俺の祖父は創造神 ～管理する世界でのんびり過ごす現人神～

第4話 一柱の神として

「翔…起きて。もう朝だよ…っん」

　眩しい日の光がカーテンの隙間からベットを照らし、ふと眼をあけると、うつつな、渋い網膜に、エメラルドグリーンな髪が映った

　耳元に響く心地が良い声が聞こえ、その後、唇に柔らかくて暖かい何かが触れた。

「んっ、おはよ、リノア…」

　その心地が良い声に意識を覚醒し、日の光で神秘に輝くサラサラの髪を撫でながら目の前の女性にお返しの口付けをした。

「ふふ、ありがと…今日は大事な日だから早く準備して」

　そう言いながらベットから降り全裸のままウォークインクローゼットへ向かい、今日着る服を物色し始めた。

　引き締まった腰を振りながらで服を物色する彼女を真横に置いてある水入りのコップを飲みながら見つめた。

　腰まであるエメラルドグリーンのストレートロング、もみあげ部分が肩ぐらいまである。

　目は…少々鋭く、キリっとしており、瞳は綺麗な紫色…宝石よりは水面を眺めているようで見続けると吸い込まれそう。肌は白く、少々小柄だが肉付きがよく、スタイルは抜群だ。

　異常に整った人間離れした美しさ。まあ、ここ神界に居る時点で人間じゃ無いが。

『戦神　リノアルゥーラ』

　通称女神リノア。それが、彼女の正体だ。

『おはようございます翔。今日は記念すべき日です。さっさと準備してください』

『おはようナビリス。相変わらずの辛口だな、今日が記念日ならもう少し可愛げに喋ってくれよ』

『うるさいですね、もし私が可愛げに喋ったら孕まされるので遠慮しときます』

　頭の中に聞こえてきた女性の声、俺のスキルの一つである『ナビゲータ』のナビリス。

　俺３０年前に創造したスキルだ。彼女？は創造した当初から毒舌で可愛げがないが、物凄く優秀だ。ナビリスを創造して50年。彼女のおかげで…俺は短い年月でここまで成長した。

