第8話 伊刈高広01
噂どおりのうつけだな。
それに本当に女神に逆らって獣化の呪いをかけられているとは。
いいようにするにゃんだって?
笑いをこらえるのに苦労をしたわ。
おやじの虎丸はとんでもない化け物だったけどな。
あいつは虎の化身といってもおかしくないやつだった。
本当にやばいやつだったな。
伊刈の国は難攻不落の山城を持つ国。
普通であれば、簡単には攻略できない。
とくに我らの国は農地に乏しく、木材と狩りが主要産業だった。
だから兵士も木こりや狩人上がりで荒っぽい連中が多い。
それなのに、虎丸は夜襲をかけ、一日で我々を屈服させたのだ。
虎っていうより鬼だな。
それから、我々は友好国という戦闘奴隷となった。
大国九里と並んで因幡の国の先鋒を任されることとなったのだ。
おまえらに一番槍の名誉を与えてやる。
虎丸はそう言ったが、そんないいものではない。
やつは我々を全然信用していなかった。
引けば後ろには虎丸譜代の大名がいて斬られてしまう。
常にその恐怖の中で戦っていた。
そのおかげで我々は最強の部隊となった。
その虎丸が死んでしまうなんてな。
やはり、神は見ているのだろう。
虎丸のやつは神の罰があたったのだ。
そして、その虎丸の子が、この猫ニャンだなんてな。
たぶん、我らの部隊の足軽にも勝てないだろう。
その証拠に私に怯えて、わたしの言うことすべて認めてくれる。
弱い上にバカ。
友好国として助け合うだって?
それが本当だと思っているのか?
この生き馬の目を抜く戦国の世、そんなこと信じるほうがバカだ。
一度、領地に戻って因幡の国を攻めよう。
それは九里とも通じてある。
いまや最強集団となった我らが因幡の国を滅ぼそう。
かわいそうだが、これが戦国の世だ。
もし、我々がそうしなくても、バカ殿の治める国は遅かれ早かれ滅びる運命だろう。
虎丸よ、後悔するがいい。
あのうつけを後継者にせざる負えなかったことを。
そして、我らを最強の部隊に育て上げたことを。
我々の他にも因幡に離反する国があとをたたないだろう。
そして、離反した国はあの猫丸を見て因幡を攻めるだろう。
因幡は私の隣国、それを許すわけにはいかない。
それに、降伏した猫ニャンを我らと同じ目に合わせてやろう。
先鋒としてこき使ってやる。
それが、虎丸に対する恩返しだな。
わたしは、人質となっていた家族と合流し、伊刈の国に帰るのだった。
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