008-ラーバルの調査報告書
*タイトルに人物名があるときはその人視点になってます。
私はマルレリンド・ドレストレイルとの模擬戦を終えた。自室に戻り、疲労でガチガチに固まってしまった腕で報告書を書き上げている。
早く休みたい……。
そう思いすぐさま団長に報告書を提出するために、団長室の扉を
「失礼します」
団長といっても次兄なのだが、この部屋で合うときは少し緊張する。
「どうぞ」
応答を確認してから入室する。
「ドレストレイル令嬢についての報告書です」
「ご苦労さま」
差し出した資料を兄が受け取りざっと目を通す。
ーーー調査報告書ーーー
[報告者]
副団長ラーバル・バルトレイス
[調査内容]
マルレリンド・ドレストレイルの身体能力および戦闘技術について
[調査の概要]
入学式後に階段で見せた身体能力の調査
期間は、約一年間
[調査結果]
身体能力、動体視力、ともに一般近衛兵以上
体力に関しては、底が見えず測定は不能
戦闘技術は、訓練兵未満
[分析]
身体能力について
階段という悪い足場での壁蹴り飛び。地下室で鉛の剣を軽々振る。模擬戦で私の体力が切れるまですべての剣を受け切るも汗一つかかない。
以上のことから身体能力、動体視力、ともに一般近衛兵以上であると断定できる。
戦闘技術について
一見すると優秀な先読み能力を持っているように見える。しかし、よく
[対策]
本人は冒険者を目指している。冒険者でも国の助けにはなるが騎士団に
2年間の訓練所使用を認め騎士の誇りを感じさせ入団に誘導するのが最良。
騎士団に入団が難しい場合は、冒険者になる協力をするのが望ましい。
冒険者になった後でも入団は望める、しかし嫁がれては手が出せなくなる。
第2王子との婚約は、なんとしてでも破棄させる必要がある。
ーーーーーーーーーーーー
「ふむ、おまえが一撃も当てられないとは期待以上だな」
「報告書に書いた通り技術を使っていない純粋な反応のみで防御してたようです。意地になって剣を振り続けた結果、腕が上がらなくなりましたわ」
「あまえがムキになるとは珍しいな」
「男なら折り合いも付けられます。ですが、同じ女性であれ程の才能を見せつけられると、さすがに悔しいです」
「そうか? それにしては、うれしそうだが?」
「ふふっ顔に出てました?」
「おまえが母のおなかにいる頃からの付き合いだぞ? 表情に出さなくてもそれくらいわかるさ」
私には二人の兄がいる。目の前にいるのは、次兄であり仲が良い兄である。武力だけの長兄と違い雑務もこなす団長を任されている。部下の面倒見いし頭もよく書類仕事もすばやくこなす。
とはいえ、長兄と仲が悪いわけではない。長兄は近衛兵なので、めったに会うことがないのだ。尊敬は変わることはないが、庭で一緒にはしゃいでいた頃が遠く思われ寂しさを覚える。
「それでは、私は休ませてもらいます」
「お疲れさま、明日に響かないようゆっくりと休むみなさい」
「はい、お先に失礼します」
明日は基礎訓練だドレストレイル令嬢の体力の底が見えるとよいのだが……。考えても仕方がないゆっくり休もう……。
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