第15話 死者の説得


 教団内で会員の一人に聞いた話である。


 広島支部の会員の一人に、不治の病にかかっている者がいた。

 死ぬのが怖い、死ぬのが怖い、死んだらあたしどうなるの?

 いつもそう言っていた。

 誰の説得も聞かなかった。

 誰の説話も認めなかった。

 死んだことの無い人がどれだけ死は怖くないと言っても、説得力はないと抗議した。


 怖い。


 怖い。


 こわい。どんどん恐怖は膨らんでいく。


 ある夜、枕元に見知らぬ男の人が立った。もちろん、生きている人間ではない。


「死は怖くないよ」

 そう説得された。


 次の夜は、年寄の女の人が立った。

「死ぬのは怖くないよ」

 そう説得された。


 次の夜は、子供だった。

「死ぬのはこわくないよ」



「だから死ぬのは怖くないの」

 今はそう笑いながら、彼女は近々訪れる自分の死の時を待っている。

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