　無事何も問題なく海のような平野が広がるマクリー大草原に戻ってこれた。ただ風が吹き渡り、柔らかな緑の草がそれに合わせて音もなく揺れている。綺麗だ。一度神界に戻ったら、こういう草原を作ろう。自然を司る神々が気に入ると思う。

『翔、魔王から助けを求められたら、助けるのですか？』

　ナビリスが心配そうに聞いてくる。言いたい事は分かってるよ、心配するな。神が一種族に偏るなって言いたいんだろ。

『リッシュから言われた通りに絶体絶命の時しか手は出さないよ。もし、侵略目的で助けを求められたら、天罰でも下すよ』

『その言葉を聞いて安心しました。貴方は自然発生した他の神々とは違い、人間から変化した神です。例え神の魂に変わり、人の価値観が変化しても、無意識に一種族に偏ってしまう可能性があるのです』

　成程…ナビリスから見ても俺は神として、不安定って事か。

『大丈夫だナビリス。俺が神として動くときはこの世界が滅びそうな危機だけ。逆に言えば滅びそうにならない限り神として一切動かない。それ以外は、気に入った個体に加護を与えたり、気のままな冒険者として世界でも歩き回るよ』

『ふふ、分かりました翔。何かあったら全力でサポートします』

　感謝するよナビリス。君のおかげで今の俺が居ると言っても過言ではない。それを教えたら調子に乗るから、言わないけど。

『それじゃ、街に向かうか。初異世界旅行楽しみだなナビリス』

『はい！私も楽しみです！ところで何処に向かうの？』

　…何処にしようか？目の前に半透明の地図画面を出し、じっくり見ながら、指で移動させたり、拡大した。

『…よし決まった。ランキャスター王国内ビットラー領の街、通称『冒険者の町オーウェン』に向かおうと思う』

　冒険者の町オーウェン。ビットラー辺境伯が納める一つの街であり。下級ダンジョンが三つもあるとても恵まれた土地。ビットラー領は王都から南に馬車で二週間の距離にあり、領主邸があるビットラーの街を中心に、オーウェンの町を含めた幾つかの街や村があるみたいだ。マクリー大草原もビットラー領のようだ。そして、隣接するカサ・ロサン王国との砦を南に持ち、東には魔物の大森という危険な大型魔物が徘徊する森を自領に持っている。

『冒険者の町オーウェン。成程、冒険者登録するには、持って来いの町ですね』

『ああ、それにこの世界のダンジョンがどんな感じか見てみたいからな』

『確かに…異世界『カブト』に有ったダンジョンは決して、人類では攻略できない物でしたね』

　それは、完全に同意するよ。一層目で邪神の手下が蟻の数程居たんだ。神界から観てたけど、俺でもムリゲーって思ったし。最終的に祖父によって世界ごと作り直された。

『さて…ここから、オーウェンまで徒歩で、約1日程度。ゆっくり向かおうか』

『翔が作った乗り物は使わないの？それに乗ったら、数時間で着くけど？』

　俺が作った乗り物？…あぁATVね。懐かしいな。

『折角異世界に降りたんだ。俺に寿命は無いし、気楽に行くよ』

　俺とナビリスは神界やこれまで観てきた世界の出来事を語りながらオーウェンへ目指して歩き始めた。

「おーれーはーひ－まだーまーちーはーまだかなーるるるらららー」

　はい、今俺歌ってます。神なのに音痴です。暇です。ゆっくり歩きながら景色を観察してたが、飽きてしまった。小説に異世界で町に向かう道中、イベントが起きるって書いてあり内心ワクワクしてたが、結局何も起こらなかった。途中森の中からゴブリンが四匹俺に襲ってきたが、目線を変えず一瞬で火魔法で灰すら残らず焼き殺したぐらいだ。絶望的な歌手力で歌いながら数時間歩き続けたら、立派な外壁が見えてきた。内ポケットから最高級パシフィックパラディン製のスケルトン懐中時計を取り出し時間を確認した。針は丁度12時を指していた。懐中時計を内ポケットに戻し。先へ見える大きな壁、それとそのサイズに見合った城門に目線を戻した。

