56
side. Madoka
「邪魔だ、まどか。」
「ダメ、壊しちゃダメだよ。」
分かったんだ。
彼が本当に欲しかったモノ。
失いたく、なかったモノ。
キミがオレに対して抱いてきた感情、
それは“嫉妬”…──────だったんだね。
「たったひとりきりの家族なんでしょ?大切なんだよね?」
キミは知らないだけ。
誰も教えてくれなかったんだよね…
「ちゃんと考えるんだ。キミにとって昴クンは何?」
「…………」
もっと早く、気づいてあげれば良かったね。
そうすればキミが昴クンを傷つける必要なんて、なかったのに…。
「晃亮く────」
「うるさい…」
ガツンと耳元で骨が軋んで。
痛いとか感じる前に、オレの身体は吹き飛んでて…
ガツンと壁に鈍い音を立て、ぶつかる。
(あれ、なんだろ…?)
「円サン…!!」
歪む視界の中で見たのは、
昴クンが伸ばした手。
衝撃の後、ドサリと床に伏したオレを抱き締めて。
手を握った昴クンが…
切なげに、オレの名を呼んでいた。
「円サンっ、円サン…!!」
“ゴメン─────…”
ああ、そっか…。
あの時と、おんなじなんだ。
たったひとり、大勢の相手に一方的に殴られて。
路地裏…と言っても、大通りはすぐそこ。
なのに誰も、
キミを助けようとはしなかった。
その時見たキミの眼が、酷く虚ろで。
目前の現実に恐怖しながらも、誰かを必要とはしていなかった。
まるで端から自分は独りぼっち…みたいな寂しい眼をしていたから。
オレは迷わず、キミの元へ駆け出したんだ。
兄ちゃんみたいにどうにか出来る程、喧嘩が強いわけじゃなく。
結局助けてあげられない、無駄だったのかなって…
感覚すらおかしくなった意識の中で、
無力な自分を悔やんでたんだけど────…
『ゴメン…ごめんなさい…』
人形みたく綺麗なキミは。もしかしたら心なんてないのかなって思えるくらい…無表情だったのに。
握られた手はあったかくて、
流す涙はとてもキラキラしていたんだ。
(どうして、忘れてしまってたんだろう…)
こんなにも大切な事を、
オレは今までなかったコトにしていただなんて…。
だからその想いの分も込めて。
オレは今握られた手を、ぎゅっと握り返すんだ。
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