王立魔法学園編 1年生
004-冷血マルレ
◆自由の始まり、より6年前◆
私の名は、侯爵家の令嬢マルレリンド・ドレストレイルそのはずでした……。
生まれてからずっと体の感覚に、違和感があったが、小さい頃から自我がしっかりしていました。そのおかげもあって、マナーや礼儀を難なく習得し、毎日退屈に暮らしておりました。
そして私が私ではないと、気がついたのは10歳の誕生日でした。記念のパーティに向けてお母様が髪形をセットし終わったそのときでした。
「あなたが、これからずっとする髪形よ」
お母様に言われて姿見に自分を映した。
端正な顔立ちに、釣り上がったキツイ目つきでした。瞳は、ルビーのように赤く、艶のある赤髪は、きれいにロールされていた。
「縦ロール…… 冷血マルレ!」
私は、そうつぶやくと意識を失った。
目が覚めたのは2日後で、今まで原因が不明の高熱で、寝込んでいたようです。私は前世を思い出していた。本当の名前はアシハラ・トモカ、日本在住の16歳です。最後の記憶は通学中の電車内で、居眠りをしてしまったことだ。
そこから記憶がない、生きているのか、死んでいるのかもわからない。初めは夢じゃないかと、疑ったけど感覚がリアルすぎる。それに、前世では見たことのない物や知識があるため、夢ではないと確信はある。
おそらく転生というやつだろう。今の自分、マルレリンド・ドレストレイルについて思い出すことにした。じっと鏡を見ていると、少しずつ思い出してきた。
妹が持っていた恋愛ゲームのパッケージが思い浮ぶ。後ろで腕組みしているラスボスのようなキャラの顔だ。見た目が気にいった私は、このキャラがどういう人物か、妹に聞いたのを思い起こした。
『コイツは冷血マルレだよ。どのルートでも必ず嫌がらせしてきて、最後に追放される悪役令嬢キャラだよ。バットエンドですら追放されてた。お姉ちゃんは、こんなの好きなの?』
記憶を巡ってもタイトル名すら思い出せない……。ゲームをプレイしていなかったのが悔やまれる。私は、ゲームをよくやる。だけど、巨大モンスターを狩ったり、大人数で城に攻め込んだりするゲームが好きだった。
ですから恋愛ゲームに似ているこの世界の知識が乏しい。この地位を守るためにどうすれば良いか、さっぱりわからない……。
ん? 地位を守る? 我が家には、兄がいるから家は安泰です。あれ? 守る必要ある?
ここは剣と魔法の世界!
政略結婚の道具となり
そうと決まればやることは鍛錬あるのみ! 貴族といえば魔法の才能があると、相場が決まっている!
ベッドから起き上がり、急いで自室から飛び出た。横でオロオロしている使用人を振り切って図書室へと向った。
我が家の図書室は、侯爵の地位にふさわしい蔵書量です。魔法関連の書物を中心に、いろいろと知識を詰め込む。心配して周りを囲む家族や使用人を「勉強の邪魔です」の一言で片付け書物に夢中になった。
使用人や家族は急に変わってしまった私に驚いていた。けれども、勉強するのは悪いことではないので、とくに止められることはなかった。根を詰め過ぎたときは、止められたが食事と休憩をきちんとすれば止められなかった。だから私は、魔法についての勉強に没頭した。
勉強の結果いくつかのことがわかった。まず私の魔力総量は桁外れに高かった。魔力の総量は水に魔力を通した時に増える体積で判定できる。試しに調理場でグラスに注いだ水に魔力を込めてみた。するとグラスの水は噴水のように吹き上がった。その様子を見た料理人が、私の両親に伝え、13歳から国立魔道学園に通うこととなった。偶然だが追放フラグを一つ立てられた。
訓練期間は6年、いや学校生活で訓練ができない可能性もある。ですから3年と見たほうが確実……。すぐさま次の勉強に移ることにした。
次に私の使用可能な属性魔法がないことが分かった。どんなテストを試してもどの属性も一ミリも反応しなかった。運良く魔法の世界に来たのに魔法が使えないことが判明した……。
ま、まだ私には剣がある! 魔力を使うことを諦め基礎体力の強化から始めましょう。
本を読むから邪魔しないでください。そう言って自室に閉じこもる。そして、トレーニングをするために、こっそりと窓から逃げ出す。あまり長い時間は取れないけど、基礎体力を付けるためにひたすら森の中を走った。そして初めて自分の体の異変に気がついた。
いくら走っても疲れない……。
木の根に足を取られて転んでも、傷がひとつも付かない……。
それどころか、衣服の汚れがぼんやりと光り、吸い込まれるようにきれいになった……。
私はわけが分からず原因を探るため、また図書室に通い始めた。汚れが勝手にきれいになる現象は、わりと早く見つかった。それは、代々ドレストレイルに受け継がれている祝福で、清潔が保たれる効果があるのだとわかった。ドロ汚れはもちろん汗などもきれいに無くなる素晴らしい祝福でした。
しばらく魔法関連の書物を調べたが、疲れないことや傷がつかないことは、わかりませんでした。もう気にするのは止めて、剣術関連の書物を読み始めたときに、原因が判明しました。
それは、魔力による肉体強化でした。無意識下で発動し続ける特性です。ほとんど魔法が使えなくなる代わりに、肉体が強化されると書いてあった。これは近接物理職に向いている特性のようです。強い剣士はこの特性を持つのが第一条件になるほど強力なものでした。
私はうれしかった! まだ剣の道は閉ざされていない! さっそく次の日から同じ手段で部屋から抜け出した。木の枝に石を括り付けて、剣と同じ重さとバランスにした枝を振り回す。これは剣の練習です。
剣術教本に載っていたのは、森のなかに木材をロープで、つるした物を多数用意し。走りながら木材に剣を打ち込む訓練でした。
これがなかなか難しかった一週目は動いていないので容易に当たる。折り返して二週目に入る。すると、木材は好き勝手に動き当てにくくなる。折り返して三週目に入る。二週目で外した、カスッた、当たった木材の3種類の動きになり、さらに難易度があがった。
私は親や使用人の目を盗み3年間コツコツ訓練した。勉強していると、印象づけるために学校で教わる知識も先に目を通していた。前世の記憶と転生後のマナーの英才教育のおかげで、苦労しそうなことはなかった。
時はたち……今年で私も13歳……いよいよ明日から学園に通うことになった。
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