クリアランス
《呼吸器官の能力が低下しています。ミストを吸飲して除菌を行なってください》
未知のウイルスが世界を
「本ばかり読んでいると
「今朝のニュースを見たか。我々の同士の一人の
「定例会で
「気を落とすなよ。まだ感染が決まったわけではないんだ。きっと本ばかり読んでいるから
「読書なんて方法に頼らなくても情報は手に入る。ライブラリにジャックインすればいいだけだ。高い学費を支払っているんだから利用しなければ損というものだ」
「俺はお前の健康を心配してやっているんだぜ。
「お前はいつだって俺達のことを馬鹿にしているんだろう。お前は何に情熱を
「堕落してんだ。お前は、堕落してるんだよ」
長い沈黙の後に
「腹を立てているのなら横っ面でも殴ってみたらいいだろう。君は熱っぽく語ってみせるくせに、僕に触れようともしないんだね。自分も感染するかもしれないと危ぶんでいるんだ。頬を叩くことすらできない者と抱き合って痛みを分かち合うなんでできると思うかい。熱くもなければ冷たくもない現実が
《呼吸器の機能が著しく低下しています。速やかに医療機関で処置を受けてください》
人気のない講堂に高性能マスクの警告音が鳴り響いている。
(了)
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