精霊賢者は魔王と戦うために転生するが、魔王に恋をしてしまう

ケントゥリオン

プロローグ

「魔王が復活するのは今からおよそ千年後です」


 預言者は俺にそう告げた。


「そんなに待つのは無理だ」


 俺の名はテオドール・ホーエンハイム。

 ホーエンハイム共和国初代執政官にして、世界最強の精霊術師、付いた渾名が“精霊王せいれいおう”だ。


 数々の軍隊を、魔物を、この手で葬り去ってきた俺は、もっと強い敵を求めていた。

 世界最強の魔物と言われる“神殺しの巨狼グレート・フェンリル”ですら俺の敵ではなかった。


 だから俺は求めた。

 神話に出てくる魔王との対決を。

 だが、預言者に占わせると、魔王が復活するのは千年後だという。

 いくら俺が精霊王でも人間の寿命には逆らえない。


 だから俺は求めた。

 千年後の未来に転生する方法を。

 俺はありとあらゆる手段を尽くして研究を重ねて、輪廻を司る精霊ウロボロスを見つけ出し、精霊契約をした。


 契約を結ぶと精霊術師は、その精霊の能力を自分の技として扱う事ができるようになる。

 ウロボロスの輪廻を操る力を使って俺は千年後の未来へと転生すると決めた。


 決断してからの俺の行動は、早かったと我ながら思う。

 何せ俺は一人身だし、あまり人には言いたくは無いが、家族もいなければ、友達もいない。


 共和国執政官なんてたいそうな役職を貰ってはいるけど、基本的には精霊王として椅子に座ってるだけの退屈な役目。いなくなっても国家運営には何の支障も無いだろうし、……いいよね。

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