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side. Madoka





「すばる、くん…」


「はい…?」


「あの時も、さ…」



こうして手を握ってくれたでしょう?





「円サン…」



不器用だけど。

あの時のキミも今と同じ、優しいヒトだった。







「キミは…キレイだよ?」



ちゃんと笑えてるかな?

…涙は止まんないけど。





「円サン…」


「…弱いクセに。」



ぼそりと吐き捨てた晃亮クンの台詞を拾って、昴クンの肩が揺れる。



オレの手をそっと離し、立ち上がった昴クンは…


怒りを剥き出しにして、

晃亮クンを真っ向から睨み付けた。







「言ったよな…お前でも、許さないって…!!」



叫んだ瞬間、

晃亮クンの身体が宙に浮き。

ガシャンと音を立て、サイドボードに叩きつけられる。






(昴クン…)



プツンと切れてしまった昴クンが、

今度は馬乗りになり一方的に彼を殴り始める。



そんな状況にも関わらず晃亮クンは、ぼんやりと何か考え事をしてるみたいで。


暫く、抵抗しなかったんだけど…。







「ぐッ────…!!」



我に返ったよう目を見開くと、ズシリと重い拳を昴クンの鳩尾へと放った。







ふたりとも、なんて言うか…

スケールの大きな兄弟喧嘩を、してるみたい。




きっと初めてなんじゃ、ないかな?


こうして互いに、

ホントの感情をぶつけ合うことが…







けど、いいのかな?

二人ともハンパなく強そうだから、このままじゃどうなるか判らないし…。


だからといって、いざとなったらオレなんかに止めきれるかどうか…




それでもじっとしていられなくて、何とか身体を起こしふたりの名を呼んだんだけど────…






「やらせとけ、円。」


「えっ…─────兄ちゃ…?」



倒れそうになったオレの身体を。

支えた手と声の主は…いつの間に入って来たのか、オレの兄ちゃんのもので。



不安を目で訴えたんだけど、いいから見とけって…。


未だにぶつかり合う二人の姿を、

顎で指し示した。







仕方なく、二人に向き直る。

すると頭上から、ぽつりと兄ちゃんが呟いた。




「アイツらなりに、初めて向き合おうとしてんだろうよ。」


「そっ、か…」



兄弟みたく共に生きてきた関係でありながら。

晃亮クンに罪悪感を募らせてしまった、昴クン。


そうと気付いていながらも彼に依存し。

どんな手段を用いても、昴クンを傍に置いときたかった晃亮クン。



晃亮クンがしてきた事を。

悪いと解っていても止める事が出来ず。

全てを己の罪へと置き換え、苦痛を背負って…。





彼らはそっくりなんだ。

その不器用さ、内に秘めた純粋な心、

大切に思う、優しさが…痛いくらいに。

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