「（やっと着いたか…次からスケボー使おう）」

　城門の列に並び、10数分程で俺の番に回ってきた。立派な門の前で門番らしき兵士が槍を持ちながらこちらの方に歩いてきた。

「身分証を」

「持ってないです。田舎から来たので冒険者ギルドで会員証を作ろうかと」

「そうか。入街税の銅貨５枚を払い、この水晶に手をかざしてくれ」

　この世界に来てまだ二日目。勿論身分証など持ってるわけ無いので、田舎から冒険者に成る為に、した。入街税の銅貨5枚を渡し。腰に掛けてた袋から野球ボール程の水晶を持たされた。言われた通りに水晶に触ったが、何も起こらなかった。

「よし、通っていいぞ。これが仮身分証だ。ギルドで身分証を作ったら返しに来い」

「分かった。それでさっきの水晶は？」

「ん？ああ、あれは真実の水晶って奴で。もし、職業が盗賊とかだったら、赤く光る魔道具だ」

　ふーん、流石人類。面白い物を作るね。後で俺も作ってみよう。

　俺は、門を通り越し、冒険者の町オーウェンへと足を踏み入れる。途端に広がる、異世界の街並み。神界から観てただけだったが。自分の足で、目で実際に見ると、否応無に気分が高揚する。

　ちなみにこの世界の通貨制度であったが、この大陸ではほぼ全て統一されている。勿論他の国によって貨幣のデザインは違うが、使われる白金・金・銀・銅などの量が統一されてるので。何処の国の金を使っても、問題は無かった。あとは、貨幣の単位はルセが採用されている。ただし、単位はあまり使わないとか。

銅貨1枚が日本円で100円。

銅貨10枚で銀貨１枚。

銀貨100枚で金貨１枚。

金貨10枚で白金貨１枚。

　神界で暇な時に、色々な世界の貨幣を作りまくっていたら。いつの間にか、白金貨で塔が作り出せる程の量になっていた。経済を破綻させないよう気を付けよう…

　街中を歩いていたら、良い香りがする屋台を見つけた。

「おっちゃん、その牛串を五本くれ」

「おうよ！銅貨5枚になるぜ」

「はいよ。それと、値段が張ってもいいから、良い宿を知らないか？」

　金を渡し、牛串を右手に三本、左手に二本持ち。折角なので今夜泊まる宿について聞いた。

「おいおい、どこかの坊ちゃんか？まあいい。そうだな、このまま真っ直ぐ向かって大きな噴水がある中央広場の左側にお金持ち御用達の黄金の木って宿が有るぜ」

「そうか、ありがとう。それじゃ、串をもう三本くれ」

「あいよ！」

　屋台のおっちゃんに言われた通りに真っ直ぐ向かったら中央広場らしき場所に到着した。中央広場と言うだけあって人込みは多く、色んな種族の男女が楽しそうに歩いていた。そして左側を見るとそこに、周りの建物とは比べ物にならないぐらい豪華でデカい建物を見つけた。看板には、大きな大理石で『黄金の木』と彫られていた。扉を開きその中へ入ると、そこは宿というよりホテルといった方がいいだろう内装だった。フロントへ向かい、制服姿の作業員が忙しくも落ち着いた様相で働いてる。食堂と思われる場所には、立派な鎧やローブを身に着けた冒険者が団欒していた。洋風の高級ホテルの内装に急にファンタジー要素が混ざり合いまさに異世界ともいえない雰囲気を醸し出してる。

