17




side. Subaru






春の陽気は暖かく、心地良い風をその身に絡め肌を擽るのに。


俺の心は嵐にみまわれたまま…

黒く、燻っていた。






朝目覚めても、

晃亮が部屋から出て来る事は無く。


俺はひとり、彼を避けるように。

普段は朝から滅多に行かない学校へと、足を運んだ。






陽光の熱を含まない、屋上の冷たいコンクリートに寝そべって携帯電話を弄ってはみるものの…。


あんなことの後で、円サンにどんな理由をつけて連絡を取れば良いのか解らず。


ただ、メッセージを開いては閉じての繰り返し…。




勿論、

向こうからは、何の音沙汰もなかった。









「……………」


もう何時間、ひとりでこうしてるんだろうか。


こんな不良高校、

授業なんて、あってないようなものだし。

クラスには連んでる奴なんて、ひとりもいない。



まして晃亮は既に3年、森脇と土屋は2年だし…。

皆自由気ままで他人に合わせるようなタマじゃないから。

連んでいるといっても、これといった決まりも約束もなくて。各々やりたいようにしていた。






貴重なひとりの時間なのに、ちっとも安らぐ事はなく。

頭を過ぎるのは、嫌な事ばかり。



こんな時、土屋でもいたら…

アイツはバカみたいに騒ぐし、必然的なムードメーカーみたいな存在だから。

ネガティブに浸かる暇もなくて、済みそうなのにな…。




あの2人とは、俺が鈴鹿に入る前から晃亮と連んでいたから…一緒にいるんだけど。



馴れ合いが苦手な筈の俺が。

こういうカタチで、誰かを必要としたりするのは…


初めてな、気がした。











「あれ~昴ひとり?てか珍しいじゃんこんな時間。」



カタンとドアが開く音がして。

勢い良く起き上がれば…


軽い口調と胡散臭い笑顔で手を振る、森脇がいた。






「まぁた喧嘩か~?」



森脇達も晃亮の性質を、良く理解していた為。

ひとりきりだった俺に向け、呆れたよう溜め息を吐く。



…というか、

森脇だっていつもは土屋を引き連れてるクセに。

今日は珍しく、ひとりなようで。

のんびりとした足取りで俺の隣までやって来ると、

ストンと胡座をかいた。






「いや…今日は何故か起きて来なかったんだ、晃亮…」



ふ~んと興味なさげに、煙草へと火をつける森脇。

土屋は分かり易い性格だけど、この人はちょっと読めないところがあって。

晃亮とはまた異なる性質だったが…


かなり曲者くせものな気がした。








俺が入学した時点で、既に晃亮と一緒だった2人。

晃亮が2年の頃までは、他にも仲間がいたらしいのだが…。



晃亮を頭に、チームを作りたいと言い出した奴らがいて。

そういう事に全く興味が無い晃亮は、案の定そいつらが鬱陶しくなってしまい────…


ひとりで全員、潰してしまったらしい。







結局潰した全員、晃亮を恐れ離れていき。

最初から晃亮側にいた森脇と土屋だけが、必然的に残ったと言うわけなのだが…。



何故、晃亮についたのか。

その理由は、今も解っていない。




まぁ、至って単純な理由なんだろうけど…。

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