　　『ステータス』

名前：ショウ

種族：中級神

職業：神

レベル：２４６０００

ＨＰ：N／A

ＭＰ：N／A

攻撃力：N／A

防御力：N／A

体力：N／A

魔力：N／A

俊敏：N／A

器用：N／A

運：１０

魔法スキル：

創造魔法Lv.１０　火魔法Lv.１０　水魔法Lv.１０　風魔法Lv.１０

土魔法Lv.１０　光魔法Lv.１０　闇魔法Lv.１０　聖魔法Lv.１０

雷魔法Lv.１０　氷魔法Lv.１０　無魔法Lv.１０　時空魔法Lv.１０

支援魔法Lv.１０　精霊魔法Lv.３　召喚魔法Lv.５　魔力操作Lv.１０

生活魔法

スキル：

全武器適正Lv.１０　全状態異常無効Lv.１０　物理無効Lv.１０

魔法無効Lv.１０　ナビゲーター　カタログ　神眼　インベントリ　　

錬金術Lv.１０　無詠唱　ダンジョン作成　スキルごみ箱

称号：

創造神の孫　創造神の弟子　万能神　神々の父　神殺し

邪神殺し　ドラゴンスレイヤー　神界を改造し者

女神ハーレム

　うん、皆が言いたい事は分かる。所々変だよな？うん、知ってる。気持ちはよーくわかる。

　まず種族。これを最初から説明しよう。

　あれは俺が神界に来てから10年目のある日、祖父が作った塔型のダンジョンで修行していた頃、やっとの思いで俺は頂上に着いた。頂上にはある一体の魔物が居た。

　全長約５０メートルほどの巨体に、その姿は黒。

　漆黒ではなく、血が通った黒。蛇のような頭が３つあり、尻尾は7つ以上確認できる。

　鋭角的なフォルムは龍の面影を残しながらもむしろ悪魔のような禍々しさを放っている。

「…おいおい。こりゃあ死んだな。」

　絶望だ…勝てるはずがない。

　…でも俺もこの十年で成長したんだ、ちょっとばかし無茶しても生き延びてみる価値はある。

「っよし！まずは鑑定！」

名前：ズメイ・ゴルイ二チ

種族：暗黒龍

レベル：５０００

ＨＰ：？？？？？？？

ＭＰ：？？？？？

　まじか、確かズメイ・ゴルイ二チって神話に登場する伝説のドラゴンじゃねえか。

　レベルも三倍はある。だが、覚悟は決めた。支援魔法で能力を上げ、右手に持っている剣を構え、俺は全力で向かった。

　全ての首を切り落とし、動かなくなったのを確認し、やっと一息入れる。

「あがああぁ！疲れた！今回はマジで死ねた」

　三日三晩戦い続けた俺は心身ともに疲れていた。ＨＰ、ＭＰ共にゼロに近い。指一本ですら動かせない。あれは激闘だった。インベントリに入っていたポーションは全部使い切った。腕が食いちぎられた回数すら覚えていない。

　動かくなったズメイ・ゴルイ二チを見ていたら、地面に吸い込まれるように段々と溶け始めた。

「ふぅ。全部溶けたか、うん。寝よ！」

　安全を確認したと同時に気絶するように眠った。

　十数時間爆睡し元気はつらつの俺はインベントリの入っていたテリヤキハンバーガーを食べていた。

「うん美味い！戦闘中は何も食べれなかったし、飲み物もポーションだけだったし…ん？」

　立ち上がり周りを見ながら肩を回していたらズメイ・ゴルイ二チが居た場所にソレがあることに気が付いた。

「宝石？いや、宝玉か？に、してはでかいな…」

　そこにあったのは、丸い、バランスボールを一回り小さくしたぐらいの、虹色に輝く宝玉。

　いつでも剣を抜けるように注意しながら俺は、それに手を伸ばし。

「っう！？ガああぁあああッっ！！」

　宝玉を触れた瞬間手のひらに吸い込まれ、突然襲い掛かる、猛烈な痛み。さっきの戦いとは比べ物にならないぐらいの苦痛。まるで全内蔵をミキサーにかけられ、ぐちゃぐちゃにあそばれるような、不快な感覚が全身を襲う。思わずうつぶせに崩れ落ち、床に両手を突こうとするが、腕が動かない。

　眼の端から血が溢れ、あまりの痛みから視界がぐらつき、吐き気がこみ上げる。

　――何秒？何分？何日？何年？分からないほどの時間が続くと、いつの間にか、痛みは消えていた。

　やっとのおもいで立ち上がり、深呼吸し。

「ふぉふぉふぉ、おめでとう我が孫よ。君も神の一族だ」

「あぁ、ありがとうお爺ちゃん。でもあの痛みはもう勘弁したいよ」

　いつの間にか祖父の創造神が俺の横に居た。いつもなら驚いていたが、今は冷静に対処できる。

「ふむ、それほどの苦痛なのか？儂は産まれた瞬間創造神だったからのぉ」

　お爺ちゃん曰く人間から神になる時、人の魂を神の魂へと作り変えないと、いけないらしい。

　その副作用的で人で感じてた価値観の変化や感情が無くなったみたい。まぁ確かに、神で悲しみ、怒り、嫉妬などの感情は要らないね。

「そういう事じゃ。まぁ神になったばっかりお主は例えると赤ん坊。このお爺ちゃんが神について教えるぞ。ふふふ」

　異世界で死なないように修行してたが、最終的に神になっちゃったか。ふむ、まぁ仕方ない。己の道を只進むか。

「…それより、温泉に入りたいな。せっかく創造魔法で立派な温泉を作ったし、お爺ちゃんも一緒にどう？」

「おお、確かに、あの温泉は気持ちいの。うむ、では戻ろうか」

「翔、このドレスど…ってどうしたの？何か悩み事？」

　リビングでリノアを待ちながら、昔の事を思い出していたら、期限良さそうに青色のドレスを着た彼女がリビングへ入ってき、何やら心配そうに聞いてきた。…うん、そのドレス似合ってるよ。

