【GM用】シナリオ
【オープニングフェイズ】
・シーン1:隣の席のマドンナ PC①
あなたはA大学に通う学生である。今日は就職説明のガイダンスがありC棟にある大講義室に来ていた。オーヴァードであるあなたにとっても、世を偽る仮の姿を決める就職は一大イベントだった。
始業2分前。ほとんどの学生が席に着く中、バタバタと講義室に駆け込んでくる女性がいた。木村藍だ。彼女は周りを見渡し、普段彼女が属している女子グループが既にひとまとまりになって席に収まっているのを確認した後、あなたの隣に着席した。
藍:「こんにちは。ここ座ってもいいかしら。あっちの席がいっぱいで…」
藍:「ありがとうございます。」
あなたにとっては憂鬱な時間に訪れた、思わぬラッキーだろう。
藍:「それと、ひとつお願いがあるんですけれど、前回のガイダンス資料を見せていただけませんか。今日、忘れてしまったみたいで。」
藍:「ありがとうございます。お優しんですね。」
これからの90分間にドキドキしながら、始業の鐘がなったところでシーンをカットする。
・シーン2:お調子者な友人 PC②
あなたは絶えず聞こえる話し声にうんざりしていた。その声はあなたに話しかけるともなく話しかけ続け、あなたをイライラさせている。
旭:「……だからさPC②、俺は言ってやったんだって、『前原、お前じゃ無理だってな』。そしたら案の定、前原のやつ振られて。流石に十一連敗はかわいそうになったけど、あいつも高望みしすぎなんだよ。お前も気をつけろよ……」
あなたが一条旭の話を聞き流していると、突然ピタリと旭の言葉が止まる。
旭:「おい、見ろよ。藍ちゃんだ。なんで1人なんだろう。珍しいな。」
旭:「言っておくけど、お前は藍ちゃんに手を出すなよ。俺が狙ってるんだから。」
藍は講義室の中を見回した後、こちらにやってくる。旭が慌ててあなたに席を詰めるよう促してくるが、そうこうしているうちにあなたたちの通路を挟んで反対側の席に座ってしまう(PC①の隣)。
旭:「ちぇ、誰だよあいつ、羨ましいなぁ。」
旭:「お前がすぐに席を詰めないからだぞ~」
旭の悪態を聞きながら、あなたは藍の隣に座るPC①がオーヴァードだと気づくのだった。シーンをカットする。
・シーン3:狙われた大学生 PC③
シーン2から1週間前。あなたに霧谷雄吾からメッセージが入っていた。
霧谷:「お疲れ様です。PC③さん。今回はあなたに大学に潜入してもらいたいと思います。早速ですがこのメールに潜入に必要なIDと身分証を添付しておきました。」
霧谷:「今回標的になっているのはA大学の学生です。FHエージェントテラー・ルーラーが学内に潜入したとの情報が入りました。あなたには学生を保護する大学職員として、FHエージェントの除去に努めてもらいたいと思います。」
PC③が霧谷からの指示でA大学に向かったところでシーンをカットする。
【ミドルフェイズ】
・シーン4:湯浅先生のキャリアマネジメント PC③
PC①、PC②も強制登場。
シーンはシーン2の直後。始業の鐘が鳴り、大学職員が講師を紹介する。あなたは右腕にA大学と書かれた腕章を通して、舞台袖からその様子を見ていた。
職員:「今日のガイダンスでは実際に会社を経営されている社長さんをお招きして、社会人の心得をお伺いします。それではお願いします。香道製薬代表取締役、湯浅恒成様です。」
湯浅:「皆さん、こんにちは。湯浅です。皆さんは……」
湯浅の話が始まると、PC達は途端に眠気が襲ってくることに気づく。
RC:6で判定を行う。
成功した場合、湯浅の講話はワーディングの成分を含んでいることに気づく。藍や旭もぐったりとしており意識がない。
湯浅:「おや、早々にバレてしまいましたか。」
湯浅:「さすが、UGNの皆さん優秀、優秀。」
湯浅:「それでは、私はこのあたりで失礼しますかな。まだまだ他でも仕事がしたいので、ここで戦うわけにはいかないのですよ。」
あなたたちが湯浅に攻撃を仕掛けようとすると湯浅は逃げ出し、退場する。
あなたたちが追跡を始めたところでシーンをカットする。
【情報収集フェイズ】
・a-1湯浅恒成について
情報裏社会:7
裏の情報にアクセスすると、湯浅のコードネームがテラー・ルーラーだということが分かる。彼は大学や地域の講演会に出席し、その場でレネゲイド成分を含んだ講話を行うことで手駒を増やしている。被害者が多く、悪質なジャームである。
・a-2湯浅恒成の居場所
情報噂話:10
湯浅は大学地下の駐車場にいる。騒ぎに乗じて強化された警備をやり過ごし、ほとぼりが冷めてから逃走するのが彼のいつものやり方らしい。→イベントシーンへ進むことができる。
・b-1木村藍について
情報噂話:8
A大学音楽専攻の学生で、新体操部の3年生。容姿端麗で、温厚な性格から男女ともに人気があり、隠れたファンも多い。一条旭が想いを寄せていることを複数の学生が証言した。現在は就職ガイダンスで起こったハプニングによって昏睡中。
・c-1一条旭について
情報噂話:8
A大学地質学選考の学生で、飲みサーの2年生。多弁で軽薄、移り気だが、根はまじめな小市民。この春キャンパスで見かけた木村藍に一目惚れし、彼女の好みを調べている。現在は就職ガイダンスで起こったハプニングによって昏睡中。
【イベントシーン】
・シーン6:テラー・ルーラー PC③
発生条件はa-2の情報の開示である。
PC①、PC②も強制登場。場所は大学地下駐車場。
湯浅:「あなたたち、よくここが分かりましたね。」
湯浅:「慌てて去るより待った方が得策だと思いましたが、してやられましたね。仕方ありません。UGNの皆さんを全員黙らせて、颯爽とここから去ることにしますか。」
ワーディングが展開され湯浅との戦闘になる。
湯浅との距離は10m。勝利条件は湯浅の戦闘不能。
戦闘開始時
湯浅:「いきますよ!」
攻撃時
湯浅:「リラックスして、あなたに害はありませんよ。弛緩の香り!」
湯浅:「眠るように、ゆっくりと落ちていくのです。」
被弾時
湯浅:「なんと!」
敗北時
湯浅:「この私が、馬鹿なー!」
湯浅を倒すと霧谷からPC③にメッセージが入る。
霧谷:「お疲れさまでした。PC③さん。帰還していただく前に、万一、学生たちの中でオーヴァード能力に覚醒した人がいないか確認して下さい。」
PC③が霧谷の指令を了解し、PC①、PC②に協力を仰いだところでシーンをカットする。
【情報収集フェイズ2】
以降の情報はこのフェイズから調べることが可能となる。前の情報収集フェイズで取り逃した情報も調べることができる。
・b-2木村藍の行方
PC①、PC②のみ開示可能
情報噂話:10
木村藍が大講義室にいない。どこに行ったのかわからない。
PC①の場合
旭:「なんだよお前。お前も藍ちゃんを探してるのか?」
旭:「こっちにはいなかったぜ。さっさと失せろよ。」
旭はPC①が藍を探していると分かると露骨に態度を悪化させる。
PC②の場合
旭:「おまえ今までどこ行ってたんだよ。」
旭:「藍ちゃん知らない?俺が目覚めたときにはもういなくってさ。なぁ、探すの手伝ってくれよ。」
旭は狼狽した様子であなたを頼ってくる。
・b-3藍を探す
RC:10
藍を探すとA大学のD棟屋上からワーディングの反応が上がる。→D棟に向かうとトリガーシーンになる。
・c-2一条旭の行方(開けずに先に進むことを推奨する)
情報噂話:15
旭は湯浅の講話で倒れた後、一時的に立ち歩いていたという話がある。噂の真偽を本人に確認すると「そんなことはしてないぜ。ずっとぐっすり眠ってたよ。」と返される。
・d-1学生たちの体調
知識レネゲイド:9
A大学C棟の大講義室にいた学生の中にオーヴァード化した学生はいなかった。これは早期に湯浅の講話を止めたため、学生がレネゲイドにさらされていた時間が短時間で済んだからであった。
【トリガーシーン】
・シーン8:愛しき君へ PC②
PC①、PC③も強制登場。場所はD棟へ向かう渡り廊下。
あなたたちの後ろから騒がしい足音を立てながら旭が追い付いてくる。屋上への階段を駆け上がりながら、彼はまくしたてる。
旭:「おーい。PC②。置いていくなよ。」
旭:「どうしたんだよ。そんなに急いで。」
旭:「ゲッ、おまえPC①。なんで一緒に……」
旭:「さてはお前ら、藍ちゃんを探しに行く気だな。俺も連れていけ。」
旭:「抜け駆けは許さないぞ!」
そこまで言うと、旭は貧血を起こしたようにあおむけに倒れてしまう。どうやら、ワーディングの効果圏内に入ってしまったようだ。
もうひとつ上階へ向かえば、屋上だ。旭に関しては、ここに置いていって、藍を救助した帰りに拾っていくのがいいだろう。既にワーディングが展開してしまっている彼女は危険だ。
PC達が藍の救助を優先することに同意したところで、シーンをカットする。
【クライマックスフェイズ】
・シーン9:ダブルクロス PC①
空を背景にした校舎の屋上には、木村藍の姿があった。彼女は怯えた様子でこちらを見ている。
藍:「いや、来ないで!」
藍:「あなたたち何なの。この力は、なに?」
