第8話 他種族交流
「……レー、大丈夫?」
ポネルが心配そうな顔で覗き込んでくる。
「平気だよ。こういうのは最初だけさ」
俺たちはとりあえず寮に戻ってきていた。
部屋に入ると部屋は荒らされ、スプレーか何かで「学校やめろ」「帰れ」「死ね」など、いろいろ書かれていた。
衣類はほぼ全て燃やされ、床は水浸し。
教科書もズタズタに引き裂かれ、これでもかというほどの部屋だった。
「……酷いですね」
ヘルオスは部屋の惨状を見てそう呟く。
「気にするだけ無駄さ。今は俺がなにしても関係を悪化させるだけさ……それよりもすぐ飯にするか」
「!! 肉をご所望します!!」
ポネルは無邪気に飛び跳ねるが、上下に揺れるものもありなかなか直視できない。
「何を恥ずかしがってるの?」
「いいから、大人しくしてろ」
「!! レーの手作りだ!!」
「……なんだよ、さっきからその……レーって?」
「レーはレーだよ?」
指をさされ気づく。
俺のことか。
「私は野菜多めでお願いします」
「わかった」
注文の多い客たちだ。
***
「わぁぁぁあああ〜〜!!! 豪華だ! 凄いねぇ! レーは!!」
「壮観です」
少し人数が多いから張り切ってしまった。
肉料理、野菜料理がバランスよくテーブルに乗っている。
「じゃあ食べるか」
「いただきまーす!」
「いただきます」
ポネルは高速で肉料理に手をつけていく。
いちいち食べるたびに「んんぅぅ〜!!」と嬉しそうな声を発している。
ヘルオスはゆっくりと丁寧に野菜料理中心に食べている。
それは思わず美しいと言ってしまいそうなほど綺麗な食べ方であった。
「食べながらで悪いが、さっきの続きだ……二人は俺の能力によって召喚されたんだ……それはわかるか?」
「……なんとも言えないです。何となくですが、ここにくる前白い光に包まれたのは覚えているのですが……」
「同じー、んんぅぅ! おいひい!」
白い光……。
それに行方不明だったヘルオス……。
……細かいことは明日、調べればいいか。
「そういえばヘルオスは
「……?
……その話は少しおかしい。
今なんてこんな風に
「ポネルは
「……いじめてこないならマシだよ。レ、レーは……優しいから割と好き……ってなんで頭撫でるの……」
徐々に声が小さくなるポネルを見て少し微笑ましくなった。
気がつけば手が出ていた。
「悪い、つい……」
「いや……もっとやって……気持ちい……」
それを温かい目で見守るヘルオス。
この夜の夕食はとても楽しかった。
久々の一人以外の食事。
昔のことを思い出す。
この酷く汚された部屋で見えたこの暖かい関係がとても変だけど綺麗に見えた。
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