「ん？昔、神になった時の出来事を思い出していたよ。あの痛みは、今でもトラウマだよ、はは」

「ふふふ、でも私は貴方が神になって感謝してるわ。貴方が居たおかげで私が欲しかった子供ができたもの」

　そう言って、彼女は満面の笑顔を見せてくれた。これ以上の幸せが無いぐらいの笑みだ…彼女が戦を司る女神と言われても、信じないだろう。

「そっか、それじゃ俺も神になった事を感謝するよ」

　言いながら彼女と腕を組んだ。照れる姿が可愛い。

　玄関に向かい、黒く塗られた両開きのドアを押し外に出ると途端に広がる、５０年前には無かった豪華な街並み。周りを見渡すとそこには色々な姿をした神々が歩いていた。勿論ここは俺が５０年前に転移された神界だ。最初は何もなくただの白い空間があった場所だが。俺が創造魔法で色々作り出した結果この神界は某夢の国にハリー〇ッターの街を掛、更にハリウッドの町を足した感じの空間が出来上がってしまった。　

　…うん。なかなかにカオスだ。

　リノアと腕を組みながら街並みを歩いていたら薄い青色の髪のイケメン少年がこちらに向かって走ってきた。　

　Ｆ１カーより速い速度で。

「お父様！リノア母様！お元気ですか？」

　ニコニコしながらこちらの事をお父様と呼んだ少年は俺と『生命神　ライムベル』の間に生まれた子だ。

「お、アロン。元気だったか？」

　こちらに向かって飛び込んできたアロンを受け止め、頭を撫でながら会話を始めた。

「はい！今日と日を待ち望んでいました！」

　ここで、ふと不思議に思っただろう。お前、子供何人いるんだと。　

　実は、他にほぼ全女神達の間にも子供が居る。これにはちゃんと立派な理由がある。

　神になる方法は合計で３通りある。

　１つ目は、創造神や他の神のように自然発生した神。これがほとんどの神にあたる。

　2つ目は、俺のように生物から神に進化した者。しかし、力に溺れほぼ邪神になってしまうらしい。

　最後に、神同士で産まれた子供だ。しかし、これはほぼ不可能と言っていい。何故って？確かに女神は子を産めるが、男神が精神生命体だからだ。例え人間との間に子を産んでもそれ子は半神であって、神じゃ無い。結局下界戻さなきゃいけない。

　俺が神になって子供が産めると分かった時の女神達は、こう…恐ろしかった。ッブルリと無意識に体が震えた。

　でも神が増えたお蔭で、世界を管理する手間が物凄く減ったらしい。地球もその一つだ。

『ハイハイハーレム、ハーレム。飛鳥が可哀想』

『…飛鳥には一応下級神なった時に手紙を送ったから、多分許してくれるはず。…はずだ』

『ちん斬れてください、あなたは女性の…いえ、女神も含めた女の敵です』

　おお…ナビリスがいつも以上に怖え。っま冗談は置いといて。今日は俺が転移するはずだった異世界に降りる日だ。一つの世界を管理出来るか少し不安だが、まぁ大丈夫だろう。人族に依怙贔屓もしないし。

　神として働く場合は、世界が滅びそうな危機だけ。それ以外は好き勝手でいこう。

　リノアとアロンを含めた３柱で向かった先は巨大な神殿の中にある魔法陣だ。そこから俺は異世界『ヒュンデ』に降りる。神界の神殿にふさわしい扉を開くと、そこに祖父の創造神含む他の神々が待っていた。

　人型の姿をした神、肉体は人の身体だが頭は動物の姿をした神、巨大な鳥の姿をした神、頭に船を乗っけた神、透明だが衣服を着た神など勢揃い。

　祖父が一歩手前に歩き。

「ふぉふぉふぉ、この５０年、お主と一緒に暮らせて楽しかったぞ。気楽に世界を管理しておいで。儂たちはこの神界に居るから、いつでも戻っておいで。特に人間は欲深い生き物じゃ気を付けるが良い」

　はは、この５０年ですっかり立派なお爺ちゃんになって…でも良い気分だ。創造神様からの忠告も受け貰ったし。さて、行くか。

　魔法陣の中に入った瞬間神殿全体が発光し始め。

　やがて輝きが消えた頃、そこには『中級神　ショウ』の姿は無かった…