019-ファーダの思い出
*タイトルに人物名があるときはその人視点になってます。
「ファーダです。よろしくおねがいします」
5歳の俺はドレストレイル家の当主ザロット
「なにがあったのか聞かせてもらえるかな?」
俺はザロット
それは俺が4歳のときだった……。「この柱がなきゃもうちょっと広いのに!」と父の言葉を聞いた俺は「じゃまなの? ぼくがどける!」と全力で柱を押しはじめた……。父は「がんばれ! がんばれ!」と笑っていた。
今思えば、かわいい子供のたわごとに、付き合っていただけだったのだが……。だけど俺は本気で押した! そして最悪のタイミングで[
家の中央にあった少し出っ張って邪魔な大黒柱を見事にへし折った。物理的に傾いていた家は見事に全壊した。建物の下敷きになった俺は[
「そうか……。それは、つらかったな」
優しいザロット
「はい……」
つらい思い出をかみしめる俺……。
「おいおい! ファーダ? 父さん死んでないからね? 今、おまえの後ろにいるからね?」
なにかうるさいが無視して続ける。
「父もきっと見守ってくれています!」
「いやいや! 死んでる設定まだ続けるの? 家を借りないで洞くつに住んでたことをまだ根に持ってるの?」
うるさい父だ……。
「ははは、あいかわらずふざけた親子だ」
それに比べてザロット
「すまんなザロット、まったく誰に似たんだか!」
「「おまえだ!」」
ザロット
「初対面でハモるな!」
雑談が終わると、父とザロット
「さて、ふざけるのはこれぐらいにして……。事情はだいたいわかった。それでどうするつもりだ?」
「俺は世話になる気はない、住み込みで仕事を見つけるつもりだ」
「それでファーダくんを預けたい……と?」
「そういうことだよろしく頼む」
「それはできん……復帰しろそれが条件だ」
「はぁ~やっぱそうなるか……わかったよ。そのかわり[
「分かった。きっちり一人前に仕上げる」
それから俺は、ドレストレイルの屋敷で訓練をしながら、使用人として働くことになった。
お嬢と会ったのはそのときだった。
「あなたが新しい使用人の子?」
俺より少し背の高い少女だった。バラのように赤く、つやつやのきれいなストレートの髪。それが風に揺られるのを手でおさえている。少し釣り上がった目つきにルビーのように魅力的な赤い瞳が印象的だった。
「はい! ファーダと申します! 5歳です。よろしくおねがいします」
「あら、私も5歳よ! よろしくね! えっとチビファーダね!」
チビ……。嫌なやつ! それが第一印象だった。しかしもう俺はもう使用人なので表面を取り繕った。
「よろしくおねがいします。お嬢様」
お嬢が人の顔と名前を覚えるのが苦手だと知った今はよく分かる。あれが、名前と顔を一致するためにつけた親愛を込めたアダ名だったってことを。
それから、お嬢は礼儀やマナーを俺は[
同じ年頃の子供が居なかったので、第一印象とは違い俺とお嬢は、すっかり仲良くなった。しかし、お嬢は歳を重ねるたびに、少しずつ自分の侯爵令嬢としての強い立場を理解し始めた。そのためか、わがままになっていった。
チビファーダの呼び名も、親愛から悪口に変わっていたような気がした。そして10歳になる頃には手がつけられなくなっていた。そして、社交界デビューとして誕生会が開かれる直前に事件が起こった。
パーティの準備中に倒れ高熱にうなされた……。そして2日後に目覚めたお嬢は、休みも取らずに魔術書を端から全て読み始めた。休みを取るようにしつこく食い下がると休みをとってくれるようになった。
「心配してくれたのね。ありがとうチビファーダ」
つい3日前までのチビとは明らかに違った。あの頃の暖かな感じに戻っていた。それからお嬢はわがままどころか、使用人に気を使うまで優しくなっていった。そしてお嬢は、3年後に学園へ入学しドレストレイル家は、火が消えたように静かになった。
お嬢が学園に入ってから1年ほど過ぎた。俺は、旦那様から第二王子殿下とお嬢の婚約について聞かされた。「政略結婚など必要ない」と言っていた旦那様が、なぜそんな事を了承したのか分からなかった……。
ボーッとしながら、主の居なくなった部屋のホコリを払っていると、旦那様に呼び出された。どうやら重要な仕事があるらしい。
「マルレに[
俺はうれしかった! またお嬢に会える!
「もちろんお受けします。旦那様」
頼まずともご命令くだされば……。のくだりをすっ飛ばして二つ返事で了承した。
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