V.connect
記録の人
Prolog
バーチャルライバー。
これまでライブ配信やラジオ配信がメインだったインターネット配信で徐々に広まり、今では過半数を占めているであろう配信スタイルだ。自分自身の姿は出さず、自分の分身となる「外側」を用意して行う。自分の顔は出したくないが画面に動きが欲しいという配信者が多いネット社会に大きな変化をもたらした。
バーチャルライバーが増えていくと、リスナーからは質の向上が求められる。例えば、配信の内容。例えば、歌の上手さ。例えば、話の面白さ。
注目を集めるにはどうするか。答えは簡単だった。
外側――モデルのクオリティをあげればいい。
お金を出して有名なイラストレーターやモデラーに依頼をするだけで注目度は段違いだ。関わった人が自身の仕事としてSNSで紹介することもあり、宣伝効果も高い。要は【金を積めば有名になれる】時代になったのだ。
有名になりたい配信者は腐るほどいる。昔配信をしていたが芽が出なかった者も戻ってきた。声優志望の足掛かりに利用する者も現れた。配信中の文字は日に日に増えていく一方だ。
当然、これまで配信してきたバーチャルライバーは危機感を抱いた。頑張って積み上げてきたものが、金によって簡単に足蹴にされる。バーチャルの世界といえど、所詮はリアルの延長線。生き抜くために必要なものも、結局同じ。
人々は簡単にモデルの生産を行い、反応が薄ければ新しいモデルへと切り替えていくようになった。転生なんて綺麗な言い方をしているけれど、要は【使い捨て】ているだけである。金を払ったからどう使ってもいい。リアルでもよく聞く考え方だ。生み出した側の想いや時間は、クリック一つ、ツイート一つで簡単に葬られた。
本当にそれでいいのか。
配信をする目的はなにか。
転生は祝福される事なのか。
あの時の喜びは、簡単に捨てていいのか。
そんな想いが集まったとき、一つの実験が始まった。
それは希望なのか、はたまた絶望なのか。辿り着く先に何が待ち受けているかは誰にもわからない。成功するかもわからない。「楽しいことがしたい」と【彼】が言ったから。始める理由はただそれだけだ。
リアルとバーチャルの融合が進む現代に、人々の間で広まっていく都市伝説。
バーチャルライバーにとって、禁忌の実験だと言う者もいた。それでも彼らは進み続けた。
繰り返される誕生と死亡を知るために。
自分が成し遂げることができなかった夢のために。
新しい自分に出会うために。
――あなたは生き残れますか
バーチャルコネクト、通称V.connect。
これは、その記録である。
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