鈍色キャンディ。

50

side. Madoka

｢あッ…やっだ…ッ…！！」

もう捨て身で慣れるしかないと思っていた仕打ちが、

ここにきてやっぱり苦痛でしかないんだと、

思い知らされる─────…

最近呼び出しされなくなって、安堵していた矢先。

学校へと向かう道すがら、彼に捕まってしまった。

｢はァッ…ううッ…いッ…！！」

昴クンとひとつになった日。

彼に抱かれて…

オレの身体が綺麗に浄化された気でいた。

それまで受けてた彼との行為が、

まるで夢だったんじゃないかって…

キミとのキス、愛撫、たった一度の交わりで…。

行為の熱も感覚も、昴クンとのものしか思い出せなくなっていたのに。

｢まどか、力抜け。」

骨が折れるぞと脅されても。もう、怖くない。

あのままのカラダでいたかった。

そこに″愛″なんて言う感情があるかどうかは、分からない。けど…

昴クンのキスは甘かったよ。

その手は暖かかったよ。

キミと繋がれた事が、

何より幸せだったと言えるよ…

例えオレが抱く醜い感情と同じモノを、

キミが持ち合わせてなかったとしても。

それでも…構わないんだって。

晃亮クン…

キミの不器用過ぎるやり方じゃ、

ダメなんだよ…？

｢もっ、や…だぁ…こぉ、すけくッ…！」

無駄なのかもしれない。

こんな抵抗、それこそ死に値する罪なのかも…。

でも、抗わずにはいられない。

麻痺した思考でも、ちゃんと気づく事が出来たから。

だからどんなに汚れても、

汚されて彼に身体ごと持って行かれても。

この″想い″だけは守ろうと…

決めたんだ。

「チッ…！」

明らかな拒絶には平手が飛び、

手中の雄を握り潰される。

容赦なく、内へと彼の凶器が突き立てられて。

ソコは悲鳴を上げ、血の涙を流した。

｢ヒッ、あ…ぅ…」

解放されることなく繋げられたまま、どんなに酷い仕打ちに遭おうとも。

それでもオレが、

心を見捨てる事だけはしなかった。

｢どうして、お前は…」

｢…ぁ………」

ここにきて初めて、晃亮クンが焦りを見せる。

普段一切の感情を崩す事のない彼が、

明らかに見せた動揺。

それを誤魔化すかのようガツガツと攻め立てられ。

耐えに耐え抜いたオレの意識は。

プツンと音を立て、途絶えた。

｢俺は…─────クソッ…」

消えゆく前に拾った、彼の捨て台詞。

バタンとドアが閉ざされて。

彼の気配が完全に消えた事に安心し…

オレは本当に全ての意識を失った。

(昴、クン…)

キミは今、何処にいるのかな…

早く、会いたいよ。