Arthur O'Bower 14
ドアが音を立てて閉まり、足音が遠ざかっていく。
振っていた右手を降ろす。
一度、胸いっぱいに大きく大きく息を吸って、吐き出した。
棚上げしたロビンの言葉を引き下ろして、吟味して、片手でチキンスープの入ったマグを持ったまま、片手で顔を
――お前は、
――
エインセルが指定した代償の一つが、脳内でリフレインする。
「……ああ、ああ、なるほど、そうか、そっか、そういうことだったのか」
ああ。ああ、そういうことか。あの言葉は、あの笑みは。
そうか、そうか。してやられた。
「可能性を、無に……は、はははは、はははははは」
この笑いは何が
わかっていた。本来、届きすらしないと、それはわかっていた。
その道に入ることはできないことは、当然だった。
だって、
それでも、僕らのような一部の人間はそうした道を感知することができる。ロビンが向こう側から干渉されてそうなったように。
その道は一つではない。僕の論理においては
つまりは、この世界における
今ここで感じているものはイヤに右目に詳細に
だって、結局、事の前だって僕はあのヒトを見ることはできなかったのだから。
「ああ……ああ、僕は結局、
そもそもとして、届かなかっただろうことは理屈として理解している。
それだけで、満足できるかどうかは別として。
――それでも、ずっといっしょだからね。
そう言われても、今までは道の気配を感じる事はあっても、その道はあの瞬間、僕に対して閉ざされたに等しいのだ。
自分が得るはずだったものを奪った僕に、あのひととその周囲の世界を
それでも、これは僕自身の手持ちのカードで出来得る最善手だった。
それだけは明確に言える。
やれることをやりきったから、
もう一度、大きく息を吸って、吐き出した。
きっと、もう、いつものあの言葉を
◆
そうして、意気消沈したものの、後日、シンシアは宣言通りにロビンがお見送りできるように僕を引き留め続け、そしてそのお見送りのその場で必死に涙を
……のだが、中学生になった(想定外に早すぎる)ロビンがまさかの押しかけ弟子(一時的なつもりでなかった)になりに来た(と同時に、左目の事がバレて、ロビンにしこたま怒られてへそを曲げられた)のは、あんまり思い出したくないけど、また別の話なのである。
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