58.勇者ミオンの決意
「チャンピオンは……“
夜のウキョー競技場。天下一武術大会の主催者、イングズの声が響き渡る。
照明に照らされたグラウンドに出場者たちが集まり、表彰式が執り行われていた。
(己の未熟さを思い知ったと同時に、勝ち抜いたみんなの戦いぶりを見て、とても勇気をもらいました。世界は広いです……。私も、自分にしか出来ないやり方で、強くなります。そして必ず、魔王を倒して見せます……!)
まだまだ、私も強くなれる——。
優志は微笑みを湛えながら、グッと手を握りしめた。
「猫月ごま。明日、【フシミ港】に来るがいい。俺の海賊船をお前にやろう」
優勝賞品は、イングズの海賊船。
これで、優志たちのパーティーは、オトヨーク島の外——大海原の向こうにある、魔王の島へと向かうことができるのだ。
「ああ、ありがとよ。で、フシミ港とやらは、どこにあるんだ……ん? ん!?」
突如、猫月の体が青白く輝き出した。そして猫月の体は、みるみるうちに小さくなっていく。
「な、何だ!?」
「チャンピオンが……あれ! 猫になった!?」
猫月は何と、元の猫の姿に戻ってしまったのだ。
「あれ、ゴマくん!? 何で……!」
優志がびっくりする間もなく、すぐ近くにいた
「うわ! うわわ!? オレに何が起きてる……!?」
光り輝きながら、空色の体毛に包まれた猫の姿に戻ってしまった。脱げた道着が地面に落ち、その上にソアラが呆然と香箱座りしている。
「こ……これは一体どういうことだ!?」
イングズが腰を抜かし、その場に尻餅をついた。
♢
「あああれ、スピカさん!?」
「あらー、猫さんになっちゃったー。魔法でもかかったのかしらー」
ラデクたちがいる観客席では、
「うわ、最悪やん! 多分アレや……ミランダちゃんの魔力が切れたせいやわ。ワープゲートが使えへん言うてた時から、嫌な予感してたんや……」
白い猫の姿に戻ったスピカは、着ていた白いワンピースの上で、尻尾を下ろしたままアワアワとしている。
サラーは呑気に「おしゃべりする猫さんー、かわいいわねー」などと言いながら、スピカの頭を撫でていた。
♢
一時中断した表彰式——。
優志は、ゴマたちが元々は猫だったことをどうにかイングズに説明せねばと、頭を抱えていた。
が、そんなことよりももっと、大変な事態が起き始めていたのである——。
カタカタ、と地面が揺れ始める。
「……地震?」
「うわ! でかいぞ!!」
突然、グラリと大地が大きく揺れた。
足を取られ、転倒する出場者たち。
双子山の方面からは、地鳴りが聞こえてくる。
「皆様、落ち着いて安全な場所へ移動してください。慌てず行動してください」
場内アナウンスが響くが、揺れはおさまる気配がない。
グラウンドにいる出場者も観客席の人々も、すっかり慌てふためいてしまっていた。
そんな中優志は、双子山の方向に、奇怪な光景が広がっているのを目にする。
「……み、皆さん! あれを見て下さい……!」
指をさすと、出場者たちの一部が双子山の方へ振り向く。
「何、あれは……」
「な、何が起きてるんだ!?」
優志はその恐るべき光景を見ながら、顔を歪めた。
「きっと、あれが……地震の原因です……!」
人々は戦いに夢中であるあまり、気づいていなかったのだ。
皮が剥かれたバナナに、さくらんぼが合体——柄の部分を
“ジャイアント・ディック”は脈打つようにムクムクと膨張しながら、それに呼応するように黄色い光を放っていた。
黄色い光が夜の双子山とウキョーの街を照らすたびに、大地が揺れる——。
〜STAGE3.天下一武術大会を制覇し、船を手に入れよ〜——Cleared!
Next Stage——
〜STAGE4.生命の巨塔を完全修復せよ〜
————
※STAGE3.、楽しんでいただけましたでしょうか。
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次章もどうぞお楽しみに!
【次章予告】
☆再び動き出した魔王軍——。
放たれる死の瘴気。次々と病に冒され、死に瀕する仲間たち、そして街の人々。
早く魔王軍幹部サーシャを倒さないと、仲間も街の人々もみんな死んでしまう——。
限られた時間の中、
1.死の祭典、開幕
2.ソアラ、瀕死
3.ヒーラー・ガール
4.攫われたアルス王子を救え
5.衝撃告白
どうぞ、お楽しみに!
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