第15話 死者の説得
教団内で会員の一人に聞いた話である。
広島支部の会員の一人に、不治の病にかかっている者がいた。
死ぬのが怖い、死ぬのが怖い、死んだらあたしどうなるの?
いつもそう言っていた。
誰の説得も聞かなかった。
誰の説話も認めなかった。
死んだことの無い人がどれだけ死は怖くないと言っても、説得力はないと抗議した。
怖い。
怖い。
こわい。どんどん恐怖は膨らんでいく。
ある夜、枕元に見知らぬ男の人が立った。もちろん、生きている人間ではない。
「死は怖くないよ」
そう説得された。
次の夜は、年寄の女の人が立った。
「死ぬのは怖くないよ」
そう説得された。
次の夜は、子供だった。
「死ぬのはこわくないよ」
「だから死ぬのは怖くないの」
今はそう笑いながら、彼女は近々訪れる自分の死の時を待っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます