第58話 そうだカジノを作ろう その5
夕陽はとっくに沈み、闇がたちこめている。商業街に開いたとある酒場から依頼を完了した冒険者達らしきの叫び声が此方まで響く、開いた扉からもれる灯が地面に太い光の縞を描く。一目見て立派と言えない酒場で酒をたらふく飲む冒険者達も、翌朝には王都の外に出て日課である魔物を狩る依頼を受けるであろう。気持ちよくはしゃぐ彼等に少しうるさい気持ちになりながらも、俺は目の前に広がる荒らされた土地を眺める。
そう、俺は建物を建設する為にこの建設予定地まで来ていた。一応周りの目につかないよう深夜に行動したのだが、あんな近くに酒場があるなど知らなかった。…いや、ナビリスなら知っていたのだろう。教えてくれなかっただけで。
まぁ夜になってから大分時間が経っている、酒場で暴れている冒険者達も既に出来上がっている頃だろう。
念の為、幻術魔法「ミラージュカーテン」を展開し周囲からバレないようしておくか。
透明なカーテンが目の前の土地を覆う隠すように広がり、一晩で立派な建物が出来上がっても俺以外には見れないようになった。
「さてと、先に地面を整地するか」
建物を建てる前に、土地に捨てられたゴミや凸凹になった土。根が枯れた木を更地にし始める。
土魔法「グランドコントロール」で凸凹の土を綺麗な平原へと戻し、ゴミや鼠の死骸を一ヵ所にアポーツで集め重力魔法「グラビティダウン」で粉々に潰した。
最後の仕上げとして潰したごみをまた土魔法で地面に大きな穴を開けて、地下奥に隠すようにと置いた。
俺の魔法を他の魔法使いが観てたら、その使用した魔力量に驚愕しているだろ。まあ他のやり方もあったがこれが俺にとって一番楽だった。
開けた穴を塞ぐと、まぁなんということでしょう。大量のごみが捨てられ、荒れ放題だった土地が見違えるほど平地に。地盤も土魔法で固め、ゴミ一つ落ちていない草原に大変身。
幻術魔法を解除した時には、その変わりように二度見、三度見する事間違いなし。
…うん、茶番はこの辺でいいだろう。
大通りに面した平地からカジノの入り口予定までの道を土魔法で耕し、更に10センチ程の窪みを作りその上に創造魔法で大量生産した石材を敷いて、隙間をコンクリートで塞いでいく。
横幅20メートルの道を入場門付近まで敷いたら、次に馬車を停める停車場を作ることにした。これだけ広ければ馬車による事故も減るだろう。
どれだけの客が来るが知らないが、どれだけ広く作っても邪魔にはならないと停車場を碁盤の目状に設け。少し離れた場所に馬を預かる馬小屋も創造魔法で作り終えた。馬の世話係や馬泥棒から守る警備係はギルドに依頼でも出そうと思っている。新しく奴隷を買って彼等に補ってもらう事も出来るが今は辞めておこう。
馬小屋が崩れないよう硬化魔法で屋根を支える柱を強化し、土台も頑丈にした。馬小屋の後ろに小さな倉庫も創造して、大量の藁をブロック状にして中に入れた。一応馬の世話に必要な道具も入れておこう。足りなかったら後で補充すればいい。
「さてと、今日はこれぐらいでいいか」
途中面白くなり夢中で土地を造成していると暗闇が段々後退して太陽の光がそろそろのぼりはじめてきた。朝日の光に気付いた俺は建物の建築を中断し、顔を太陽の方角へ向けると灰青色におぼめく朝の最初の光が俺の身体を貫いた。
幻術魔法を展開したまま建設中の土地に誰も無断で侵入されないよう結界魔法も張っておいた。
満足そうに頷いた俺は転移魔法で屋敷に戻った。
リビングルームへ転移した俺の先には、既に朝食の準備を終えて待っている二人の美女の姿が見えた。
彼女等の優しさに俺も思わず笑みを浮かべると感謝の言葉と共に口付けをあげた。
はい、今夜もやって来ました。どうやら俺の土地に侵入を試みた者がいたらしいが、俺が張った結界に阻まれ、運よく?パトロール中の治安部隊に捕まったらしい。来世に期待しているよ南無南無。
今回はカジノの一階部分を建設した。勿論建物全体を一瞬で建設できるが、それではすぐに終わってしまい面白くない。
一階では平民でも楽しめる様にミニマムベットを低く設定し。横に建築した食堂ではお手頃価格で食べ飲み出来る様に大量のテーブルを設置して、二階や外に大声で叫んでも声が響かないよう防音性に優れた素材を導入した。
ベット設定が低い一階部分では大勢の客が来ると確信している、だから一階は広くそして様々なゲームで遊べるようにしている。
遊べるゲームの種類はこうなっている。
ルーレット。
スロットマシーン。
ポーカー。
ブラックジャック。
バカラ。
クラップス。
とオーソドックスな種類を揃えて置いた。トランプカードはこの世界に召喚された勇者が発明して広めていたから直ぐに慣れるだろう。
しかし、この世界でスロットマシーンは流石に作れなかったらしいのでそれらは俺が創造魔法で作りだした。ルーレットも丈夫な素材で創造して配置場所に置く。
大量に作成したチップや荷物は建物が完成するまでインベントリーに入れておく。高額チップを保管する部屋も作り終えていない。オッズの配分などはサラーチェに任せるつもりだ。俺も客として遊びに来たいからな。
っうし。今日はこれぐらいでいいか。次は二階部分や従業員部屋等の増築するか。
はい、完成しました。
目の前に完成した建物に目を向ける。入り口も平民用と貴族用で二つに分かれている。理由は混雑させないためだ。
そこには二階建ての綺麗なドーム型。周りの建物と比べても一回り、いや二回り高く。千人、二千人の客が入っても大丈夫なように作られたこのカジノは貴族の屋敷より広く作られ、作った張本人の俺もワクワクが止まらない。
余計な者が入らないように敷地の周りを高さ三メートルほどの防壁によって囲んでいる。壁をよじ登って侵入されないよう、結界魔法の魔道具も設置している。
建物の二階部分に行けば王族、貴族階級や大商店の者しか遊べない空間となっており、遊べるゲームの種類は下と変わらないが。高ベットの掛け金となっており、換金ブースに置かれた景品も滅多に見掛けない景品がズラリと並んでいる。内部も美しく荘厳で、細部まで細部まで作りこまれた内装。黄金製の巨大ルーレット、楽器の類。絵画や壺など、ありとあらゆるものが配置されている。
俺も頑張った、途中から楽しくなって神眼で監視していたナビリスに怒られたが。
「ショウ様っ!」
完成した建物を眺めた俺はそのまま入口を潜る。
すると、そこにはサラーチェを筆頭に彼女が召喚した低位天使が勢揃いしていた。
俺の姿を確認して飛び込んできたサラーチェを受け止め、頭を撫でる。
「サラーチェ、全て完璧に仕上がったか?」
「はい!全員一級ディーラー並みの戦力です」
…恐らく強引に埋め込ませたようだが別に気にしない。低位天使と言っても、オートマタのような存在だからな。
「そうか、良くやった。もしカジノで働きたい者が出てきたらサラーチェに任せるよ。俺は口出ししないから」
彼女の頭を撫でながらそう伝えた。
「畏まりましたショウ様!」
良い返事だ。
「必要な素材や食材があったら気にせずに念話で教えてくれ、補充しておくから」
「はい!」
楽しみだな。オープン日にはエレニールを招待するか、彼女のお蔭でカジノも作れたし。
最後に…スラムのボスとこれからについてお話でもしておこうかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます