熱い夏への贈り物

織風 羊

第1話 三日月の明かり



本当の勇気とは

普段から出せる強さでは無く

最後の最後に目を瞑ってでも

駆け抜ける強さだと信じていたい

と自信の無い自分が言う


本当の強さとは

どんなに傷付いても自分を守る事では無く

傷付いた自分を捨ててでも誰かを守れる強さだと

武道を習っていた自分に言い聞かせる


本当に泣きたい時とは

我慢して我慢して

それでも泣きたい時に涙を流す強い意志では無く

ほんの少しでも悲しい時は泣けばいいと

弱虫の自分が言う


少し酔った自分は

ベランダに出て煙草を燻らしながら

沢山の過去を思い出す


初夏の前の季節

それでいいと

それも自分自身なのだと抱き締めるように呟くと

家から少し離れた小川で

河鹿の声が聞こえる

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