第5話

「イヤァーーーーーー。大、助けてーーー」


「僕の術が効かない。アイツ、普通の人間じゃないな」


「ちょっと、来ないでよ。大、大ーーーー」


 私との距離、約一メートル。ナタは振り上げられている。大は何かブツブツ言ってる。はい、私、終了。チーン。


「全く困ったもんだ。本気出すのは嫌なんだけれどね」


 ん、大?

 恐る恐る目を開けると、そこには煌びやかな着物を纏った超絶イケメンな男性がいた。


「散れ、悪霊」


 和装イケメンが手を軽く横に振ると、ナタを振り上げていた男が苦しみ始めた。


 何が起きているの。っていうか、この和装イケメンはどなた様。私、どストライクなんですけれど。


「滅せ」


 そう言って、横に振っていた手を大きく上に振り上げた。おぉ、カッコ良すぎる。ヤバイ、私、今度はキュン死しそうだ。なんか、私の近くでウゲァァとか言って苦しんでいる声が聞こえるけれど、それどころじゃない。この眼福、和装イケメンを一秒でも長く見ていたい。あわよくば、一緒に写メ撮って、LIMEを交換したい。クソっ、パンツさえ濡らしていなければ、あんな事やこんな事も。


「ねぇ」


 和装イケメンが私に声を掛けてきている。何、何、何、私に興味がお有りですか。


「ヨダレ出てるぞ、沙耶」


 ハヘッ?


「この姿、あまりなりたくなかったのに」


 そう言った瞬間に、和装イケメンは、ただの大に戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る