったら、ごひいきにってさ」
「商業ギルドに話しておきますよ」
さて、荷物はこのくらいかな。
お昼は、孤児のみんなとお別れ手羽先パーティをした。
とはいえ、この世界には王都を中心に『転移装置』があるらしい。いつでも帰ってこられるっていいね。
でも、僕たちは馬車を使うことにした。魔物退治と、トレーニングを兼ねている。
昼食後すぐ、僕たちは出発をした。近くの村へ向かって、馬車に揺られる。
やはり、朝からエリちゃんは元気がない。
「どうしたの、エリちゃん?」
「あのねアユム、私」
エリちゃんが話そうとしたときだ。
馬車の外から、女性の悲鳴が聞こえてきた。
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