〜STAGE6.もう1人の飛田優志!? 迷い込んだ並行世界(パラレルワールド)から脱出せよ!〜

1.ファンキー和尚、白院


※主人公、『優志まさし』および『優志ミオン』の表記を、『飛田』および『飛田ミオン』に変更致します。ご了承下さい。



 勇者ミオン——飛田とびた優志まさしは、救急搬送されていた。

 僧侶であり医者でもある白院びゃくいんの、救急ヘリコプターで——。



 チャイ大陸にて、パーティーメンバーの足を引っ張ってばかりだった飛田ミオンは、ラデクからパーティー追放を宣告される。

 もっと強く逞しくなってラデクを見返そうと思った矢先、飲めば最強になれるという“仙丹”があるとの情報を得る。

 ついに“仙丹”を見つけ出し、飲んだ結果、念願の強靭な肉体と無敵の戦闘力を手に入れることができた。


 しかし強くなれたのをいいことに、堕落した生活を送っていた飛田ミオンは、美女リンリンに作ってもらったカロリーたっぷりのご馳走を、たらふく食べ続けた。

 挙げ句の果てに、“仙丹”の効力はあっけなく消失。

 残ったのは、贅肉まみれの身体と己の弱き心だった。


 その後、ラデク、サラーと再会、オロチを撃退したのち和解。

 飛田ミオンはパーティー復帰を果たしたが、今度は突然の倦怠感や吐き気を中心とする体調不良に襲われる。

 そこで、何やら場違いなほどに陽気な僧侶——白院びゃくいんと出会い、オロチに襲われたメイメイと共に、白院の自宅兼診療所へ救急ヘリコプターで搬送されているというわけだ。



「ミオン様、大丈夫?」

「女の子の方もー、心配ねー」

「大丈夫……です。私は大したことありません……。それよりメイメイさんを先に診せてあげてください……」


 同乗しているラデクとサラーは、飛田ミオンとメイメイのことをとても心配していた。

 飛田ミオンの症状は、急を要するほどではない。

 しかし、オロチにずっと咥えられていたメイメイは、いまだに気を失っている。


「オフコース! レディーファーストだぜい! そのは、メイメイっていうのかーい? じゃあ着いたら、早速診察するぜぃ!」


 白院のテンションは、一日中こんな感じなのだろうか。体調不良の飛田ミオンには少ししんどかった。

 

 そうこうしているうちに、ヘリコプターは、“ファンファン”の広場に着陸。


「マイハウスイズ! こっちこっちー!」


 小走りの白院に何とかついて行くと、木々が生い茂る庭園が見えてきた。

 石造りの塀に囲まれた建物。

 門扉をくぐればそこは、日本式の寺院のような場所だった。

 鈍色の屋根瓦は、長らく別世界にいた飛田ミオンに、懐かしさを感じさせる。

 右手に広がる枯山水を通り、2階建ての母屋の玄関へと案内された。


「レディーファーストだぜ! カモン、メイメイ!」

「あー、私が連れてけばいいのねー」


 サラーはメイメイを背負ったまま、白院の後をついて行った。

 飛田ミオンとラデクは、板張りの長い廊下の途中にある、畳の広間で待つように言われた。

 

「……静かですね。ここにいるだけで、心癒されます……」

白院あの爺ちゃんのテンションとのギャップがすごいと思えるぐらい、静かだね……」


 掛け時計の振り子がカチカチ。

 庭から響く鳥の声。

 庭の方を見れば、音もなく射し込む陽射し。

 ほんのりと香る、畳の匂い。

 そして時折壁越しに聞こえてくる、白院の「ワァーオ!」「オーイエーイ!」などという声。


 10分ほどのち、襖が開く。

 すっかり顔色が良くなったメイメイが、広間に入ってきた。

 すぐに、サラーも戻ってきた。


「メイメイさん……良かったです! もう大丈夫ですか……?」

「あらァ、ミオン様も来てたのねェ。あなたがオロチから助けてくれたの? 素敵。ありがとねェ」

「いえ、私ではなく……そこのラデクくんと、サラーさんが助けたんですよ。それに……こんな情けない姿になってしまい、恥ずかしいです」


 サラーはニッコリと笑いながら飛田ミオンを指差した。


「でもー、オロチの口から落とされたメイメイちゃんを受け止めたのは、ミオン様よおー」

「うふ、やっぱり素敵ねェ」


 メイメイに擦り寄られる。

 ラデクが「あまりミオン様に寄るな!」というような視線をメイメイに飛ばした。


「でも、こんな情けない姿では……」


 飛田ミオンは、腕についた贅肉をつねる。


「まだ間に合うわァ。ダイエットと筋トレをして、見た目も素敵な男になってねェ」

「が……頑張ります!」


 話していたら、襖がガラリと勢いよく開いた。

 見れば、顎ピースを決めている白院の姿。


「カモーン! ミオン!」

「あ……私ですか」


 飛田ミオンは白院に連れられ、診察室へと案内された。

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