利根川競歩の事件簿
理系メガネザル
第1話
昼休み、というものは良いものだ。業間休みも捨てがたいが、やはり僕は昼休みが好きだ。給食を食べ終わった後のあの20分間の休み。また、早く食べ終わった人は更にボーナスタイムが付くという。業間休みは割と皆外に遊びに行くが昼休みは違う。
各々外に行ったり、図書室に行ったり、他のクラスの友達と喋ったり。まぁ何が言いたいのかというと、俺はそんな自由な昼休みを愛している。ということだ。
今日はいつもと違い、他の生徒と外で遊ばずに、自習室にいた。宿題をやっていなかったからだ。
思いのほか早く終わり、これで次の授業も怒られずに済むと思いルンルン気分で教室き戻るとまだ昼休み終了6分前だったので、教室には誰も居なかった。
窓からはグラウンドではしゃぐ生徒達の声が聞こえてくる。いつもは賑やかなクラスも人が居ないと静かだなと思って教室に居ると、何か違和感を覚えた。この教室はこんなにも外の音が聞こえてきただろうか。変だなと思い窓の方に近づいていくと、強風が吹き、閉められていたカーテンが勢いよく開いた。
窓ガラスが無かった。 正確に言うと、真ん中の窓ガラスのガラス部分が割れていた。 真ん中に何かが当たったかの様にひびが入っていた。
ゴロリ、 と何かが落ちてきた。風に動かされたのだろうか。見てみると、それはバットだった。木製だった。
なんでこんなところにバットが…? そう思い手に取っていたところ、ドアの方でガチャと音がした。ちょうどいい、今来た人にこれがどういう状況なのか聞いてみようと思い振り返ると、そこには『5-4の騒音機』という渾名を付けられている巻島さんが立っていた。
「ねぇ…」俺が話しかけるよりも早く、相手が動いた。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
すさまじいシャウトだった。俺が事情を説明する前に今の悲鳴を聞きつけて、他のクラスメイト達が「何事だ?」と駆けつけてきた。
「どうしたんだ?」学級委員長の飯田くんが尋ねた。
「実は…」俺が言い終わるよりも早く巻島が喋った。
「高橋君が窓ガラス割ったの!!!」
え? クラス中の視線が刺さった。 僕が?窓を? 割った?
何を言ってるんだと思い喋ろうとした時、自分の状況に気が付いた。
割れたガラスの近くにいて、バットを持っている。短絡的ではあるが、この状況からだと、犯人は俺に見えてしまう。しかしそんな愚かな考えのクラスメイトは居ないだろうと皆の方を見ると、
皆の目は、極悪人を見る目だった。
こうして冤罪事件は生まれていくんだな。皆の厳しい視線を感じながら、俺は心の中で泣きながらそう思った。
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