Cock-Robin's giving back 2

 急に訪ねたロビンの顔を見るなり、シンシアはぎょっとした表情を見せた。


「どうしたんだい、ロビン。すごい顔色して」


 そう言いながらも、というか、そんな顔色だったからなのだろう、家の中に招かれて、椅子に座れば、シンシアはすぐに自身の分とロビンの分の紅茶のカップを持ってきてから席についた。


「で、ロビン、一体どうしたんだい? その目に余る問題でも?」


 その本気で心配する様子に、少し躊躇ためらいながらロビンは口を開いた。


「……シンシア、僕、に何をさせたの?」

「何をそんな、突然に」


 目に見えてシンシアが動揺した。

 今のロビンに嘘が通用しないことは、シンシア自身、すでに知っている。最初に相談したのがシンシアだからだ。

 目をらさずにシンシアを見つめていれば、あきらめたようにシンシアはため息をついた。


「……あんたに隠したところで、意味はないね。ただ、一つ言うなら、あんたが知ったところで、はただ、気にしなくていいって言いはなつよ」

「なんで」

「本当にそう言ってたからだよ。もし後々あんたが気付いたら、フォローよろしくとも言われてるしね」


 で、とシンシアは紅茶を一口飲んで唇を湿らせてから、ロビンを値踏みするような目で見た。


「まずは」

「何をどうして気付いたか、聞かせろ?」


 読み取ったものをそのまま疑問形で口にすると、シンシアは眉間にシワを寄せた。

 ――こいつ、嫌な奴って言われてるんじゃないか。

 そういう中身が見えたので、肩をすくめてロビンは先回りして言った。


「話を急いでる時ぐらいしかしないよ」

「はあ、そうかい」


 あきらめのため息をついて、シンシアはもう一口紅茶をすすった。


「……日本語、僕が独学で勉強してるのは、シンシアも知ってるだろ」

「ああ、シーラがいい本ないか、探してたしね」

「僕、の神様に日本語の伝言を頼まれたんだ、あの時。それで、次の日、シンシアが父さんDadを叱ってる時に、にそれを伝えた」


 あの時、フリーズした恩人の様子を思い出して胸が苦しくなる。

 今あれを見れば、その感情の構成が驚き七割と、残りの三割は郷愁nostalgyにも似た、さみしさであったとわかる。


「そしたら、は少しの間、固まってたんだ。あの時の僕には少し不思議程度にしか見えなかったし、は僕の言葉が何を指してるかわからなかったって言ってたけど、ずっと違和感があったんだ。今ならわかる。あれ、きっと想定外のことで頭の中が真っ白になってて、それでも僕に取り乱した姿を見せないように誤魔化ごまかしたんだ」

「で、その伝言の中身がわかったと?」

「全部がわかったわけじゃない。でも、十分に意味が取れる断片だけ」


それでもHowever」という逆接。

 つまり、前提の文意にそぐわない文意を、その後ろに続けるための接続詞。


「あの伝言で、それでも/sɔːledemɔː/っていう逆接の言葉の後に続いてた言葉の意味は、ずっとforever一緒together


 シンシアは口をはさむことなく、ロビンの言葉の続きを待っている。

 ぎゅっとロビンは無意識に組んでいた指先に力を入れた。

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