「おおー豪華だな」

「自他認めるオーウェン一の宿ですからね」

　思わず零れた俺の一言に答えたのは、カウンターの裏にベージュ色のスーツを着た渋い男性が立っていた。

「そうか、じゃあ取りあえず普通部屋を10泊で」

「ありがとうございます。合計で白金貨１枚になります」

　俺は内ポケットに手を入れインベントリから出した白金貨１枚を取り出し、大理石のカウンターの上に置いた。

「ありがとうございます。白金貨１枚丁度、受け取りました。それではカウンターに置いてある名簿にサインをお願いします」

　作業員から魔力でインクを出す羽ペンの魔道具を受け取り、名簿にサインした。

「ショウ様ですね。こちらがカギになります。お部屋は階段を上がった２０９になります。お食事やお風呂など、好きな時に使用できます」

「どうも。よろしく」

　部屋の鍵を渡し一歩後ろに下がり、右手を胸に、左手を腰の後ろに回し一礼した作業員に礼を言い、指定された部屋へ向かった。

　部屋の中は豪華だった。宿にある部屋のランクでいえば中級だが、高級宿だけあって室内にはクイーンサイズのベットが置いてあり、調度品や絵画等も飾り。魔力を使ったランプ、ジャグジーなどが設置されてた。勿論神界にある私室とは比べてはいけない。

　一通り目を通すと部屋を出てフロントに鍵を預け。早速冒険者ギルドへと向かう。

『ナビリス。冒険者ギルドへ案内してくれ』

『了解しました。それでは、この道を真っ直ぐに向かって、右側に歩いてください』

　宿を出て、来た道を真っ直ぐ向かって右側に歩を進める。中央広場には、先程より人々が多く居た。噴水の近くに設置されたベンチに開いた場所は無く、噴水周りの腰掛にも大勢の人々が座っている。やはり街のメインストリートは混雑しており、人にぶつからないよう、端の方を進んでいく。

『ここか、ありがとナビリス』

『いいえ』

　ナビリスの案内通りにしばらく進むと、大き目な石造りの建物が三つ並ぶ前に着いた。扉の上には、左の建物に大型倉庫、真ん中の建物に冒険者ギルド、右の建物に訓練所という看板が掛かっている。字が読めない人でも分かるように、大きな盾に二つの斧がクロスした絵も飾ってあった。真ん中のギルド会館には、ひっきなしに人々が出入りを繰り返しており、それなりに活気を感じさせる。流石、冒険者の町。

　俺は感心しながら、開けっ放しの扉を潜って室内に入った。同時に包まれる、喧騒の音。冒険者ギルド内部は騒がしく、受付が十程横一列に並び、その前方には大きな掲示板が置かれ、無数の冒険者達が良い依頼を巡り、取り合っている。右側にテーブルやバーカウンターで、他の冒険者達が、談笑しながら、酒らしい飲み物を酌み交わし、骨付き肉を頬張る。武器すら持っていない俺が入って来た事に一瞬目線が集まるが、すぐに興味が失ったらしく彼らは仲間たちとの談笑に戻り、酒を飲み始めた。

　そのまま受付の方へ向かう。複数ある受付のうち、『新規登録者』とカウンター上に書かれた受付を見つけたが、既に五人程の列が出来ていたので近くに空いていたテーブル座り、待つことにした。新規登録の様子を見ていたが、どうやらまず最初に書類らしき紙に記入し。次に渡された鉄製のカードに針で刺した一滴の血を垂らし、口の形をした水晶の上に乗せると、登録者のステータスが表れたら無事、登録が完了ようだ。

『ナビリス。スキルごみ箱からスキル『隠蔽』をセットしてくれ』

『了解しました。そのままスキル『隠蔽』を発動させますか？』

『ああ。レベルを１０にして、レベルに見合う剣術と魔法が少し出来る位に設定してくれ』

『…完了しました。他に何か？』

『それと、物理無効の解除を。一滴の血をカードに垂らし終えたら、オンに戻してくれ』

『…完了しました』

『ありがとう。出来るだけ人類に神の事をバレたくない』

　別に目立つ事に問題は無い。目立つ事は紳士にとって当たり前の事だからな。だが、俺が神だとバレたら、物凄く面倒くさくなる。そしたら、さっさと神界に戻ろう。

　20分程待ってたら、皆登録し終わったようなので、受付の前に移動した。

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか？」

　金髪に狐耳がピョコッと微かに揺れてる可愛いらしい受付嬢が座りながら丁寧な対応をしてきた。

「冒険者登録をお願いします」

「ええっと…登録ですね。あの…失礼ですが、武器や防具などの装備品は」

　武器を持たず、更に防具など一切着けてない俺を見て、狐耳を真上にピンっとし、怪訝な表情を浮かべる受付嬢。確かに、武器を持ってなく、普通の服を着た男が冒険者に登録したいって言われたら、変人にしか見えないな。勿論インベントリの中には神剣や、伝説の防具とか色々入っているが。如何せん物凄く豪華。装備すら恥ずかしくて出来ないぐらい豪華。

「大丈夫だ。問題ない」

「は、はぁ…畏まりました。では、こちらの書類に必要事項を記入をお願いします。代筆はいりますか」

「問題ない」

　そう言って、書類を受け取った。

　名前の欄にショウと書き、特技は剣術。年齢は適当に１９と書く。出身地はシンカイの村と書いておこう。最低限しか記入する必要がないみたいだ。

「どうぞ」

「はい、ありがとうございます…ショウ様。それでは、血を一滴このカードにつけてもらえますか。その後にこちらの水晶に乗せることによって魔力がカードに登録されますので」

　針とカードを一緒に渡されたので、言われた通りに針で指先を刺し血を確認したら、カードに垂らした。カードが一瞬光った後、ロの形をした水晶の上に乗せると水晶の中に俺のステータスが表示された。

名前：ショウ

種族：人族

職業：戦士

レベル：１０

ＨＰ：１１５

ＭＰ：９０

攻撃力：１０５

防御力：８９

体力：１０２

魔力：８１

俊敏：７６

器用：９０

運：１０

魔法スキル：

水魔法Lv.２　聖魔法Lv.１　魔力操作Lv.２

生活魔法

スキル：

剣術Lv.２　体術Lv.１　身体強化Lv.１

称号：

　俺の隠蔽したステータスを見て受付嬢は狐耳をブンブンしながら驚いていた。

「ええぇ！レベル１０で既に剣術レベルが２！？しかも魔法は二属性持ち！？いやぁ、凄いですね！あ、ところで私ベラと申します……今の内に唾付けとこ」

　おいおい、大声で個人情報ばらしているぞ。ほら、さっきまで俺の事なんか眼中に無かった連中が、こちらを見てるぞ。最後に聞こえた小声は聞かなかったことにしとこう。

　俺の呆れた視線に気が付いた受付嬢ベラが、顔を赤く照れながら謝ってきた。

「も、申し訳ございません。つい、びっくりしちゃってエヘヘ」

　可愛いから許そう。

『………』

　ナビリスがの無言が怖いが、無視しとこう。

「いや、気にしなくていい」

　ここは紳士らしく答えよう。

「わあぁ～ショウ様って優しい人なんですね！…ッゴホン、気を取り直して。これがギルドカードになります。魔力を込めると名前とランクが浮き上がります。ランクが上がるたびにカードの素材も変わってきますから頑張ってください！新規登録者は最初Ｆランクからのスタートになります。ショウ様ならSランクになれると信じてます！それでは、冒険者についての説明は必要ですか」

「ああ、お願いする」

　ちょこちょこ本音が出てるが、対応はちゃんとしてるので、このまま説明を聞こう。

「はい！折角長い説明を覚えたのに、皆さん詳しく聞いてくれないんですよね…っ！では、冒険者にはランクが存在しており、皆様最初はＦランクから始まり。そこから最後はＳランクまであります。Ｓランクに関しては、現冒険者ギルドで知る限り、今は４６名しかおりません。ランキャスター初代国王様はＳランクの更に上のエレメンタルランクでしたが、それ以降誰も、エレメンタルランクになった者は居りません。カードの素材に関してはＦランクは鉄から始まり。ＥランクとＤランクは銅、Ｃランクは銀、Ｂランクは金、Ａランクは白金、そしてＳランクはアダマンタイトカードになります。エレメンタルランクのカードは精霊からの加護を受けた虹色に輝くカードと、記録されてます。昇格についてはその内分かります…はぁ疲れた」

　異世界から召喚された勇者、ランキャスター初代国王。一度会いたかった。

「…ゴクッ…ゴクッ…ッパア！水が美味しい！…依頼については、通常依頼、指名依頼、緊急依頼、オープン依頼の四種類があり一般的には、通常依頼となります。但し、高ランクに上がると、依頼者の指名がある指名依頼が出される可能性があります。指名依頼の内容が違法依頼では無い限り、断る事は難しいです。緊急依頼については、ダンジョンから魔物の氾濫によるスタンビートなどがあります。他国との戦争についてギルドは絶対的中立を取っていますので各自の判断でお願いします。最後のオープン依頼については、もし依頼中に未発見ダンジョンを見つけたら即座にギルドに伝える依頼になります。依頼中では無くても、見つけた場合即座に伝える事を義務付けられています」

