第6話 どうせ追放されるなら
「おやおやおやぁ? 首を切るどころか爪が折れてしまったようだのぉ? 確かに勝負は一瞬だったが」
「こ、これはどう言うことだガルドラ!?」
「ち、違う……これは、本当は……」
慌てて言い訳を模索するガルドラ。しかし弱った獲物を追い詰めるようにセッカは瞳を光らせて逃げ道を塞ぐ。
「本当は? なんだろうかの、本当は誰かほかの人間に倒してもらいました、かの?」
ちらりと俺を目を見るセッカ。 その言葉に族長とガルドラの目が一斉に俺へと集まる。
「お、おい約束しただろ‼︎? そのことは言うなって……あっ」
俺の馬鹿……自分で話してどうする。
知らぬ存ぜぬを通せば良かったのに、今の自分の言葉で完全に自分の首を絞める。
「テメエ‼︎ 計りやがったな、なりそこないが‼︎ 追放だ‼︎ いや、ここでぶっ殺してやる‼︎」
人狼の姿のまま、牙をむき出しにして迫るガルドラ。
正直自業自得にも思えるが、それでもそんな言い訳が通じる相手ではない。
それに、族長の前でこれだけガルドラに恥を書かせてしまったのだ。
当然俺はこの後追放だろう。
牙とガルドラの残った爪が振り下ろされるまでの間の刹那。
俺は少しだけ思案をすることにした。
まず、このまま気分良く殴らせてもきっと追放は変わらない。
恨みを込めてセッカを見るが、気分良さそうにコロコロと笑うその表情は約束を破った反省どころか満足げだ……この野郎。
こうなると痛い思いをして追放されるか。
抵抗をした後に追放されるか二つに一つ。
「……よし、潰そう」
ならば当然、最後くらいは自分の満足できる行動を取ろうと、俺は銅の剣に手をかけ。
今までのお礼も込めて、俺は銅の剣を抜き、迫る左手の爪全てを丁寧に切り落とす。
「へ? なっ……ぶっふおおぉ」
あの程度の硬さのドラゴンの首すら落とせない爪など小枝同然であり、呆然とするガルドラの顎を鞘で思いっきりぶっ叩く。
鈍い音が響き、牙が音を立ててボロボロと崩れた。
うん……もう失うものがないって思うと意外とスッキリするものだ。
武器を使って卑怯かもしれないし、誇りもないかもしれないが、もうこの村にいられなくなるならそんなものに縛られる必要もない。
「な、なんで……なんで俺が、なりそこないなんぞに」
涙目で床を転がりながらそう零すガルドラ。
「さぁ、武器を使ってるからじゃないか? それよりも覚悟はいい?」
「ひっ‼︎? た、助けて……助けて‼︎?」
「ダメだね」
そんなガルドラに対して俺は率直な感想を述べ、戦いという名の蹂躙をガルドラが意識を手放すまで続けたのち、泣き叫びながら止めに入った族長の命令により、晴れて村を追放されることになる。
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