第6話 因幡猫丸03
何か急に忙しくなったのだ。
猫は17時間はねなきゃならないのに12時間くらいしか眠れないのだ。
猫は寝子っていうくらい寝る動物なのだ。
それもこれもおやじが死んだからなのだ。
悲しくないといえば嘘になるけど、しかたのないことなのだ。
人間、みんな死ぬのだ。
猫もみんな死ぬのだ。
それも、急に死んだってことだし、苦しまなかったってことだし、まあいいのだ。
それで、虎丸の遺言が開かれたのだ。
それは因幡の国は僕が治めるように書いてあったのだ。
まあ、虎丸の子供はぼくと妹の白猫だけだから、しかたのないことなのだ。
でも、別に猿爺とか銀狼とかでもよかったのだ。
あいつらのほうがぼくよりも頭がいいのだ。
それなのに、みんな因幡を治めるのは猫丸様しかありませんとか言って、ぼくに国をまかせたのだ。
そもそも、国を治めるというのはみんなを幸せにすることなのだ。
みんながおいしいものをたべて、十分遊んで、たくさん寝られるようにすることなのだ。
そんなことはぼくには無理なのだ。
ぼくが喰って遊んで寝るというのができていないのだ。
みんなは猫丸さまのお手伝いをしますとか言って働いてくれるんだけど、直属の部下たちが十分遊べていないのだ。
みんな朝から晩まで働いているのだ。
休息日も働いているのだ。
それはいけないことなのだ。
労働基準法に違反しているのだ。
でも労働基準法ってなんだったっけ。
とにかく、おやじがたくさんの国を従えたのがいけないのだ。
因幡の国だけでも決めることがたくさんあるのに、他の国までみてられないのだ。
「殿、伊刈の国の伊刈高国様が来ているチュウ」
根津吉が来客を取り次いでくれる。
こいつも働きすぎだ。
「通ってもらうにゃん」
「わかりましたちゅう」
根津吉は伊刈を呼びに行く。
伊刈高国、元虎丸と戦って下った大名の一人。
そのあと、虎丸の腰ぎんちゃくとして、おやじにおべっかばっかりしていたやつだ。
なんか、一生因幡の国のために働きますとか言ってたってやつだ。
そんなことを言われてもめんどくさいだけだけどな。
なんかデブのおっさんが部屋に入ってくる。
「わしは伊刈高国だ」
頭も下げずにぼくをにらみつける。
「因幡猫丸にゃん。
それで話っていうのはなんだにゃん」
ぼくがおっさんを見ると、おっさんはなんか蔑んだような笑いを返すのだった。
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