第22話

何かを思い出せるような気がする。

それが何なのかはわからない。

でも構えたときに、遠い記憶が体にめぐってくるような気がした。

体を落ち着かせる。

そうだ。

確かそういえば、俺は学生くらいまでは武道を嗜んでいたっけな。

胡散臭いような、それでいて何かすごいことをしていたような…

確か、右腕をしっかりと腰のあたりに引き絞って…


「なんだ?何かをするつもりか?」

「どうかな、わからない。でも、何かを思い出したような気がするよ」

「思いだしただけで、俺様を倒せるといいがな」


そう言葉にすると、ドーレもしっかりと剣を構える。


「行くぞ!騎士流、奥義、ヘビースラッシュ」

「カイセイ流、一の拳、トルネードスター」


俺は相手の技に対して、同じく技をだしていた。

体がどことなく覚えていた技。

かなり胡散臭いような人に教えてもらったものだ。

いいことといえば、何か俺にはその才能があったはずだ。

俺の技は、引き縛った拳を回転させて放つ、ただの拳だ。

それでも意識することはしっかりある。

集中だ。

体をめぐっている力を拳に込めるためにも、まずは足、次に腰、そして腕、拳へと力を伝えていく。

相手も先ほどよりも、裂ぱくの気合とともに、剣が振り下ろされる。


「うおおおおおおお」

「はあああああああ」


剣と拳が交錯する。

そして剣と拳がぶつかり、相手の剣が折れた。


「な!」

「あああああああ」


とまることのない拳は、そのままドーレを殴り飛ばした。

どんと体に当たった感触が手に残る。

ドーレは吹っ飛ぶ。

俺は反撃があることを警戒して、構えをとるが、攻撃がくることはない。

数秒そうしているときだった。


【もう、相手はのびてるわよ】

「のびているとは?」

【察しが悪いわね、失神している。気を失っているっていう意味よ】

「なるほど、ということは、俺は勝ったのか?」

【だから、そう言ってるでしょ】

「そ、そうか…」


だって、たぶん喧嘩とか戦ったりしたのが初めてだったんだから、仕方ないでしょ。

というか、そんなのを遠目から見ただけでわかる方がすごいだけだということをわかってほしい。

俺はドーレに近づく。

確かにのびているのか、近づいたが反応がない。

少し怖くなったので、落ちていた木の棒でツンツンと叩いて確認する。

それでも無反応…


「本当に気絶している」

【だから言ってるでしょ、用心ね】

「仕方ないだろ、現実で人を殴り倒したなんてこと初めてなんだからな」

【でも、倒せたんだから、いいじゃない。】

「まあな」

【それで?これからどうするの?】

「そうだな、何をするにしても、こいつをこのままというわけにもいかないしな」

【でも、何か縛るものがあるのですか?】

「そうだな…」


俺は、懐を探る。

こ、これは…

入っていたものを取り出す。


【いや、どれだけ買っていたのよ…】

「く…仕方ないだろう。俺はこう見えても、ストッキング大好きなんだからな」

【ふーん、童貞をこじらせて、ヘンタイスキルが芽生えるくらいだからどうなのかと思っていたけど、もう隠すのをやめたようね】

「やめてねえよ、俺に必要だっただけだ」


そうして俺はストッキング。

今回は黒を取り出した。

それで腕と足を結んでいく。

武器にもなって装備もできて、さらには縛ることもできる。

本当にストッキングは便利だな。

今後も買いだめておかないといかないな。

俺には必要だ。


「そういえば、ストッキングを買い込んでいたことに驚いていたみたいだが、買ってたところを見てなかったのか?」

【そんなに常に監視してほしいの?】

「違うからな、そういう意味ではない。ちょっと疑問に思っていただけだ」

【面倒だからだけど】

「いや、それが神様の言うことかよ」

【ふふん、これぞ神様の言うとおりってやつね】

「そうかい。まあ、とりあえず合流することに越したことはないな」

【そうね、そうしなさい】


そうして、俺はドーレを担いで、アイラ達に合流するために歩いた。

下着を被ったまま…

いや、本当は下着を被らないで行こうと思ったんだけど、被らないとドーレを担げなかったので、まあ…

現在の状態になった。

はたから見れば、ヘンタイに担がれる騎士という状況だと思うが、仕方ない。

まあ、なるようになるしかないか…

そんなことを思いながら…

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