パン屋の娘『アンヌ』は、自身の前世が『雛城恵莉未』であったことを思い出し、この世界においてタブーの存在である『転生者』だという事実を認識する。
しかし「自分から言いふらさない限りはバレないし」と、望まぬお見合いを拒否して都会へと飛び出し、前世の知識&異世界の魔法を組み合わせて開発した『電子レンジ魔法』で活躍する――。
短編でありながら起承転結がハッキリしており、クッキング魔法というアイデアも面白かったです。(※電子レンジに生き物を入れるのは、絶対に真似しないでね!)
更に魔法のファンタジーでありながら、魔法の構成式をプログラミングに見立てたり、ホログラムや3Dプリンターやヘッドセットなどなど、現代技術やSFチックな側面があったのも個性的でした。
そして物語終盤ではピンチが訪れてからの意外なオチがつき、全体としてシッカリ練られた設定と構成だと思いました。短編でありながら満足感を味わえるボリュームで、まるで小さいけど美味しくて腹持ちのするパンのようです。
ただ『彼』の登場がちょっとだけ唐突感があったので、ネタバラシの前にもう少し伏線というか『彼の正体』に繋がる要素を小出しにしていれば、更に違和感なく物語がまとまったと思います。
とはいえ、オリジナルのアイデアが光る良作でした。面白かったです。