14.飛田が見た夢


 ある日の夜——。

 飛田とびたは夢を見た。

 目に映っていたのはやはり、“夢の世界グランアース”の光景だった。


 しかし飛田自身はというと——映画館のような場所で座席に座っており、ベルトにより固く身体が拘束されている。

 そして映画館のスクリーンには、夢の世界グランアースの風景が映っているのである——。


「何ですか、ここは。……く、動けません。誰か、ベルトを外してもらえませんか!」


 呼びかけてもその映画館には、飛田の他に誰もいない。

 誰も、助けてはくれない。

 諦めてスクリーンを見ていると、映されている夢の世界グランアースの風景が、繁華街モヤマにある宿屋の、食堂の風景へと変わったことに気づく。


(あれ? あそこにいるのは……私ではないですか。ラデクくん、サラーさんもいて、ちょうど食事が終わったところでしょうか)


 飛田とびた優志まさし=勇者ミオンと、稲村いなむら誠司せいじ=僧侶リュカ。そしてラデク、サラーがお喋りをしているところが映され続けていたが、段々と視点が移動していく。

 視点が止まるとそこには、ピシッとした青いタキシードを身につけた黒髪の男子が、映し出される。

 その男子は——。


北村きたむら修司しゅうじくん……? いや、彼は……以前にモヤマの宿屋で会ったことがあります! 名前は何でしたっけ……?)


「これから宜しく頼みます!」


 現実世界における男性アイドルグループ“ジョーカー&プリンセス”の北村修司そっくりのタキシード男子は、ハキハキとした口調でそう言うと、軽く頭を下げた。


「こちらこそ宜しくお願い致します、様」

「まさか王子アルス様が一緒に戦ってくれるなんて!」

「心強いわねー。アルス様ー、よろしくねー」


(そうです、アルスさんです!)


 勇者ミオンのパーティーに、オトヨーク島を治めるリベル王の子息、アルス王子が加入したのである。

 そこでスクリーンは暗転、場面が変わる。


(これは……!)


 赤茶けた荒野で勇者ミオン一行は、何者かと激しいバトルを繰り広げていた。

 戦っていた敵は、魔王軍三幹部——ヴィット、サクビー、サーシャ。


「3連“フォルテシモ”ッ!!」


 勇者ミオンが発した必殺技が、ヴィット、サクビー、サーシャにそれぞれ命中。敵陣に大きな隙が出来る。


「アイネさん! ユーリさん! 今です!」


 勇者ミオンが叫ぶと、新しくパーティーに加わったであろう2人の少女が、魔王軍三幹部の前に躍り出た。


(アイネ? ユーリ? ……あっ! ライブハウス“OFFBEATオフビート”で会った少女たちじゃないですか!)


 そう——2人の少女は、悠木ゆうき愛音あいね雪白ゆきしろ友莉ゆうりだったのである。

 しかし悠木の姿は——桃色のサイドテールの髪、桃色の大きなリボン、音符の形をした金ピカの装飾があしらわれた白とピンクを基調とした可愛らしいドレス姿。

 雪白の姿は——青色のロングヘアに金色のティアラ、白と水色基調のセーラー服をモチーフとしたアイドル衣装に、コバルトブルーのネクタイ。

 その姿はまさしく、アニメで見るような美少女魔法戦士。

 2人の足元では、白と黒の毛玉がぴょんぴょんと跳ね回り、白の毛玉は「みゅー!」と、黒の毛玉は「ぴのー!」と鳴いている。まるで、2人に声援を送っているかのようだ。


(これは、どういうことでしょうか……?)


「覚悟しなさいっ!」

「これで終わりよ!」

「「“フラタニティ・フラッシュ”!」」


 2人の美少女魔法戦士から放たれた純白の輝きが、魔王軍三幹部を覆い尽くす。


「「「おのれェェェェッ……!!」」」


 ヴィット、サクビー、サーシャは眩い光と共に同時に爆散し、勇者ミオン一行は魔王軍三幹部との戦いに見事、勝利した。


(あ、勝ちました……! 強いですね、あの子たち……。ん? また場面が変わります……)


 再びスクリーンは暗転。

 次に映された場所は、魔王城の、王の間らしき場所だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る