第3話


 覚えてるか?


 あいつが初めて家に来たとき、お土産だってポテチくれたよな。仲よくしような、って言ってさ。笑える。

 いつのまにか毎日ウチにいるようになって、母さんを殴り始めた。泣いてる母さんをかばったらオレも殴られた。それからはいつも殴られるようになった。

 いつだっけ、酒が無いって怒りだしたあいつに、酒が無いのはオレが買ってこなかったからだって、母さんが言ったの。そんなこと知らないのに、母さんはオレのせいにした。オレは忘れない。

 お前もオレなんかほっとけば良かったのに。もう動けなくなってたんだから。あんな奴に投げるなんて、ビー玉がもったいないだろ。お前が殴られて、何かにぶつかる音がした。なんとか目を開けたら、倒れたお前は動いてなかった。


 エンジン音が大きくなった気がする。甲高いブレーキが響き、衝撃と大きな音。狭い空間で体が跳ね、硬い物が頭に当たった。ぼんやりした頭がまた、暗闇に飲み込まれた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る