　凄いな。良く噛まずに喋ったよ。

「通常依頼は左側に設置されてる巨大な掲示板に張り出されておりますので、あのむさ苦しい中から剥がして受付までお持ちください。それに、依頼を受注せずとも魔物や薬草を納品してもらえばランクはあがります。パーティーを組まれる場合はこちらの受付で登録してください。ギルド内で冒険者同士の争いは、感知しません。もし冒険者を殺した場合、問答無用で犯罪奴隷になりますので気を付けてね！」

　丁寧に教えてくれた。既に殆ど知っていた。だが、美女と会話が出来るなら。何回でも同じ説明を聞く。

「ではショウ様頑張ってください！そして、デートに誘ってくださいね！…あ」

　最後の言葉に俺は笑顔で答えた。すると急に後ろから俺の肩に何かが置かれた。

　置かれた方へ振り向くと、そこには一人の大男の手が俺の肩に置かれてた。良く見ると、更に二人の男が大男の真後ろにいた。こ、これは、伝説のテンプレ？おおーすげー。

「おいクソガキ！おめぁ俺のベラと喋りすぎなんだよ！あぁ！？なあベラ！こんな武器も持っていないクソガキの相手してないで、俺達と相手しようぜぇなあ！？しかもこにゃぁガキのレベルはたったの１０だぜ！んなの俺たちが先輩として面倒みてやる…ぜっ！」

　俺の肩に置いてた手を一旦どけ、そのまま顔に向けて殴りかかってきた。それを避けた。遅いな…。

「っち！このガキ面倒見るって言ったのに一丁前にかわしやがって！おいてめぇら！こいつに先輩方からの教育を見せやがれ！」

　大男の真後ろに居た、チンピラ二人が俺の左右から殴りかかってくる。既に面倒くさくなった俺は、早々に終わらせる為。それを避けようともせず、ある魔法を唱えた。

――時空魔法発動「停止ストップ」

　その瞬間、世界の時間が止まった。受付嬢ベラが涙目になりながら両手で口を押えてる表情も、チンピラボスの勝ち誇った顔も、酒を飲みながらこちらの様子を見て楽しんでる顔も、地面に落ちてる途中のフォークも全て止まった。

『ナビリス。スキルごみ箱から仙術をセット』

『…完了しました。私の分も存分にやっちゃてください』

　勿論。仙術をセット俺は、右手をチンピラどもの目の前に動かし、手の平を開きスキルを発動した。

――仙術スキル発動「八系」

瞬間、手の平から凄まじい衝撃波が起こった。その衝撃波をもろに受けたチンピラ達は数ミリ後ろに動いたがそっれきり動かなかった。

「ぐっぅ、ががあああぁあああが！」

　魔法を解除すれば、ピンボールのように、俺の左から殴りかかっていたチンピラは冒険者たちが飲み食いしてる方へぶっ飛びテーブルを壊しながらバーカウンターに強烈な音を立てながら止まった。右から殴りかかってきたチンピラは掲示板が設置されてるすぐ傍の壁に穴を開け、隣の建物に吹っ飛んでいった。一番もろに衝撃波を食らったチンピラボスは、そのまま猛烈な速度で出口からメインストリートへ吹っ飛んだ。いきなりの事態に一気に静かになったギルド内。誰も状況が理解出来なかった。

「ベラ。あいつらが勝手に吹き飛んで壊した壁とか、テーブル壊した請求はそいつらによろしく」

「へ？…え、ええっと…はい。わ、分かりました」

　未だ口をポカーンと開けてるベラに挨拶をして、堂々と扉から出て、メインストリートど真ん中で失神してるチンピラを横目に宿に帰っていった。

「あ、あのガキ何者だ…？」

ギルドではショウが出た後混乱していた。