タチが悪い……


 ここはCreate your fantasy worldの製作者もしくは運営陣と呼ばれるゲームマスターたちがいるマスタールーム。


 そこでは、ゲームマスターたちが頭を抱えていた。


「嘘だろ……“魔の神”がやられた!」

「絶対勝てないようにしてたのに何でだ!」

「倒したやつの情報よこせ!」


 そして、倒したプレイヤーの名が表示され、そのステータスも見られる。


「は?何で最初からMP2000越えしてるんだ?チートか?」

「いえ、違うっぽいです。チートはしてません」

「じゃあ、何でこんな壊れた数値が出てんだよ!」


 あちこちで叫び声が起こる中、1人のゲームマスターが何かに気が付いたかのように顔を上げた。


「いや、まさかな。そんなことはないはずだが……」

「どうしたよ」


 騒いでいた全員が静かになり、その男の方へと顔を向ける。


「前も、キングがアホみたいな数値を叩き出したのを覚えてるか?」

「ああ、あれな〜。もちのろんで、覚えてるぜ」


 全員がうんうんと無言で頷く。


「あれの説明もつけれるかもしれん」

「は?どういうことだよ」


 全員が見つめる中、男が言葉を吐き出した。


「キングと、リーフフィアだっけ?こいつら、隠れ里の人間かもしれん」

「隠れ里?秘境ってことか?」


 男は首を振り、言葉を続ける。


「車のカーナビで住所を検索した時出てこない場所とか、地図で出てこない場所を、俺が隠れ里って呼んでいるだけなんだが、そこに住んでいる奴らは何かしら能力を持ってるっぽいんだよな」


 大きなため息をつきながら、遠い場所を見る。


「例えば、大体の運動は簡単にできる、とか、言霊とかの不思議な言葉を操る、とか。しかも、タチが悪いのはそれを無意識下でやってるってことだ」


 全員、思い当たるプレイヤーがいたのか黙り始める。


「このゲームは、自身の能力まで反映しているから、そういうことが起こっているのかもしれん」


 男の言葉に、ゲームマスターたちはうなだれて、床を転がりまわる。


「対処の方法が無いじゃねえか!」

「タチ悪い……」


 皆が床を転げ回っている中、予想を言った男は、だから、と続ける。


「だから、キングはまだしも、もうリーフフィアはほっといていいんじゃね?他のプレイヤーのレベルが上がっていけば普通になるだろ」

「それしかねえよな」


 ゲームマスター達は死んだような顔で諦めの境地に至った。

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