18



side. Subaru




「で?お前なんで、んな暗ぇの~?」


「え…?」



思えばこんな風に森脇と2人で話すのは、初めてな気がする。



俺が入学してまだ1ヶ月そこら。

それ以前から晃亮を介して、多少の親交はあったものの…ろくに話したこともなかったのに。


まさに森脇の台詞は、俺の心情の的を射ており。驚いた俺は言葉を失い、思わず森脇を凝視した。




そんな俺の反応が面白いのか、カラカラと森脇は笑う。







「ん~ビックリした?土屋は空気読めない痛い子だけど。俺は空気読めすぎて、もぉっとイタい子なのよ?」



何処まで本気なのか解らぬ口調で語る森脇。


いたたまれない俺は、目線を逸らすしかなく。

顔に出すような性格じゃ無かったのに…

そこまで落ち込んでいたのかと。


更に自己嫌悪に苛まれた。






暫く会話も中断して、2人静かに空を流れる雲を眺めていたら…


森脇が独り言のように呟いく。







「晃亮も、この頃変だよね~?」


ゾクリと肌が粟立つ。

誰も気づかないと、俺にしか解らないと思っていたのに。


今度はあからさまに動揺した為、森脇にまた笑われてしまった。








「解らねぇと思ってるっしょ~?その通り!お前らマジ無表情スギ~!!」


「じゃあ、なん、で…?」



ニヤリと笑って焦らす森脇。


急かすよう睨みつけると、

「昴コワーイ!」と両手を上げて茶化してきた。



なんだか俺の扱いが土屋のとダブる…。





「ホラホラっ、可愛い顔が台無しよ~昴キュン!」


「黙れ…」


コイツの中で、俺と土屋は弄られキャラなようだ。

こういうノリツッコミは苦手なハズなんだけど…。






「だから~普段から顰めっ面過ぎるから、逆に解っちゃうの!オーケィ?」


つまり森脇は、俺や晃亮の

微々たる気持ちの変化に気づいていると…


そういう事なんだろうか?





「あ~あれだ────…コンビニで飴くれた人。」



あん時からじゃね~?と、自信あり気に話す森脇。


ここまでくると逆に感心する。



どちらかと言えば、森脇も俺や晃亮と同じで。

他人に対して我関せずな人種だと思っていたのに…。






「あの人、お前の知り合いみてぇだったけど。実際どうなん?」


「別に…前にコンビニ来たときに、知り合っただけだ。」



2の事は、言えない。


それは、あの時あの場所に居合わせた…

晃亮にだって気づかれていない事だったから。





森脇の気遣いか、それ以上勘ぐるような態度はなく。




「ふ~ん、まぁ…なんか楽しいヒトだったもんね~。」


と、いつものように軽く受け流してくれた。


短くなった煙草を地面に押し付け、灰皿変わりの丸缶に投げ捨てる。


そのまま仰向けになると、

森脇はぼんやり空に向かって呟いた。






「壊されなきゃいいな…」


「……………」



何処まで気づいているのか、

それが何を指すのかは、計り知れない。


けど、

その言葉は、俺が切に願うものだったから。




森脇はずっと空を見てたけど。

そこは素直に、頷いておいた。






「そういえば土屋は?」


「ん~…なんか色々ショック受けて寝込んでるから置いてきた~。俺のが体チョーダルいのにさ~。」


「?」


「気にしないであげて~。ほっときゃすぐ立ち直れるだろうから~。」



この話題については、全く理解出来なかったが…。



予定外に森脇がいてくれたお陰で。

ほんの少しだけ、心が晴れた気がした。





この後に、

奈落の底に突き落とされるとも…


知らないで。

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