第5話・ロッカーちゃん。

 物凄い轟音を響かせて、地面に激突したプテラノドン。辺り一面に砂煙が舞い上がり、その中心でぐったりしていた。これは流石にダメージ大きいだろう。

「よし、食うか!」

「ちょっとティラノさん、そういうの止めようよ」

「そうゆうのって何だよ。獲物は喰うために獲るんだぜ?」

「野生動物としての主張はわかるけどさ、少なくとも知性を持ったんだから、なんでもすぐに“食う”とかちょっとね……」

「はあ? 意味わかんね」

 ……ダメだ、話にならん。今は放っておこう。


「女神さん、何か助ける方法ある?」

〔ミルクチョコには、体力回復能力もありますよ〕

「……なんか、チョコが万能アイテム化してないか?」 

 まあ、ポーションみたいな感じで使えるのはありがたいけど。

 ぐったりしているプテラノドンの口にチョコを放り込んでみる。本能なのか生きる意志なのか、チョコを必死で飲みこもうとする翼竜。


 ――この時代にも生き物にも愛着はないけど、それでも救える命を放っておくのは気がとがめる。昔から“生き物の命”に関してだけは敏感なんだ。

 幼稚園の頃、飼っていた子猫がウチの目の前で……トラックに轢かれて死んでしまった。その瞬間の懇願するような目と、無造作にはねられた姿が、今でも脳裏に焼き付いている。多分それ以来なんだろうな、生き物の命に敏感なのは。だからと言って菜食主義者って訳じゃないし、偽善でしかないのは解っているけどね。


 チョコを飲み込んだプテラノドンは唸り声とともに小さくなり、煙とともに『ぽんっ』と恐竜人ライズ化した。

「おー、この娘も美形じゃないか。美人というよりは可愛い系だな」

 少し小柄な彼女は、小さい翼としっぽ、そして昭和のロッカーが好んで着る様なびょう付の革ジャンを身に着けていた。 七分丈の革パンツに少し大きめのスポーツシューズがこれまた可愛い。茶髪のショートでちょっと大人し目な感じだ。


 そして約束珠の指輪もGET! この娘の珠は少しピンクっぽい輝きがあるな。多分恐竜によって色の違いがあって、それが個性って事なのかも。

 早速指にはめてみる。ウチの中に入ってくる情報、この娘の名前。

「君はプチちゃんって言うのか~。ピッタリな名前だね」

「あ、あのぅ……」

「おめー気合入った格好してんじゃねえか!」

「ひいっ……」

 中指立てながら舌を出していそうな恰好しているのに、実際はめちゃ内気なプテラノドンの恐竜人ライズ。少しおっとりした感じが好感度高い! 

 恐竜を恐竜人ライズ化する。……これはこれでなんか楽しいぞ。悪くはないというか、この時代も捨てたもんじゃないな、とは思う。


 でもなぁ……転生先の選択肢に入るかどうかと聞かれたら『No』だよな。

 


「なあ、女神さんや」

〔ちりめん問屋のご隠居みたいな呼び方はやめてください〕

「あのさ、ちょっと体がダルいんだけど……」

〔それは約束珠の指輪のせいですね〕

 ――なんだって? 

〔約束珠の指輪をつけている間、ライズにあなたの力が分け与えられます。そして、その間はずっと体力と精神力が削られ続けます〕

「……そんなヤバイ要素は先に言えよ」

〔一度はめて契約が成立したら、外しておくことを推奨します。普段はつけておく必要はありませんよ〕

 ったく、ホント肝心な事言わない女神さんだな。恐竜人ライズは普段のままでも十分強いけど、指輪をはめるとパワーアップするのね。強敵と闘う時の切り札って事か。……とりあえずポケットに入れておこう。

 つけっぱなしにする必要がなくてホントよかった。これ続けていたら、どこかのゲームプロデューサーみたいにアクセジャラジャラな人になっていた所だ。

〔また、今のあなたでは同時に付けられる指輪は、多分二つが限界でしょう〕

「それって、ウチのレベルが上がれば沢山つけられるって事?」

〔そうですね、同時に分け与える力も強くなります。まあ、レベルなどという概念はありませんので、純粋にあなたの成長がカギになるという事ですが〕 

 たった二つでもわずか数分で疲労感を感じるくらいだから、この指輪はウチの力を相当吸い取っているんだろう。これを使うのならマジで体力つけないと駄目だな、ヒッキーのウチには超絶過酷な話だよ……。



 ……はあ、誰か異世界に連れて行ってくれ。






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キャライメージ画

プチ→https://kakuyomu.jp/users/BulletCats/news/16817330651004115405


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