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side. Madoka





「邪魔だ、まどか。」


「ダメ、壊しちゃダメだよ。」



分かったんだ。

彼が本当に欲しかったモノ。

失いたく、なかったモノ。


キミがオレに対して抱いてきた感情、




それは“嫉妬”…──────だったんだね。







「たったひとりきりの家族なんでしょ?大切なんだよね?」



キミは知らないだけ。


誰も教えてくれなかったんだよね…






「ちゃんと考えるんだ。キミにとって昴クンは何?」


「…………」



もっと早く、気づいてあげれば良かったね。


そうすればキミが昴クンを傷つける必要なんて、なかったのに…。






「晃亮く────」


「うるさい…」



ガツンと耳元で骨が軋んで。

痛いとか感じる前に、オレの身体は吹き飛んでて…


ガツンと壁に鈍い音を立て、ぶつかる。






(あれ、なんだろ…?)


「円サン…!!」



歪む視界の中で見たのは、

昴クンが伸ばした手。



衝撃の後、ドサリと床に伏したオレを抱き締めて。

手を握った昴クンが…


切なげに、オレの名を呼んでいた。








「円サンっ、円サン…!!」



“ゴメン─────…”



ああ、そっか…。

と、おんなじなんだ。







たったひとり、大勢の相手に一方的に殴られて。

路地裏…と言っても、大通りはすぐそこ。


なのに誰も、

キミを助けようとはしなかった。




その時見たキミの眼が、酷く虚ろで。

目前の現実に恐怖しながらも、誰かを必要とはしていなかった。



まるで端から自分は独りぼっち…みたいな寂しい眼をしていたから。


オレは迷わず、キミの元へ駆け出したんだ。







兄ちゃんみたいにどうにか出来る程、喧嘩が強いわけじゃなく。


結局助けてあげられない、無駄だったのかなって…


感覚すらおかしくなった意識の中で、

無力な自分を悔やんでたんだけど────…







『ゴメン…ごめんなさい…』



人形みたく綺麗なキミは。もしかしたら心なんてないのかなって思えるくらい…無表情だったのに。



握られた手はあったかくて、

流す涙はとてもキラキラしていたんだ。







(どうして、忘れてしまってたんだろう…)



こんなにも大切な事を、

オレは今までなかったコトにしていただなんて…。



だからその想いの分も込めて。

オレは今握られた手を、ぎゅっと握り返すんだ。

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