PCたちが藍を落ち着かせようとすると、彼女は突然さらに怯えた表情になり叫びだす。
藍:「イヤァァァーーーーーーー!」
レネゲイドの波動を含んだ叫びに、PCたちは衝動判定を行う。
衝動判定
意思:9
衝動判定に失敗した場合、バッドステータースの暴走を得る。その後全PCは浸食率を2D10上昇させる。
戦闘配置は藍から5m離れたところにPCが1固まりのエンゲージを取っているものとする。
戦闘開始時、不意打ちで旭がPCに対して単体攻撃を行う。不意打ち攻撃は1ラウンド目の行動として扱い、1ラウンド目は旭以外の行動を認めない形で不意打ちを表現する。
一条旭のロイスを持つPCはそのロイスをタイタスに変える。
旭:「隙ありだぜ。UGNさんよ!」
旭:「『なんでお前が動けてるの?』って顔だな。簡単な話だよ、俺は元々オーヴァードなんだよ。テラー・ルーラーの話で気絶していたのも、藍ちゃんのワーディングで倒れたのも全て演技なんだよ。」
旭:「そもそもテラー・ルーラーは俺の部下だ。藍ちゃんをオーヴァードにしてFHで一緒になるためのただの手駒だ。本当ならあいつにUGNは始末させる手筈だったが、あんまり役に立たなかったな。」
旭の配置はPC達のエンゲージを挟んで藍の反対側とする。距離はPCたちから5m。
勝利条件は、エネミーの戦闘不能。エネミーとは一条旭を指し、木村藍を含まない。
木村藍は一条旭に対して支援を行う。
旭はフレイムタンで藍を脅し(演出)、自分を支援させている。藍はパニックになって、レネゲイド能力をただ暴走させて、旭を支援してしまっている。ショウタイムの効果によってPCたちは藍に注意が向きがちである。戦闘に集中できず、妨害を受けてしまっている。
旭:「オラオラ、あの薬をもう一度打たれたくなかったら、俺に力を寄越せ!」
旭:「お前を手に入れるためだけに、FHとも手を組んだんだ。あとは邪魔なUGNを葬るだけなんだよ!」
藍:「やめて、来ないで。言う通りにしますから。」
支援時
藍:「いや、なんなのこの力。私こんなの欲しくない。」
旭:「へへへ、藍ちゃんの応援だから頑張らないとな。」
藍:「助けて、PC①君……」
攻撃時
旭:「目障りなんだよ、UGNの犬ども!」
被弾時
旭:「くっ、なんで邪魔するんだ!俺は藍ちゃんと一緒になれて今最高の気分なのに!」
敗北時
旭:「嫌だ、俺はようやく好きな人ができて、ようやく同じオーヴァードになれて、失いたくない……」
木村藍は浸食率計算を行う。浸食率基本値を32%とし、バックトラック時100%を超えていた場合彼女はジャーム化する。
バックトラックを行いシーンをカットする。
【エンディングフェイズ】
・シーン10:今後に向けて PC③
霧谷雄吾に報告を行うシーン。
霧谷雄吾への報告書をあなたがまとめるシーン。今回の件に関しては、霧谷からは事前にメッセージが届いている。
霧谷:「今回もお疲れさまでした。学生の中にジャームが混ざっていたことは驚きでしたが、速やかに対処してくださり助かりました。」
霧谷:「覚醒してしまった女学生についてはUGNの病院に収容しました。友人がついていてくれるということなので安心でしょう。」
報告書をあなたがまとめたところでシーンをカットする。
・シーン11:非日常の友人 PC②
あなたがずっと日常の友人だと思っていた旭は、ずっと非日常側の人間だった。あなたを含め、全てを騙してきた彼だが、あなたの友人だったことには変わりがない。
ジャームだった旭がこの世に残したものは何もないが、彼が存在した記憶はあなたの胸の中に残っている。一条旭の記憶に区切りをつけ、前に進んでもよいし、引きずっていってもよい。
決意が固まったところでシーンをカットする。
・シーン12:彼女の支えに PC①
木村藍はUGNの病院に入院している。幸い怪我はなく、一通りの検査の後、退院できる見込みだ。その後どうなるかはまだ決まっていない。あなたは藍のお見舞いにUGN病院を訪れた。
藍:「あなたは……PC①君。」
藍:「私覚えてるよ、PC①君が凄い力を使って、私を助けてくれたこと。」
藍:「でもね、私怖い。私が私でなくなってしまうような気がして。」
藍:「あなたなら、私の気持ちわかってくれる?」
藍の気持ちにPC①が寄り添い、不安を受け止めたところでシーンをカットする。
Fin...
経験点配布
・シナリオをクリアした…10点
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