031-アリッサの協力要請
そういえば、ラーバルのルームメイトは誰なんだろ? そんな事を思いながら、入室の許可を得た私は、はじめてラーバルの部屋に入る。
「ルームメイトは里帰りしています。私だけですのでごゆっくり」
いつも、おさげに結われている緑の髪は、結ばれていなかった。クセがついているためか、ゆるいパーマがかけられたようにふわふわとしている。服装は控えめなフリルが付いたワンピース姿だった。いつものような
「それでご用件はなんでしょうか?」
そう声をかけられると私は、おとぎの国から意識を引き戻し、現在直面している問題に向き合う。
「実はマルレの夢についてです」
「そうですか……マルレがすすめていた計画が分かった、といったところですか?」
「話が早くて助かります。」
私は、マルレが考えている追放処分を得るための計画について話した。
「ふむ、はっきり申し上げますと、その計画は無理ですね。きっと誰も信じないでしょう。自白をしたとしても、誰をかばっているの? となるだけでしょうね」
たしかにそのとおりです。しかしそこは王族の権限を使う他に、マルレを自由にする方法が思いつかない。
「しかしアークの力を使う他に、良い選択肢もなさそうですね……」
「そうなんです! それと、これはちょっと信じられない話かもしれませんが……」
そう切り出すと私は、ゲーム内の知識を入学式前に見た予知夢として話した。マルレに変装したトゲ
信じてもらえなかった……。それはそうだよね、そう思いながらラーバールが口を開くのをまった。
「ドレスを脱ぐとは、ドレストレイル家の誰かが言っているのを聞いたのですか?」
「いえ……。だから夢で未来を見たといいますか……予知したというか……」
やはり信じろというのは、無理があるよね……。
「現実で誰かが言っていたのを聞いたのではないのですね?」
「はいそうです……」
「それは良かった。「ドレストレイル家の者が[ドレスを脱ぐ]と言ったら、荷物を持たずに早急に国外へ逃亡しろ」と父から言い聞かされて育ちました。何かの危機を知らせる合図かと思っていましたが、まさか宣戦布告などとは思いもしませんでした。」
「信じてくれるの?」
「いえ、完全に信じたわけではありません。ですが、あなたが人の気を引いたるするために妙なことを言うような人ではない。それに、魔法実技前にマルレの能力について、説明に来れなかったという事実もあります。1年生の終りに国境を接する小国が同盟を組み挙兵すると、うわさがありました。それをドレストレイル家が対処していたのでしょう。それがあなたの見た未来で、裁判に間に合わなかった理由だろうというのも納得できる。状況証拠に[ドレスを脱ぐ]という言葉が出た以上、未来が見えたとのことは信用できるが……」
私はゴクリとつばを飲み込む。未来の話をしたことで逆に不信感を与えてしまったかな? との思いが浮かんだがもう手遅れである。静かにラーバルが語るのを待つしかない。
「マルレが死ぬ未来は起きない!」
「え?」
私はラーバルの出した答えに、あぜんとする……。
「1つ目の理由は、ファーダくんが任務から外れマルレに付いてる事。2つ目はマルレが傷を負うところを想像できない。3つ目は私が住民の先導と衛兵の配置を請け負うからね!」
「それって! 協力してくれるってこと?」
「ええ! もちろん!」
「ありがとう、ラーバル!」
「ふふっ、それにしてもマルレとアリッサは面白いわね」
面白い? どういうことだろう?
「アリッサが言った未来は二人で全部つぶしているのよ」
「どういう事?」
「まず、アリッサがトゲ
1つ目はともかく2つ目は関係ない……。と思うというか、いろいろやってどうにもならなかったことだ……。
「実は初め、私のルームメイトはマルレの予定だったんだ」
「それと評判の話になんの関係が?」
「マルレがアリッサとルームメイトになったから、私は違う人物と一緒になった。それがトリリア・リウスだ」
トリリア・リウス……トゲ
「やはり驚いているわね。マルレの悪評が広まったあとのことです。落ち込んでたトリリアに罪を認め、うわさを消せば心が晴れると、私が進言したのですよ」
「それって……」
「そう、アリッサがマルレをルームメイトに誘った事で変わった未来だ」
知らず識らずのうちに、すべてが変わっていた……。
「そして無事に一年を乗り越えたことで、ファーダくんが側に付き2年生でマルレは死ぬのが想像できないほど強くなった」
「やっぱり、もう終わってたんだ……」
「そうだな、だから追放だけをうまく考えればいいよ、その時は協力を惜しまない卒業式の後マルレが自由になるところを楽しみにしているよ」
「そうね、ありがとう気が楽になったわ。準備もほどほどに、学生生活を楽しむことにするわ」
「ああ、それがいい」
思いつめていた私は、すべてのことが余計な心配に終わり肩透かしを食らったような、うれしいような複雑な気分で自室に戻った。
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