18.改めて、魔王討伐の旅へ


「サラーちゃんだ!」


 サラーが来た途端、厨房を飛び出すリュカ。


「ちょっと、リュカのおじちゃん!」


 ラデクも慌てて後を追う。

 優志ミオンは「いなちゃん、巨乳美女ほんと好きですね……」と小声で呟いた。

 そしてラデクも相変わらず、サラーのことが好きなようである。

 そんな男性陣をよそに、サラーは猫月たちと自己紹介をし合っていた。


「あらー、新しい仲間が増えたのねー。私はサラーよー、よろしくねー」

「ボクは猫月ごまだ」

「ウチは暁月スピカやでー」

「オレは蒼天ソアラだ! よろしくな!」


 サラーは既に食事を済ませていたので、食事の片付けが終われば、そのままコハータ村を出発することとなった。

 食器類を全て厨房に運び込んでから、各々持ち物、装備などを確かめる。

 

「行ってらっしゃい。ラデク、頑張ってね。皆様もどうかご無事で」


 メルルに見送られ、優志一行の新たなる旅が始まるのであった。


 ♢


 始まりの村、コハータ村——。

 森の向こうに聳え立っていたはずの【生命の巨塔】があった場所を、じっと見る優志。


「生命の巨塔も、早く直さなければいけませんね」

「うん、急ごう!」


 ラデクは村を飛び出そうとするが、優志は制止する。


「あ、待ってください。ニジョー城下町まで、ショートカットしようと思うんです。一度行ったことがあるので、ミランダさんに頼めば行けるはずです」


 優志は例によって、ミランダを呼び出した。

 【ワープゲートの素】を投げた時と同じような虹色の光が現れ、羽の生えた小さな風の精霊ミランダが姿を現す。


「うわ! すげえ、本物の妖精じゃないか!」

「あらぁー、可愛いわねぇー」


 ラデクとサラーは、ミランダとは初対面である。2人とも興味深そうにミランダを見つめる。


『可愛いって? うふふ、ありがとー! あなたたちも可愛いわよ。で、ニジョー城下町まで繋げればいいのね。それっ』


 ミランダは慣れた手つきで杖を振るい、地面に虹色の光を放ち、ワープゲートを形作る。

 可愛いと言われて嬉しそうなサラー、不服そうなラデク。「ウチはー?」と尋ねる暁月、早く出発したくてウズウズしているリュカ、蒼天。大欠伸をする猫月。


(誰かが足りない気がします……あ、あの子たちですね)


 そう思った優志は、ミランダに尋ねる。


「悠木さんと雪白さんも、また来られるのでしょうか?」

『あー、あの子たちも声かけたんだけど、今日は登校日なんだって。明日には合流できるそうよ』

「そうですか、分かりました。道中何があるか分からないので、できれば目的の街に着いてから合流したいですね。……じゃあ皆さん、出発しましょうか」


 少しずつ、パーティーを仕切ることにも慣れてきた優志。

 ワープゲートに入った7人は、ニジョー城下町へと瞬間移動する——。


 ♢


 無事、ニジョー城下町に到着した優志たち。


「ミオン様、装備買ってこうよ」

「そうですね。王様からいただいた資金を活かさなければ。この街なら、いい装備がありそうです」


 ラデクの提案で、まずはニジョー城下町の武器屋へと向かうこととなった。

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