壺中の天
―不思議な人だったな―
祖父にはずいぶんと良くしてもらった。
私の知る祖父は
祖父が私に語り聞かせた
「コチューノテンという話がある」
―あれは小学六年生のころか―
関東では珍しい大雪が降った冬の日のことだった。祖父は黙ってラジオに耳を傾けながら、すっかり弱くなった歯で
「むかし、中国のジョナンの地に、ヒチョーボウという役人がおってな……」
祖父の語る昔話は日本のものが多かったので、「ヒチョーボウ」という
「コチューノテン」が「
翌朝になり、
―何を思ってあの話をしたのだろう―
窓の外でしんしんと雪の降り積もる冬の日。祖父の横顔にはすでに
「
僧侶の
思い違いかと辺りを見回すと
私は祖母が静かに涙を流すのを見逃さなかった。彼女の
―ああ、そこが
今や、
祖父の
(了)
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