第5話 決心


 被験者番号:062

被験者名:カタオカ マイ

 享年:22

死亡要因:急性心筋梗塞


 死亡後、6時間経過して、若い女性の見た目から、しわくちゃの肉体になっていた。

綺麗だったロングの黒髪が今は、真っ白となっていた。


遺体安否室に静かに眠る彼女の遺体を静かに見つめ、カタオカ リョウは、なんとも言えない感情が渦巻いていた。


リョウの実の妹のマイは、『100万円毎日貰える当選者』事件の被害者の1人であった。

大人になってからは離ればなれになり、別々の道を進んでいた妹との5年ぶりの再会がこんな形での再会となるとは考えもしなかった。


カタオカリョウとマイの兄妹の半生。

リョウが5歳の時に当時4歳の妹マイと一緒に家で寝ていた時の事だった。

父親と母親は、2人で寝ている兄妹を起こさないように早朝にひっそりと家を出ていた。

朝、目を覚ましたリョウは、父親と母親がいない事に気づく。いつもだったら自分が起きる時間にはいたはずなのに。

たまたま、朝、早くからお仕事だから家を出たのかなとその時は思った。


だが、両親は夜遅くになっても帰って来なかった。

泣きじゃくってる妹を慰めようと

「きっと、パパとママはもう少しで帰って来るよ」

と泣き出しそうな気持ちを必死に堪えて兄はなだめた。


数日経っても両親は帰って来なかった。


家にあったカップラーメンなどの食料が底をついた。


飢えでみるみる痩せ細っていく体。


兄妹は、動けなくなっていた。

何も考える事すらも出来なくなっていた。


それから数日が経ち、近所の人が、最近、カタオカ家の家族を見かけなくなった事に不信感を抱いたのか、家のドアをノックして呼びかけた。

鍵は空いていた。部屋の中には、ガリガリの骨と皮だけになって倒れている兄妹の姿があった。


それから、兄妹は、通報されて、施設に入る事になった。


施設内での兄と妹は、他の施設内の子供や先生にいじめられていた。

妹がいじめられていた時は、兄が必死にかばっていじめられた。


いじめが終わった後に泣く妹を兄は


「俺がお前を守るから心配するな!」


と自分も泣きそうな気持ちを抑えて慰めた。


リョウは、18歳になり、17歳の妹を残し、施設を出る事となった。


ー妹を守る為に、強くなる!!


その気持ちを一心にし、リョウは警察官になった。

厳しい警察社会を妹を守る為に強くなるという気持ちで必死に頑張り、その姿を上司に認められて若くして刑事になった。


その矢先でのこの出来事。


今まで、頑張ってきたものが全て崩れ去っていった。


妹の遺体を見て、リョウは


ー妹をこんな目に合わせた犯人を見つけ出して、絶対に殺してやる。


という決意を決めて、遺体安否室を後にした。


遺体安否室を出た後、リョウのスマホに上司から着信が鳴った。

リョウは、上司からの電話での話を聞き、急いで、警視庁に向かった。


そういえば、ときどきスマホがブラックアウトするがリョウは機械音痴だからよく分からず放って置いた。


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