第21話
「ぶわはははは…何を取り出すかと思えばただの女性用の下着じゃないか…そんなもので何ができるっていううんだよ?」
確かに、俺のスキルを何も知らない人からすれば、何をしているんだと思われるだろう。
でも、もうわかっている。
お前に勝つには俺はヘンタイスキルをしっかりと発動しないといけないということくらい。
いくぞ。
俺は、下着を被った。
ふ…
ヘンタイスキルを発動したくないと考えるあまり意識をしないようにとしていたが、俺は心ではわかっている。
そうだ。
若い女性はいい。
あの恥じらいを持ったときの表情が最高だったんだ!
【ニヤニヤして気持ち悪い】
いや、スターよ。
俺はお前の望み通りにスキルを発動するだけなんだけどな。
ヘンタイスキルが発動して笑う俺とは違って、下着を被った俺を見て、ドーレは笑う。
「おま、それはヤバいだろう?そんなもんを被るなんて、ただのヘンタイじゃねえかよ」
「ふ…試してみるか?」
「ほざけ…」
そして、俺たちはお互いに構えをとる。
集中だ!
「はああああああああああ」
「うおおおおお」
俺の拳とドーレの剣が激突する。
一撃、二撃と弾かれあう。
「ちっ、やっぱり姿がふざけてるだけじゃないってことか?」
「いや、この恰好がふざけているのは確かに謝るよ」
それでも、俺はこの恰好でしかお前に対抗できないのだから仕方ない。
再度お互いに構えようとしたところでドーレが両手をやれやれとあげる。
「本当はお前みたいなやつに、これを使うのは嫌だったんだが、そうも言ってられなくなったな」
「何をだ?」
俺が疑問に思ってそう聞くと、ドーレは何かを口ずさむ。
それにより、腕のあたりだろうか?
そこから何かがぼとりと落ちる。
「これは重りだ。ジークにはまだとるなと言われていたが、これをつけていれば、不本意だがお前と互角にしかやりあえないからな」
「本当に、それだけで強くなっているのかな?」
「は!そんな減らず口を聞けるのは今のうちだけだぞ」
その言葉とともに相手は構えをとる。
それに対して、俺もしっかりと構えをとった。
中二ポーズと呼ばれる顔に手をやるそれは、しっかりと相手にヘンタイだと思われたようで、スキルが強化される。
それでもドーレはひるむこともなく攻撃をくりだしてくる。
「騎士流、三の型、アッパースラッシュ」
その言葉とともにくりだされた攻撃は上段斬り。
さっきよりも速い攻撃に俺は、なんとか剣の側面に拳を当てることで、逸らすことができる。
ギリギリになってしまった逸らしに、ドーレは押せばいけると思ったのか、さらに攻撃をくりだしてくる。
くそが…
わかっていた。
俺は、元々といえば、現実世界では三十間近であり、さらには社畜であるがために体を鍛えるなんてことをもできない、ただただ、会社に縛られるだけの生活を送っていただけの身だったのだ。
それが、この世界で戦えるようになるほど、すぐに変わるなんてことがないということくらい。
スキルを発動しようとも、俺は、これまで何もやってこなかったのだから、もしかしなくてもここでやられてしまう運命なのだろう。
そう思って、少し体の力が抜けたときだった。
【へえ、あんたはそんなもんだったんだ】
そんなことを言われる。
でも仕方ないじゃないか、俺は結局のところ、その程度の人間だったということは召喚したお前が一番わかっているのではないのかといいたいくらいだ。
ただ、そこでは自称神の言葉は終わらない。
【このまま、終わるわけじゃないでしょ?あなたをなんであたしが選んだと思っているの?それがわからないのならダメよ】
そんな意味のわからないことを言われる。
どういうことだ。
俺でないといけない理由なんてないはずなのに、その言葉で何故か納得してしまった俺がいる。
だから、このままというわけにはいかなくなった。
集中力を高める。
そうだ。
集中するんだ、俺よ。
感じろ、被っている下着のすべてを理解するんだ!
肌が当たっていた感触、そしてにおい。
まずは深呼吸だ。
とってから時間がたっているというのに、いいにおいがする。
これが若い女性の香りだというのか…
「(自称神よりも確実にいいにおいがする)」
【あなたね、殴るわよ】
「(殴れるものなら、殴って見せるんだな。今の俺は無敵だぞ)」
【ヘンタイスキルを発動だけで、かなり強気じゃない。でもいけるわね】
任せろ。
押せば勝てると思っているドーレの剣を俺は足さばきでよける。
「何?」
先ほどまではなんとか拳で受けたりよけたりを繰り返すことで、なんとかなっていたが、今は違う。
先ほどまでの俺とは違うということを見せてやろう。
俺はいつものように顔に手をあてて、某中二病ポーズをとる。
「おら!」
「あまいな!」
それを見て好機だと思ったドーレの攻撃を俺は危なげなくかわした。
二度、三度とかわしたところで、相手も違いに気づいたのだろう、剣を構えなおして、後ろに下がる。
「意味がわからねえ、さっきまで俺様が完全に押していたはずなのによ」
「ふ…そんなに、俺がお前を超えたことが疑問かな?」
「当たり前た。お前のようなふざけた恰好をしているやつに負けるなんてことがありえないんだよ」
「ふざけていると見えるだろうが、俺はそうではない。」
「なに…」
「これでも俺は真剣だ!」
そうして俺は構えた。
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