第82話・Sky……はい?
「ティラノさんの技は使えない。私の魔法も同じ事だし……」
「壁を登るのも無理ニャ」
「なあ、ガイアの
上を見上げながらガイアが口にする。
「高すぎる……不可能。デス」
皆も釣られて上を見上げていた。空は見える。しかし周囲を分厚い土壁に覆われてその高さは目算で二十メートル程。空を飛べでもしない限り、ここから出るのはほぼ不可能と思える。
「冷静に考えてみると、こちらに飛べる者がいない事を確認しての作戦の様ですね」
「冷静はいいんだけどヨ、急がないと
「大丈夫。まだもう少しは持つと思いますよ。急がなければならない事には変わりありませんが」
「……なあ、ミアっち。空飛ぶ魔法とかねぇの?」
そこに考えが行きつくのは当然の事だろう。ラミアもそれはわかっていたはずだ。
「ありますよ。でも……」
「あるのかよ。それで俺様を飛ばしてくれ」
「いえ、問題があるのです。魔法そのものに」
「かまわねぇ、外に出られればいい。このままじゃ亜紀っちに顔向けできねぇんだヨ」
ティラノの勢いに押されて呪文詠唱を開始するラミア。もしかしたら、言葉で理解させるより体験させた方が手っ取り早いとでも思ったのだろうか。
この魔法は単純に“物体を浮かび上がらせる”という類のもの。ウチが良く見ていたアニメや漫画では、事もなく空を飛んでいるキャラばかりだったけど……実際は恐ろしく緻密な計算が必要な魔法なんだという事を、この時の伝聞から認識させられたんだ。
ラミアが詠唱を始めると、まず最初にティラノの髪の毛や服の裾がふわっと逆立った。そして身体が重力に逆らい、大地からゆっくりと浮かび上がる。
「お……おおう。なんかすげぇ。妙な感じがするぜ」
陸上生物にとってやはり“浮く”という感覚は、今までに経験したことのない奇妙なものだ。それ故、面白くも感じるのだろう。
「すげぇな、この感覚。一度飛んでみたいと思っていたんだヨ」
「あ、ティラノさん駄目、動かないで……」
……ドスンッ
「……ってぇ」
二十センチも上がった辺りだろうか、ティラノはバランスを崩し、盛大に尻もちをついてしまった。余談だが、美少女は尻もちも絵になる。
ティラノが身をもって難しさを体験した上で、ラミアが説明を始めた。
「浮かすだけなら簡単なのですが……。対象者を三六〇度、上下前後左右全ての方向に対して常に座標を保持しなければならないのです。もちろんそれは、術をかけられている人も同様で、バランスを崩すと今みたいに……」
ラミアは『三百人くらいまとめて吹き飛ばせる
「ティラノ下手っぴニャ。ここはベルノにまかせるニャ!」
「そうは言うけどよ~。難しいぜ、これ」
「ベルノなら大丈夫ニャ! Sky Highニャ!」
「どっから来んだよ、その自信……」
ラミアが詠唱を始めると、ベルノのスカートや髪の毛が逆立ち始め、足が地上から離……ドスッ
「痛いニャ!!」
空に向い、いきなりブチ切れるベルノ。地面に頭から突っ込み、顔どころか全身砂だらけ。壁を伝ってサラサラと流れてくる砂は、壁面を登れない様にする為の妨害工作だ。それが足元に溜まりクッションとなって無傷で済んだのは、皮肉以外の何ものでもなかった。余談だが美幼女の顔面ツッコミは絵に……
「さて、どうしたものでしょう」
しばらく状況を静観していたガイアが口を開く
「ひとつ……考えがある。デス」
――――――――――――――――――――――――――――
ご覧いただきありがとうございます。
この作風がお嫌いでなければ、評価とフォローをお願いします!
☆とかレビューもよろしければ是非。
この先も、続けてお付き合いください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます