第28話・彩光の羽根


「亜紀っち、あいつか?」

「マジか~。何でこんなとこに来てるんだよ。当分会いたくなかったんだけどな……」

 こちらに向かってくる一団に不穏な空気を感じたティラノは、木刀を構えて睨みを効かせた。『あいつか?』と聞いてきたって事は、直感的にルカを襲った猫耳ブラックこと“初代はつしろ新生ねお”だと理解したみたいだ。


「うぜぇ君。君はストーカーでもしてんのかね?」

「んなわけねぇだろ!」

「んじゃ、あれだ。ウチ達の水源の上流に毒でも流そうとしたんだろ!」

「……残念ながら痺れ薬だけどな」

「え……マジ? 適当に言ったのに。つか、『残念ながら』じゃないっての。何があったらこんなにひねくれた人間が出来るんだよ。ったく、どいう教育受けんだ。親の顔が見たいわ」

 その時一瞬見えた、初代新生の怒りの表情。『チッ』と舌打ちをして顔を歪めていた。何か引っかかる事でも言ったかな? 


 ウチと初代新生が腹の探り合いをしていると、そこにティラノが割り込んで来た。ルカの件が相当頭に来ている様だ。

「てめぇだな? ルカに汚ねぇマネしやがったのは!」

「なんだおまえは……駒が俺に話しかけんじゃねぇよ!」

「ホント、いつもいつも喧嘩腰だねぇ。……また返り討ちにしてほしいのかな?」

「はぁ? あんなのはタルボ達がしくじっただけだ」

「いやいや、君はキティに一瞬にして無力化されたじゃんか。全部恐竜人ライズのせいにするとか責任転嫁もはなはだしいぞ」

 

 初代新生はウチのツッコミを無視し、木陰にいる仲間に手招きをする。そこからは四人の恐竜人ライズが出てきた。そのうち二人には見覚えがある、この間もいたアクロとスピノだ。そして初めて見る顔が二人。ってあれ……タルボがいない?

「タルボちゃんはどうしたのよ?」

「お前には関係ねぇだろ、八白亜紀」

 小柄で可愛らしい、それでいてルカを動けなくするパワーの恐竜人ライズ。まさか、あのに何かしたんじゃ……?

「仕方がない、やるよ。ぶっ倒してタルボちゃんを探そう」

「了解したぜ!」

「ガイアちゃんとベルノは危ないから下がっててね」

 とは言ったけど、この戦力差はどうしてくれようか……。


 チーム新生のアクロとスピノが前に出て来た。その真ん中にもう一人、三本のスパイクが飛び出ているごっつい盾を持った娘がいる。

 こちらはティラノと戦闘力みじんこのウチと、能力不明のガイア。うむ、いつもながらのピンチじゃないか。


「ターゲット……ロックオン。デス!」

「え……ってこらこら」

 話を聞いていないのか、無防備に進み出るガイア。もしかしてこれはやる気なのかな? 表情から読み取れないってのは結構不便ね。仕方ない、不安はあるけど初動は好きなようにやってもらおう。フォロー出来るかわからんけど。

「ガイアちゃん、手加減はするんだよ? 大怪我させちゃダメだからね」

「がってん……承知の助。デス」

 いまいち会話の傾向が判らんが……まあ、ウチの知識らしいから仕方ない。


 ガイアが両手を広げると、それに呼応する様に背中にある菱形の羽根の様な板が、回転しながら放射状に広がった。なんかこれ、どこかで見た事あるんだけど。 

「あ~これはきっとあれだ……あのアニメで観た、脳波か何かで自在に動かせるアレ」

 八枚の板は頭上で旋回し、自身の周りを囲むように宙に浮く。それにしても綺麗だな。ジュラたまと同じく、虹色にキラキラと輝ている。

虹羽根アイリス・ウイング……ってどう? 女神さん」

〔なぜこのタイミングで命名しているのですか、あなたは。まあ、今までで一番まともですが……〕



 初代新生の指示で左右から突っ込んでくるアクロとスピノ。……なんだよ、大口叩きながら前回とまったく一緒じゃないか。

 ガイアは腕を不規則に動かし、突っ込んでくる恐竜人ライズの足元を指差した。それに反応して虹羽根アイリス・ウイングが二枚、それぞれ左右に展開し、走ってくる彼女達の足元に突き刺さった。

 走り始めていた二人は急に足をとられ転倒する。攻撃が来ると思い込んで頭上の虹羽根アイリス・ウイングに気を取られていた為、足元がおろそかになっていたからだ。

 そしてガイアは残りの羽根ウイングで両肩と頭を抑え込み、二人の恐竜人ライズ――アクロとスピノは完全に制圧されてしまっていた。


「鮮やか……ガイアちゃん強すぎない?」

 こんな簡単に無力化するなんて。もっとも、これは単に初代新生のせいなのだろう。恐竜人ライズは皆、どこか突出した能力を持っているはずだから、こんな簡単に二人を制圧出来るなんて普通はありえない。指示ミスと言うか、戦い方を全く知らない感じか。

 ……ま、ウチの戦術も漫画やゲームで得た知識だけどね。


 強いとは言っても、虹羽根アイリス・ウイングを操作している間は精神集中が必要らしく、まったく身動が出来ないみたいだ。つまり、やはりこの子は後衛向きって事だな。






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