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side. Subaru




「すみません、歯止めが効かなくて…」



事を終えた後…

絶頂と共に意識を飛ばしてしまった円サンを抱え、風呂で身体を清めて。

自室のベッドに横たえたら、程なくして彼は目を覚ました。




男という生き物は、セックスの後ほど現実的で…

やけに静かな部屋、ぐったりと眠る円サンを目の当たりにすると…


とてつもない罪悪感に襲われた。







「どして?」


「えっ?…その、円サンは体力的にも辛かっただろうし…それに男の俺に抱かれるとか────」



後ろめたさに口ごもると、円サンは震える手を付いて起き上がろうとするから。

慌てて背を支えると、ありがとうと俺を見上げて。

円サンはニッコリと微笑んでみせた。






「謝っちゃダメだよ…。」


「円サン…?」



すぐ目の前まで顔を寄せて、

じっと見つめてくる円サン。


その目尻には…キラリと涙の粒。






「オレがキミを誘ったんだから…。それとも、ホントは嫌…だった?男と…オレなんかと、こういうコトするの…」


「そんなことっ…」



あるわけがない。

俺だって昔はどうあれ…今は男女見境なく、誰でもいいわけじゃないんだ。





円サンだから欲情した。

貴方を誰よりも愛しているからこそ────…


…でも言えなくて。

変わりにギュッと抱き締めた。

少しでも、円サンの不安や誤解を打ち消したくて。



言葉無くしても多少は伝わったのか…。

お返しとばかりに、円サンも俺の背に腕を回し。

弱々しくも力を込め抱き返してくれた。






「なんでだろ…昴クンとこうしていると、とても安らぐんだ…。」



それは俺の台詞です。

貴方ほど癒やされる存在を、俺は知らないから。






「オレ、年上なのにさ…なんだか甘えたくなっちゃうんだ。」



胸に擦り寄る円サンの髪を、指で優しくく。


決して円サンは軟弱な方ではない。

平均的な体格の、ごく普通の青年だ。


なのに今はとても儚げで。

幼い子どものように怯えながら、俺の腕の中に小さく収まってしまっていた。






「ありがとう、昴クン…。」



俺を見上げ、そう告げる円サン。




「キミがいるから、オレは…救われてるよ。」


「円サン…」



晃亮が出て行ってから、二時間くらい。

たったそれだけの…儚いヒメゴト。




これ以上許されはしない、解ってはいたけれど…

あと少しだけ、もう一度だけ。


どちらともなく近づいて…

当たり前のように、唇を寄せていた。

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