第40話・エンカウンター

「なんのゲームだったかな……ジャンルはRPGなんだけど。呪いのアイテムか何かで、一歩進むごとにモンスターに遭遇エンカウントしてしまうやつ。あれ、ホントうざかったんだよね。女神さん、なんのゲームかわかる?」

〔いきなりどうしたのですか?〕

「いや、あいつを見てるとさ。なんというか、思い出さずにはいられなかったというか……」





 チーム猫耳恐竜の拠点から半日くらい歩くと、そこには滅茶苦茶セレブな風景が広がっていた。コートダジュールかモルジブか、はたまたセーシェルかと言ったラグジュアリーなビーチリゾート空間がそこにはあった。

 もちろん、写真でしか見た事がないし、『生きているうちに一度くらい行ってみたかったな』と一瞬思ったが、それ以上の光景が目の前に広がっているのを見ると、人生プラマイでプラスかもしれない。


 ウチは先々の事を考えて、“水棲恐竜”を仲間にしようと数人で海に遠征してきた。伝令役のプチにサーチ役のガイア、そして物理アタッカーのタルボと愛でるためのベルノ。あとは留守番という名目の本拠地防衛だ。

 白亜紀の海岸と言っても転生前の景色と大して変わらない。唯一、植物が恐竜に合わせたサイズになっていることだけが違っていた。


 ここは人の手が入っていない正真正銘の大自然。更には入江になっていて、プライベートビーチ感がハンパなく最高だ!


「ふっ、心が洗われるぜ!」

「マ、マスターさん、訳わからないこと言ってないで……」

「魚探すニャ!」

「ベルノ~、魚獲りに来たんじゃないんだぞ」

「さかニャ~!」


 ……それにしてもルカを置いて来てよかった。こんなロケーション見たら、止める間もなく光の速さで全裸になるだろうからな。


「マスター……向こうの海岸。デス」

「お? なにかいそう?」

「大勢……チカチカしている。デス」


 この『チカチカ』というのはガイア独特の表現だ。ウチは最初、ガイアの能力は“透視”だと思っていたんだけど、実際はちょっと違っていた。彼女が感知しているのは生命エネルギー、俗に言うオーラとか気とか呼ばれるアレだ。ガイアはこれを“マナ”と呼んでいる。その“マナ”が強くなったり弱くなったりしているのがチカチカして視える”という事だそうだ。


「大勢チカチカって、運動会でもしてんのかな~」

〔そんな訳ありません!〕


 女神さんの“ぱふっ”としたカカト落としが、ウチの後頭部を撫でる。


 ところで、ガイアには普段ウチ達のことも“動く熱源”みたいな見え方をしているのかな? だとすると、周りの人の表情や仕草が見えないから、それが原因であまり会話に参加出来ないのかもしれない。……でも、それじゃちょっと寂しいよな。今度から彼女には、直絶触れたりしてコミュニケーション取りながら話すようにと、皆に提案してみよう。


 海岸沿いに少し歩くと入り江の区切りがあり、そこはゴツゴツした岩山になっていた。ガイアが『チカチカ』を視たのはこの先だ。ウチは音を立てないように、そっと登り、岩陰からのぞき込んだ。


「なるほど、大漁……いや、大量にいるなぁ」


 魔王軍が四人と、またもやチーム新生。数日前に死神と遭遇したばかりなのに、もう次の敵とエンカウントしているとは。


「あいつ、マジで呪いアイテム持ってんじゃね?」


 見た感じ、初代新生の方がかなり不利な感じか。このまま見物していたいけど、都合よくアイツだけ気絶するなんてことはないだろうし、その間にティラノ達が大怪我でもしたら目も当てられん。


 ……気は進まないが、ここは共闘するしかない。


「プチちゃんとベルノはここに待機で。プチちゃん、例の合図したらこの間みたいに手榴弾ヨロシク!」

「わ、わかりました~!」


 そう言うとすぐに双眼鏡をのぞき込み、相変わらず目の前の空間を手でまさぐっている。怪しさ全開、いつものプチだ。


「ニャ……ニャ⁉」


 不規則に動くプチの手にベルノが反応している。目をキラキラさせながら、とびかかりたくてウズウズしているのがよくわかる。猫科の習性だよね~。我慢するんだよ~。


「あと、タルボちゃんも待機で。初代新生とは顏合わせない方がいいよね?」

「いえ、大丈夫ですわ。あの人とは、もう……終わりましたの」


 なんだその『別れました』みたいな言い方は。連ドラなら過去に何があったのか気になる所だぞ。きっと相手のDVが原因なのよね。そしてドアの陰から家政婦が見ているんだよ。家政婦はみたらし団子! ……と、いらん妄想はこれくらいにして、と。



「んじゃ、いくよ。ガイアちゃん、タルボちゃん」






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亜紀のプライベートビーチ(仮)→https://kakuyomu.jp/users/BulletCats/news/16818093079665523719


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