第2話 因幡猫丸01

 あの頭のかわいそうな人はなんだったんだ。

 猫丸は自分の頭を触る。

 そこには三角の耳が生えていた。

 それからお尻には尻尾。

 そういえば、獣になってしまえとかいってたな。


 でも尻尾ってどんなんだろう。

 ぼくは尻尾を見るためにぐるぐるまわる。

 鏡を見ると、やっぱり半分猫になっている。

 あのおばさんはただの胸と頭のかわいそうな人ではなかったんだ。

 頭がかわいそうであぶない人だったんだ。


 まわりを見ると、僕だけでなくてみんな獣化している。

 門番の牛鬼は牛、駛馬は馬の顔になっている。

 猿翁のじいちゃんは猿、獅子舞のおっさんはライオンの顔。

 それから、妹の白猫も猫になっている。

 なんかこの城の全部が獣にされているのだ。

 これは大変なことなのだ。


 とりあえず、こんなときには毛づくろいなのだ。

 いや、そんなことしている場合じゃないのだ。

 

「殿、どういたしましょう」

 猿翁がぼくに話しかける。

 このじいちゃんはぼくの教育係、それから因幡四天王の一人にも数えられている。

 とにかく、口うるさい爺なのだ。


「みんなを集めるにゃん」


「わかりました。殿」

 そう言って猿翁は、部屋を出ていく。

 みんなで、これからのことを考えるのだ。

 それには、猫丸隊の19人を集めなくてはならないのだ。

 猫丸隊はぼくが作った軍隊なんだ。

 ぼくを含めて20人の隊で、ぼくが動かせるのはそれですべてなのだ。

 その他の隊は全部おやじ、虎丸の部隊なのだ。


 虎丸隊は将棋隊ともいわれるのだ。

 歩兵9人、香車2人、桂馬2人、銀将2名、金将2名と角と飛車、そしてぼく。

 ぼくの部隊は大事なことはみんなで決めるのだ。

 数は少ないけど、ぼくに扱えるのはこれで限界なのだ。

 100人とか1000人とかいても、ぼくには名前も覚えられないのだ。


 だんだんと天守閣にみんなが集まってくる。

 

「殿、大丈夫ちゅう?」

 歩兵の根津吉がそばに来て、心配そうに覗き込む。

 こいつも獣化して鼠みたいになってるのだ。

 なんか、むずむずするのだ。

 たぶん、猫の習性なのだ。

 

「大丈夫にゃん」

 ぼくは返事をする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る